【事例】生命保険を活用して相続対策をしたい(68歳女性 資産5,000万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、娘に遺産を渡したくないという、68歳女性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、行政書士 須藤法務事務所の行政書士、須藤 剛さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士〉
大阪府南部・和歌山県を中心に相続手続き・遺言書作成のサポートを承っております。
無料訪問を中心にご相談をお受けしていますので、「いつもの落ち着いた環境で相談できた」と、大変好評をいただいております。
▶行政書士 須藤法務事務所
すでに生前贈与されている娘には財産を渡したくない
相談内容
夫は3年前に亡くなり、自分の相続についても考えています。
娘は夫の生前から財産を贈与されていたので、私の遺産は渡したくありません。
どのように対策をすれば良いでしょうか。
- プロフィール:68歳女性
- お住まい:群馬県
- 相続人:相談者本人、長男、二男、長女の4人
- 被相続人:自分(生前)
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 自宅戸建て | 2,000万円 |
預貯金 | 3,000万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 遺産を分ける方法
はじめに、遺産を分ける方法は以下の3つです。
- 法定相続
- 遺産分割協議
- 遺言
この3つのうち、どれかのルールにしたがって遺産分けを行うのですが、ルールには次のような序列(優先順位)があります。
法定相続 < 遺産分割協議 < 遺言
このように遺言が最優先されるため、遺産の分配方法に明確な意思がある場合、まずは遺言書の作成を検討すべきです。
財産所有者本人の意思である遺言書の内容は、多くの場合で相続人同士の協議よりも優先されます。
では、遺言に「長女以外の2人に遺産を分ける」という内容を書けば、必ずそうなるでしょうか?
残念ですが、答えはノーです。
アドバイス2 遺留分(いりゅうぶん)とは?
なぜなら遺産には、「遺留分」があり、これは、各相続人の取り分の「最低保障額」のようなものだからです。
したがって、たとえ「長女には何も相続させない」内容の遺言書を書いたとしても、長女には遺留分として本来の相続分3分の1の、さらに半額を請求出来る権利があります。
この権利を法律用語では「遺留分侵害額請求権」と言いますが、ポイントは「侵害額」という言葉。すなわち、請求された側は「金銭」で支払う必要がある、ということを意味します。
このケースでは総額5,000万円ですので、長女は約834万円の金銭を残り2人の兄弟に請求できる権利を持ちます。
遺留分侵害額請求は法で守られた権利であるため、長女が遺留分を請求してきたら必ず支払わなければなりません。
しかし、いざ遺言内容にはない金銭を請求された他の兄弟からすれば、あまり気持ちの良いものではなく、その後の親族関係に悪影響を及ぼしかねません。
円満な相続のために遺言書を作ったのに、これでは何のための遺言書がわからなくなってしまいますね。
アドバイス3 遺留分に考慮した遺言書の作成
そこで、あらかじめ遺留分を考慮した遺言書にすることをおすすめします。
具体的には以下の2つの方法が考えられます。
①遺言書の内容を工夫する
あらかじめ約834万円相当の遺産を長女に渡す内容の遺言書を作成しておく方法です。これは「現金」に限りませんので、土地などを購入しておいて、長女への遺産としても構いません。
ですが、金額で「834万円を長女に相続させる」旨を記すほうがより明確であり、文句の付けようがないでしょう。
②生命保険を活用する
生命保険(死亡保険)に加入して、受取人に長女を指定しておく方法です。
生命保険の死亡保険金は少し特別な扱いがなされます。
保険金は「遺産」に含まれるものの、遺産分割の対象にはならず、指定された受取人の固有の財産となります。つまり、保険金は他の相続人と分け合う必要はなく、すべて受取人をものとなるのです。
死亡保険金が834万円を超える場合は、受取人を複数指定して「○○%を長女、残りを長男」という指定方法を取ることもできます。
この方法のメリットとしては、死亡保険金を用意しておくことで、長女は遺留分を受け取ることになりますから、現在所有している財産はすべて、長男・二男で分け合うことができる点です。
デメリットとしては、少額ながら保険料がかかってしまうこと、現在の遺産総額から考えて相続税が発生する可能性が高いこと、2点でしょうか。
「長女に遺産を遺したくない」という相談者様の意向からすると、どちらも抵抗があることは承知のうえで、回答させていただきました。
たしかに財産所有者の意思は重要ですが、それ以上に重要で意義のある配慮とは何でしょうか?
それは「遺された家族が揉めない配慮」です。
遺留分請求は請求された立場としては、回避することが困難です。
したがって長男・二男を紛争性を孕んだ請求から守る、という意味で、遺留分の考慮は非常に重要な課題となるのです。
一度、専門家の無料相談を利用し、相談を受けてみることをおすすめします。
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