【事例】預金残高が0円や数百円でも相続手続きしないといけませんか?(60歳女性 遺産2,000万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、残金が少ない銀行口座について、60歳女性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、安部行政書士事務所の行政書士、安部亮輔さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士〉
平成23年行政書士登録。10年以上のキャリアがあり、多くの相続案件をご依頼いただきました。相続人が多数いる複雑な案件にも自信があります。
「身内の死という、人生において最も悲しい時期を迎えられているお客様の手助けをしたい」という理念のもと、業務に励んでおります。
▶安部行政書士事務所
残金が少ない口座をそのままにしても大丈夫?
相談内容
母が亡くなったので妹と2人で相続手続きを進めています。母の通帳がたくさん見つかり、0円とか数百円のものもいくつかありました。こういうのも解約手続きしなければいけませんか?妹は端数はいらないと言っているので、私がおろしても問題ありませんか?
- プロフィール:60歳女性
- お住まい:千葉県
- 相続人:長女(相談者本人)、二女の2名(父は既に死亡)
- 被相続人:母
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 自宅戸建て(土地・家屋) | 1,500万円 |
預貯金 | 300万円 | |
生命保険 | 契約者・被保険者:母 受取人:長女 |
200万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 名義人が亡くなったら口座は凍結される⁉
銀行口座の名義人が亡くなった場合、その銀行口座は「凍結」されることが原則です。
この凍結は、相続に関わる手続きが適切に行われるまで、口座からの出金や取引ができなくなることを意味します。以下、その理由と流れについて説明します。
1. 口座凍結の理由
名義人の死亡が確認されると、銀行は相続財産の保護のために口座を凍結します。この措置は、相続人間での公平な分配を確保し、遺産分割協議が完了するまで不正な引き出しや使用が行われないようにする目的があります。
2. 凍結の流れ
名義人が亡くなったことを銀行に伝えると、以下の手続きが進みます。
- 銀行への通知:家族や関係者が銀行に名義人の死亡を知らせると、銀行は戸籍(除籍)により死亡を確認し、口座を凍結します。口座の名義人が死亡したことを銀行が直接知るケースもありますが、通常は家族などからの通知が必要です。
- 凍結処理:銀行はその口座からの出金や引き落としを停止し、相続人の間で遺産分割の手続きが完了するまで口座の管理が制限されます。
3. 凍結された口座を解凍するには
凍結された口座を利用できるようにするためには、次のような手続きが必要です。
- 遺産分割協議書の提出:相続人全員の同意に基づいて遺産分割協議書を作成し、銀行に提出する必要があります。協議書には、誰がどのように遺産を相続するかが明記されていなければなりません。
- 戸籍謄本の提出:相続人が誰であるかを証明するために、亡くなった方の戸籍謄本と相続人全員の戸籍謄本を提出します。
- 相続税の支払い:一定額以上の財産が相続される場合、相続税の支払いが必要です。税務申告が終わると、税務署からの確認も得られ、口座が解凍される流れになります。
4. 注意点
銀行口座が凍結されると、自動引き落とし(公共料金や家賃の支払いなど)やクレジットカードの引き落としもできなくなります。
そのため、早急に相続手続きを進めることが望ましいです。また、口座凍結後に入金されたお金についても、相続手続きが完了するまでは引き出すことができません。
結論
銀行口座の名義人が亡くなった場合、銀行口座は相続財産を適切に分配するために凍結されます。凍結を解除するためには、相続手続きを経て必要な書類を銀行に提出することが必要です。この手続きをスムーズに進めるために早めの準備が重要となります。
アドバイス2 口座を放置しておくと休眠口座になる⁉
相続があったにもかかわらず手続きを行わず銀行口座を長期間放置していたり、相続がなくても銀行口座を放置していると、「休眠口座」となる可能性があります。
休眠口座とは、一定期間取引がない口座のことを指し、その期間が過ぎると通常の取引ができなくなります。この状態になると、口座の残高を引き出すために特別な手続きが必要になります。以下に、休眠口座の仕組みとデメリットについて詳しく説明します。
1. 休眠口座の仕組み
銀行口座が休眠口座となるまでの一般的な流れは次の通りです。
- 10年間の取引なし:日本では、ほとんどの銀行で10年間取引(預け入れ、引き出し、振り込みなど)がない場合、その口座が休眠口座とみなされます。ここでの取引には、残高の確認や通帳の記帳などは含まれません。実際の資金の動きが必要です。
- 通知と凍結:銀行は、休眠口座に移行する前に通知を送ることがありますが、この通知が見逃されることも多いです。取引がないまま10年が経過すると、銀行はその口座を休眠口座として扱い、口座は凍結されます。
- 金融機関への移行:銀行は、休眠口座の残高を最終的に預金保険機構に移管することがあります。この際、銀行は休眠口座からその残高を引き出して使用することはできませんが、特定の公的な資金に回されることがあります。
アドバイス3 残金が0円や数百円でも解約手続きをしたほうが良い⁉
1. 休眠口座のデメリット
休眠口座となることで、いくつかのデメリットが生じます。
- 引き出しや振り込みができない: 休眠口座となると、通常の方法での引き出しや振り込みができなくなります。再び利用するには、銀行に連絡して休眠口座を解除する手続きが必要です。これには本人確認書類や通帳の提出など、手間のかかる手続きが伴います。
- 手数料の発生:休眠口座に維持手数料が発生する場合があります。特に残高が少ない場合、手数料によって残高が減ってしまう可能性があります。また、口座が休眠状態になっている間、口座管理のための費用が発生する場合もあります。
- 利息の停止:通常、銀行口座にはわずかながら利息が付きますが、休眠口座となるとこの利息が停止する場合があります。特に長期間休眠状態が続くと、その間に得られたはずの利息が失われることになります。
- 遺産相続に影響が出る可能性:名義人が亡くなった場合、相続手続きが必要になりますが、休眠口座が見逃されることがあります。休眠口座が相続財産に含まれていることを知らないままだと、相続手続きに支障が出たり、遺産分割が適切に行われなかったりするリスクがあります。
- 預金保険機構への移行後の手続きが複雑化:休眠口座の残高が預金保険機構に移管された後、残高を取り戻すにはさらに複雑な手続きが必要になります。銀行での手続きよりも時間と手間がかかる可能性があります。
2. 休眠口座を防ぐための対策
休眠口座を防ぐためには、以下のような対策を取ることが有効です。
- 定期的な取引:口座を放置せず、定期的に少額の入金や引き出しを行うことで、休眠口座になるのを防げます。
- 口座の整理:使用していない口座が多い場合、不要な口座を解約することも一つの手です。複数の口座を管理するのは手間がかかり、休眠口座になるリスクも高まるため、使っていない口座は定期的に見直すことが重要です。
結論
銀行口座を長期間放置すると、休眠口座となり、通常の取引ができなくなるというデメリットがあります。
これを防ぐためには、定期的に口座を使用し、不要な口座は解約するなどの対策を講じることが重要です。休眠口座にしてしまった場合も、早めに銀行に相談し、必要な手続きを進めることが大切です。
また、残高が0円でも数百円でも、口座の維持手数料が発生することもありますので、解約することをおすすめします。
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