【事例】知人から遺贈された財産を拒否できますか?(50歳女性 遺産1,700万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、土地の遺贈を拒否したいという、50歳女性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、行政書士ときた事務所の行政書士・鴇田 誠治さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、CFP®、不動産コンサルティングマスター〉
相続・相続対策の専門家として、相続手続きの総合的なご支援はもちろん、遺言書の作成などの相続対策もお客様と共に考え、アドバイスをさせていただきます。また、後見や財産管理、民事(家族)信託などもお気軽にご相談ください。
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知らないうちに遺贈されていた
相談内容
近所に住んでいた一人暮らしのおじいさんが亡くなって、遺言書に土地を私に渡したいと書かれていたそうです。生前は親しくしていましたが、土地なんてもらえません。これは拒否できますか?おじいさんには都会に住む息子が一人いるそうです。
- プロフィール:50歳女性
- お住まい:宮崎県
- 相続人:被相続人の息子
- 被相続人:知人
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 自宅戸建て(土地・家屋) 土地100㎡ |
1,000万円 200万円 |
預貯金 | 500万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
お悩みの件について、遺贈の放棄は可能です。遺贈の放棄方法は遺贈の種類によって異なります。
そもそも遺贈(いぞう)とは、遺言によって特定の財産を相続人以外の者(第三者)に無償で譲ることです。遺贈によって財産を受ける人を「受遺者」と呼びます。
アドバイス1 遺贈の種類
遺贈には次の2つの種類があります。
(1) 包括遺贈
包括遺贈は、遺産全体や遺産の一定割合を遺贈するものです。例えば、「遺産の3分の1を●●に遺贈する」のように書かれます。包括遺贈を受けた受遺者は相続人とほぼ同等の権利を持ち、遺産全体の権利を主張できます。
(2)特定遺贈
特定遺贈は遺産の特定の財産を遺贈するもので、「自宅の土地を○○に遺贈する」「××銀行の定期預金を●●に遺贈する」のように書かれます。特定遺贈を受けた受遺者は、遺言に記載された特定の財産のみを受け取ります。
アドバイス2 遺贈の効力と遺贈の放棄
遺贈は遺言者の死亡時に効力を生じます。そのため、遺贈を受けるかは受遺者が遺言者の死亡後に判断することになります。そして遺贈は放棄が可能です。
ご相談のケースは、「おじいさんが所有する土地を遺贈する」ですので、特定遺贈に該当する可能性が高いです。
特定遺贈の放棄は、遺言執行者や他の相続人に遺贈を放棄する旨を意思表示すると放棄が成立します。口頭での意思表示も可能ですが、後々のトラブルを避けるため内容証明郵便など書面での通知をおすすめします。
アドバイス3 遺言執行者に指定されていた場合
おじいさんの遺言で、受遺者であるあなたが遺言執行者に指定されているかもしれません。遺言執行者は、遺言に記載された内容を実現する責任を負います。しかし、仮に遺言執行者に指定されていても、遺贈を拒否することは可能です。
受遺者として遺贈を放棄しても遺言執行者の任務は継続されます。遺贈の放棄を行った後でも、他の遺産や遺言内容を執行する責任は残ります。
もし「遺贈を放棄したのに遺言執行者役割をこなすのは不安だ」という場合は遺言執行者の辞任が可能です。ただし、辞任には家庭裁判所の許可が必要になります(民法1010条)。辞任したい場合は家庭裁判所に相談するとよいでしょう。
アドバイス4 遺言書が無効なら遺贈も成立しない
遺言書が無効と判断された場合、その遺言書に基づく遺贈も当然無効です。遺贈が有効であるためには、まず遺言書自体が法律上有効でなければなりません。
ちなみに以下のケースでは、遺言書が無効とされる可能性があります。
(1)方式違反
自筆証書遺言の場合、全文を遺言者が自書していない、日付や署名がない、押印がない など
※公正証書遺言では、方式違反となるケースはまれです。
(2)遺言能力の欠如
遺言書作成時に遺言者が認知症などで正常な判断能力を欠いていた など
(3)意思の瑕疵
遺言者が脅迫、詐欺などにより本来の意思に反して遺言書を作成した など
(4)法律で禁止されている内容
遺言の内容が公序良俗に反する場合や、法的に許されない条件が付されている など
(5)改ざん・偽造
遺言書が他人により改ざん、偽造された場合
アドバイス5 遺贈を放棄しない場合はどうなる?
遺贈を放棄しなければ財産を取得できますし、財産内容によっては経済的に有利になり、自身の資産を増やせるかもしれません。
しかし、相続人である息子さんが遺留分侵害額請求をしてくる可能性があるほか、ご相談のケースでは該当しませんが、遺贈に伴う相続税の負担が生じる場合もあります。
もし、遺贈を放棄を迷うような場合は、財産の内容、税金の負担、相続人との関係性などを総合的に判断して決めるのがよいでしょう。特に税金や他の相続人の遺留分侵害請求の可能性がある場合は、あらかじめ専門家に相談することをおすすめします。
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