【事例】亡くなった妹が20年前に作成した公正証書遺言が出てきました。これは有効ですか?(49歳女性 遺産1,500万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、20年前に作成された公正証書遺言について、49歳女性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、行政書士瀧原事務所/ホワット相続センターの行政書士・瀧原 至さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士〉
愛知県東三河エリアで遺産相続に特化した法務事務所「ホワット相続センター」を運営。「親切、丁寧、迅速」を心がけながら年間100件以上の相談業務に従事している。
▶行政書士瀧原事務所/ホワット相続センター
20年前に作成された遺言書は有効?
相談内容
おひとりさまの妹が亡くなったと連絡が入りました。遺品を整理していたところ、20年前に作成された公正証書遺言の謄本が出てきました。
公正証書遺言には、「遺産はすべて近所の〇〇さんに渡したい」と書いてありました。これだと私と弟は全く遺産をもらえないのでしょうか。〇〇さんに尋ねたところ「昔のことだし申し訳ないから遺産は受け取れない」と言っています。
- プロフィール:49歳女性
- お住まい:群馬県
- 相続人:姉(相談者本人)、弟の2名
- 被相続人:妹
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
預貯金 | 1,000万円 | |
有価証券 | 300万円 | |
生命保険 | 契約者・被保険者:妹 受取人:相談者本人 |
200万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 新しい日付の遺言書がないかを調べる
遺言は、相続人等の利害関係人に重大な影響を及ぼすことから、民法でその方式を限定し、作成及び手続きも厳格に定められています。
その一つとして「日付」の記載があり、遺言書は「日付の新しいもの」が有効となります。20年前に作成した遺言公正証書よりも新しい遺言書が作成されている場合はその遺言書が有効となりますので、自宅の整理及び近くの公証役場並びに法務局へ出向き、他の遺言書がないか調べましょう。
他の遺言書がなければ、20年前に作成された遺言公正証書が有効となります。
アドバイス2 遺贈をもらわない場合は兄弟姉妹でも相続できる
次に、相続人以外の人へ遺産を譲与することを「遺贈」といいます。遺言者は、自分の遺産すべてを近所の特定人(以下、受遺者)へ遺贈するために遺言書を作成していますので、相続人は受遺者へ遺言書等を渡します。なお、兄弟姉妹には「遺留分」は認められていないので、少しの遺産も取得することはできません。
ただし、受遺者は遺産を「もらうのか、もらわないのか」を決めることができます。本件の遺言書には「すべての遺産」を譲与すると記載されていますので「包括遺贈」となり、受遺者は相続人と同一の権利を持つこととなるため、遺産をもらわない場合は、遺言書の文面を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所にて相続放棄の申述をしなければなりません。
受遺者の相続放棄が受理されると、遺言書記載の受遺者が存在しないこととなりますので、遺言公正証書の効力は生じません。
アドバイス3 相続人全員の同意があれば法定相続割合で分割しなくても良い
最後に、遺言書の効力がない場合は、共同相続人間(姉、弟)で遺産分割協議をすることとなります。法定相続分は2分の1ずつですが、遺産分割協議にて双方の合意があれば法定相続分に縛られず自由に分割できます。
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