【事例】遺産分割協議に知らない人が来たがどうすれば良い?(39歳女性 遺産6,200万円)【行政書士執筆】

「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、遺産分割協議に来た見知らぬ人について、39歳女性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、玉野行政書士事務所の行政書士・玉野 由美さんです。
目次
この記事を書いた人

〈行政書士、宅地建物取引士、相続診断士〉
山口県周南市、下松市、光市、防府市の4市で、相続(終活)を専門として日々活動しております。「笑顔相続」の案内人として一つ一つの案件に丁寧に対応させて頂いております。
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遺産分割協議に知らない人が来ました
相談内容
先日父が亡くなったのですが、遺産分割協議に知らない男性がきました。私たちの異母兄弟で父の子だと言っていますが、本当かどうかわかりません。母も知らないと言っています。どうすれば良いでしょうか。
- プロフィール:39歳女性
- お住まい:大阪府
- 相続人:長男、長女(相談者本人)、母の3名
- 被相続人:父
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 自宅戸建て(土地・家屋) | 3,200万円 |
預貯金 | 2,000万円 | |
有価証券 | 500万円 | |
生命保険 | 契約者・被保険者:父 受取人:母 |
500万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図

アドバイス1 原則として相続人以外は遺産分割協議に参加できない
まず「遺産分割協議」は、相続人全員の参加と同意が必要不可欠な手続きです。
相続人のみ参加できる理由として、相続財産は、被相続人が亡くなった時点で、その財産の権利は法律により相続人に 移ります。要するに、相続人のみが「相続する権利」を持っているからです。
法定相続人とは通常、被相続人の配偶者、子供、親、兄弟姉妹などが該当します。
「遺産分割協議」の参加者が限定されることにより、相続手続きは明確に、そして円滑に進めることができます。
もし相続人以外の人が参加すると、手続きが混乱したり、不要な争いの原因となる恐れがあるからです。
ただし以下のような場合は、相続人以外でも参加できます。
- 相続人が認知症の場合 ⇒ 成年後見人など法定代理人
- 相続人が未成年の場合 ⇒ 親権者又は特別代理人
- 相続人が行方不明の場合 ⇒ 不在者財産管理人
- 遺言書で包括遺贈されている場合 ⇒ 包括受遺者
今回の相談者様のように、お父様を亡くされ、突然、異母兄弟だと名乗る方の訪問に戸惑われた場合、どのように手続きを進めることが相談者様にとって良いのか一緒に考えてみましょう。
アドバイス2 まずは相続人調査をして相続人を確定させる
今回の相談者様のように「父の相続人は、この家族だけだ」と思い込んでしまい、相続人を確定せずに遺産分割協議をしてしまうのは大変危険です。
なぜなら、遺産分割協議は相続人全員で行わなければ無効となってしまうからです。
したがって、円滑な遺産分割協議を進めるためには相続人を正確に確定することが重要です。
相続人を確定させる手順
- 被相続人(お父様)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を収集する。これにより、結婚歴や認知した子供などすべての法定相続人を確定できます。
- 確定された相続人全員の最新の戸籍抄本を取得して、身分関係を明確にします。
- 収集した戸籍をもとに相続関係説明図/法定相続情報を作成し、相続人間の関係を視覚的に整理します。
今回の相談者様の場合は、戸籍収集をして相続人が確定できた時点で、公証役場や法務局でお父様が遺言書を遺しておられないか必ず確認することをおすすめします。
アドバイス3 次に被相続人の財産調査をして財産目録を作成する
円滑な遺産分割協議を進めるためには、被相続人(お父様)の財産内容を一覧にまとめた財産目録を作成することが重要です。
これにより、相続人全員が遺産の全体像を把握することができます。また、相続税申告の判断材料として役立ちます。
財産目録には、被相続人のプラスの財産(資産)とマイナスの財産(負債・債務)をもれなく記載します。
具体的には以下の項目です。
- 不動産 所在地・地番・地目・地積・土地・家屋 など
- 預貯金 金融機関名・支店名・口座の種類・口座番号・残高(相続発生時)
- 有価証券 銘柄・数量・評価額
- 負債・債務 債権者名・債務の内容・残高(葬儀費用や読経料もここに記載)
財産の評価額は、相続開始時(被相続人の死亡日)時点のものを記載します。評価額の基準と評価方法も明記しておくと相続人間での認識のズレを防ぐことができます。
アドバイス4 トラブルになる前に専門家に相談すると良い
お父様を亡くされて、突然の異母兄弟の訪問に驚かれたことと思います。ただし異母兄弟様も法律上の相続人であり、遺産分割協議には相続人全員の参加と同意が必要です。
そこで、円滑な遺産分割協議を進めるためのポイントをお伝えします。
1.冷静な話し合いを心がける
感情的にならず相手の意見にも耳を傾けることで、協議がスムーズに進みます。相手の立場を尊重しながら話すことが大切です。
2.公平な遺産分割を目指す
異母兄弟であっても、相続分は他の兄弟姉妹と同じです。全員が同意できる分割方法を検討しましょう。
例えば、生命保険を控除したうえでの(死亡保険金は相続人固有の財産)法定相続分での分割方法が有効です。
突然の出来事で戸惑われるかもしれませんが、相続関係説明図で確認し、遺言書の有無の確認書、そして財産目録を提示することで、相談者様のご家族が異母兄弟様に歩み寄っていることが相手にも伝わると思います。
ただし今回の相談者様のような相続手続は複雑であり、専門的な知識が必要です。
行政書士は正確かつ迅速な相続人の確定、相続手続の重要なステップである財産目録の作成、後々のトラブルを未然に防ぐサポートを業務としてやらせて頂いております。
今回の相続事例のように、自身の死後、家族の知らない相続人が現れる可能性があると心当たりのある方は、残されたご家族が悲しみを味遭わないためにも、私共行政書士に遺言書の作成をご依頼ください。
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