【事例】遺言書を作成したい。認知症で無効だと訴えられないようにしたい。(83歳男性 資産4,900万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、無効を訴えてくる可能性のある場合の遺言書作成について、83歳男性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、玉野行政書士事務所の行政書士・玉野 由美さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士、宅地建物取引士、相続診断士〉
山口県周南市、下松市、光市、防府市の4市で、相続(終活)を専門として日々活動しております。「笑顔相続」の案内人として一つ一つの案件に丁寧に対応させて頂いております。
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遺言書を無効だと訴えられないように対策したい
相談内容
私には3人の子どもがいますが、長男に財産を渡したくなく、遺言書を作成したいです。多少忘れっぽいかもしれませんが、まだ認知症ではないと思います。
長男は遺産欲しさに遺言書の無効を訴えてくるかもしれません。どのような遺言書を作れば良いですか?
- プロフィール:83歳男性
- お住まい:兵庫県
- 家族構成:長女、長男、二男の3名
- 被相続人:相談者本人
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 自宅戸建て(土地・家屋) 土地135㎡ |
3,000万円 |
預貯金 | 1,200万円 | |
有価証券 | 400万円 | |
生命保険 | 契約者・被保険者:相談者本人 受取人:長女 | 300万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 トラブル防止のため遺留分に配慮した遺言書にしたほうが良い
相談者様のご希望に沿う遺言書の作成をする場合、一番気を付けなければいけないのは、相続人が全員、遺留分権利者だということです。ちなみに遺留分権利者は、配偶者、子、父母であり、兄弟姉妹は該当しません。
そこで、今回の相続人はお子様3名ですので、相続財産の法定相続分が1/3となり、その1/2の額を、遺留分として請求することができます。
相談者様は、自分の意思で「長男に財産を渡したくない」と主張されてますので、遺言書では相談者様のお気持ちを大切にして、他のお子様2名に遺産を相続させる遺言書を作成します。その際、必ず遺言書で、「遺留分侵害額請求の相手側と対象財産」を指定し、記載しておくことです。
また、相談者様は不動産も所有されており、上記の通り遺留分侵害額請求の可能性もあることから、遺言書で必ず行政書士等の遺言執行者を指定しておきましょう。
*生命保険は受取人の固有の財産になりますので、相続財産にはなりません。
*遺留分侵害額請求の対象財産は、流動性及び金額の観点から預貯金を私なら指定します。
*遺留分侵害額請求の相手側は、ご兄弟の性格及び遺言執行者との相性から私は指定します。
アドバイス2 認知症のテストをしておくと良い
今回のように、各相続人間で不公平が生じてしまう場合や相続人でない第三者に遺贈される場合は、依頼者の主治医に依頼者から「遺言書を作成する」旨を伝えて、長谷川式テスト等を受けてもらうことをおすすめします。医療機関(近所の内科、精神科等)であれば、通常行っています。
このテストを受け、その結果とどこの医療機関で受けたかを証明することで、相談者様の意思通りの財産の承継がされ、相続人のためにも、後の紛争を防ぐ一つの材料になります。
もちろん認知症の早期発見にも役立ちます。
アドバイス3 公正証書遺言を作成する
相談者様が自身の意思能力に不安がある場合や、一部の相続人より無効を主張される可能性がある場合等は、「公正証書遺言」の作成をおすすめします。
公正中立な公証人の先生が立ち会うことで、遺言者の意思能力の確認、法的に有効、紛失や隠匿等についても防止されます。
それと同時に、遺言書と一緒に付言事項を遺すことをおすすめします。そうすることで、作成される遺言書がお子様達のギフトになる可能性があるからです。
付言事項の内容としては、以下の通りです。
- なぜ、相談者様が、ご長男に財産を渡したくないと思われたのか
- 遺留分侵害額請求の相手側、対象財産を指定することで、ご長男にも多少の財産を渡す意思があった
- 他の相続人にも簡易な相続手続きで済み、相談相手を遺すことが可能
相続人のお子様達に、自分たちの父親はどのような人間で、どのような思考をし、自身の亡きあとお子様たちの行く末をきちんと考えてくれていた人間として、書面で遺すことが出来る一つのツールが「遺言書」です。
そして、遺言者の想いを相続人の皆様にお伝えする役目が、私ども行政書士の業務です。
*ただし、案件によっては「付言事項」は省略する場合もあります。
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この記事を書いた人
〈行政書士、宅地建物取引士、相続診断士〉
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