【事例】複数の不動産がある場合、それぞれ登記の手続きが必要ですか?(59歳男性 遺産6,000万円)【司法書士執筆】

「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は不動産の相続登記について、59歳男性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、宮島尚史司法書士・行政書士事務所の宮島尚史さんです。
目次
この記事を書いた人

〈司法書士、行政書士〉
困りごとのある方に、寄り添った対応ができるよう、思いやりのある接遇を心がけております。業務内容にかかわらず、どのような事でもご相談ください。
▶宮島尚史司法書士・行政書士事務所
実家と土地の相続手続きはどうする?
相談内容
先日父が亡くなって遺産分割協議を兄弟でしました。長野の実家は私が相続し、新潟の土地は弟が相続する予定です。登記の手続きはそれぞれやったほうが良いのでしょうか。あとは残りの現金をうまく分散させて兄弟で平等になるよう相続する予定です。
- プロフィール:59歳男性
- お住まい:長野県
- 相続人:長男(相談者本人)、二男、長女の3人
- 被相続人:父
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 実家(土地・家屋) 土地(新潟) |
2,000万円 800万円 |
預貯金 | 3,200万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図

はじめに
お父上様のご逝去にあたり、心よりお悔やみ申し上げます。
ご兄弟の間で遺産分割協議が成立したのであれば、速やかに相続登記の手続きをされることをおすすめします。
アドバイス1 相続手続きは義務化されているので速やかに手続きをしたほうが良い
令和6年4月1日から、相続登記が義務化されました。これは東日本大震災の後、被災地の復旧のための道路の付け替えや、避難施設の建築などに関して、土地の相続登記がされていないことから地権者が判明せず、承諾が得られないために工事ができずに復旧が遅れたことが問題となり、法律の改正がされたものです。
相続が開始したのに正当な理由がなく相続登記をしないでいると、相続人である貴方に10万円以下の過料が科されるおそれがあります。
また、遺産分割協議が整ったのに登記手続きが行われないまま時間が経過すると、さらに相続が発生したとき、遺産分割協議の結果をその相続人に証明してもらうことになったり、再度の遺産分割協議が必要となるおそれもあります。
以上の理由から、速やかに相続登記の手続きをすることをおすすめします。
アドバイス2 遺産相続の手続きには戸籍収集が必要
一般的に、遺産相続の手続きは、次のような段取りで進めることとなります。
- 被相続人であるお父上様が生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍と法定相続人全員の戸籍を集め、法定相続人を明らかにする。
- 法定相続人の間で遺産分割協議を行い、被相続人の財産につき誰がどの財産を相続するかを決め、遺産分割協議書を作成する。
- 不動産については、相続登記申請書を作成して遺産分割協議書とともに法務局に提出し、預貯金などは銀行に遺産分割協議書を提出して解約・払い戻しや名義の書き換えなどを行う。
被相続人や相続人の戸籍の収集について、子は親の戸籍を市区町村役場に請求できますが、他の兄弟の戸籍を請求することはできません。
また、戸籍を読む知識がないと法定相続人を見逃してしまうおそれもあります。ご相談のケースでは、ご兄弟3人それぞれが必要な戸籍は同一ですので、別々に戸籍を集めると重複して費用がかかってしまうことになりかねません。
アドバイス3 相続登記の手続きは一括して司法書士に依頼すると効率的
そこで、弁護士や司法書士、行政書士のような有資格者に相続人の調査を依頼し、あわせて3人分の遺産分割協議書の作成も依頼することをおすすめします。
有資格者であれば相続人を正確に判断することができますし、また、職務として戸籍を市区町村役場に請求することが認められています。
また、不動産の相続登記の手続きでは、判明した法定相続人の関係を表した「相続関係説明図」を作成して、「遺産分割協議書」とともに登記申請書に添付して法務局に提出する必要があります。
近年、法務局では「法定相続情報証明制度」が始まりました。これは、法定相続人を表した一覧図に必要戸籍を添えて法務局に申出をすると、登記官がその一覧図を間違いがないと証明するという制度で、登記申請手続きはもちろんのこと、銀行の手続きや相続税申告の手続きに戸籍の束を持っていかなくても、この登記官が証明した一覧図を提出すれば手続きができることとなりました。
加えて、登記申請の場面では、証明された一覧図に与えられた「法定相続情報番号」を登記申請書に記載することで、一覧図自体の添付も不要となりました。そして、前述の有資格者は、相続人に代理して法定相続情報一覧図を作成することが認められています。
さらに、不動産登記の申請についてはどの法務局に提出するか管轄が定められていますので、貴方の相続登記申請は長野の管轄法務局へ、二男様の相続登記申請は新潟の管轄法務局へ提出する必要があります。
どちらの登記申請にも同一の戸籍を添付することが求められますが、法定相続情報番号を提供することで同時に二つの申請をすることが可能となったわけです。
相続登記申請手続きは、司法書士がお二人に代理して行います。登記申請先が2か所だったり遠方であっても、申請書を郵送して申請したり、インターネットからオンライン申請が可能なので、一括して司法書士に依頼していただければと思います。
最後に、ご相談のケースは、遺産総額が6,000万円で相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×相続人の数) 4,800万円を超えていますので、相続税が課されるケースと思われます。相続税に関しては、専門家である税理士に相談していただきますようお願いします。
関連事例
【事例】家の名義が10年以上前に亡くなった父のままでした。どのように遺産分割をすれば良いですか?(56歳男性 遺産2,000万円)【行政書士執筆】
【事例】実家の土地と建物で名義が違いました。どのように相続すれば良いですか?(62歳男性 遺産2,330万円)【行政書士執筆】
相続についてのご相談は「いい相続」へ
いい相続では、全国各地の相続の専門家と提携しており、相続手続きや相続税申告、生前の相続相談に対応できる行政書士や税理士などの専門家をご紹介することができます。
専門オペレーターが丁寧にお話を伺いサポートしますので、お困りの方は、お気軽にご相談ください。
この記事を書いた人

〈司法書士、行政書士〉
困りごとのある方に、寄り添った対応ができるよう、思いやりのある接遇を心がけております。業務内容にかかわらず、どのような事でもご相談ください。
▶宮島尚史司法書士・行政書士事務所
ご希望の地域の専門家を探す
ご相談される方のお住いの地域、遠く離れたご実家の近くなど、ご希望に応じてお選びください。