【事例】相続人に未成年者がいる場合、どのように遺産分割すればよいですか?(44歳女性 遺産6,500万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、未成年の相続人がいる場合について、44歳女性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、行政書士FPしゅくわ事務所の行政書士・宿輪 德幸さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士・CFP〉
相続専門の事務所として2015年に開業。2017年からは、長崎県ではあまり知られていなかった民事信託の取り扱いを開始。既存の制度では対策困難な状況のご家族にも、民事信託の活用で解決策を提案しています。
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未成年の子どもが2人いる場合の相続は?
相談内容
先日夫が病気で亡くなってしまい、遺産分割をするのですが、我が家は娘が2人います。子どもの取り分は親の私が決めて良いのでしょうか。
どのように分ければよいのか全然わかりません。自宅はこのまま住み続けたいので、私が相続したいと考えています。
- プロフィール:44歳女性
- お住まい:福岡県
- 相続人:相談者本人、長女(16才)、二女(10才)の3名
- 被相続人:夫
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 自宅戸建て(土地・家屋) | 3,000万円 |
預貯金 | 1,000万円 | |
生命保険 | 契約者・被保険者:夫 受取人:相談者本人 |
500万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
はじめに
相談者様のご主人は若くして亡くなりましたので、相続対策は何もしていなかったようです。遺言が無い場合、遺産は遺産分割協議で分け方を決めるのですが、未成年者は協議に参加することができません。また親が子の取り分を決めることもできません。どうすれば遺産分割ができるのでしょうか。
アドバイス1 特別代理人
未成年者は成年者と比べて経験や知識が不足しており、法律行為を単独で行うとトラブルのリスクが高いと考えられます。そのため、未成年者が法律行為をする場合、法定代理人の同意が必要とされています。
未成年者の法定代理人は通常は親権者です。しかし、相談者様は子の法定代理人として遺産分割できません。なぜなら親と子で利益が相反する「利益相反」の関係になるので、代理できないのです(親の利益を優先すると子の利益が損なわれる)。
この場合、「特別代理人」に子の代理として遺産分割協議をしてもらわなければなりません。特別代理人には特別な資格などは必要ありませんので、親族の誰かになってもらうことが多いです。
アドバイス2 特別代理人の役割
特別代理人は家庭裁判所に選任してもらいますが、申し立ての際には遺産分割協議書案を添付します。特別代理人は代理する子の権利を守ることが仕事なので、原則として法定相続分以上の遺産を取得することが求められます。遺産分割協議書案の内容が著しく子に不利なものであると、家庭裁判所の許可が出ないこともあります。
しかし相談者様の場合、長女と次女に特別代理人を付けて、法定相続分で遺産を分割すると、不動産まで共有となってしまいます。共有不動産は処分する際など何かと面倒なので、できれば避けたいところです。
アドバイス3 法定相続分で分割できるか
相談者様の遺産分割の対象は、生命保険を除いた不動産と預貯金で合計4,000万円です。生命保険金は遺産ではなく保険金受取人の固有財産となります。不動産は相談者が単独所有したいご意向です。
法定相続分で分割すると下記のようになります。
相談者1/2=2,000万円 長女1/4=1,000万円 二女1/4=1,000万円
子2人の相続分は合計2,000万円ですので、遺産の預金では足りません。相談者様が受け取る保険金や固有財産から1,000万円手出しできれば「代償分割」という形で、不動産を単独所有とすることは可能ですが、そこまでの資金は無いようです。
アドバイス4 長女が成人するのを待つ
自宅の住宅ローンは団体信用生命保険に加入していたため完済です。相談者様のパート収入と遺族年金があれば生活費は賄えますが、長女の大学進学を考えると手元に資金が無いと不安です。
その他細かい状況をお聞きしたうえで、相談者様には長女が18歳になってからの遺産分割をおすすめしました。流れとしては以下の通りです。
- 長女が18歳になってから、二女の特別代理人を家庭裁判所に申し立てる
- 特別代理人を遺産分割協議に参加させて遺産分割協議書を作成し以下の取得とする
相談者:不動産(3000万円)
二女 :預金1000万円
長女は遺産を取得しませんが、未成年ではないので本人が合意すれば問題ありません。自宅不動産は単独所有になり、生命保険金は長女の学費等に充てられます。二女には法定相続分の現金を取得させ、大学進学をする場合にはこのお金を使ってもらうこととしました。
長女は、大金を自分で管理するより親に管理してもらい、必要に応じて学費を出してもらった方がよいと納得しています。二女はまだ小学生で理解が難しいと思いますので、相談者が親権者として無駄遣いしないよう管理し、高校生になった頃にしっかりと説明する予定です。
不動産は、手続きが義務化されている、相続登記の期限内の相続から3年以内に単独所有の相続登記ができますし、子供たちの学費の心配も解消できました。
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この記事を書いた人
〈行政書士・CFP〉
相続専門の事務所として2015年に開業。2017年からは、長崎県ではあまり知られていなかった民事信託の取り扱いを開始。既存の制度では対策困難な状況のご家族にも、民事信託の活用で解決策を提案しています。
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