【事例】面倒を見てくれる甥っ子に遺産を多く渡すには?(77歳男性 資産4,000万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、甥に遺産相続させた場合の相続税について、77歳男性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、行政書士しばた法務事務所の行政書士・柴田龍浩さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士〉
元小学校教員。現在、行政書士しばた法務事務所代表兼、株式会社イグジスト代表取締役。自身で福祉事業所を営むなど、高齢者等の様々なライフステージにおいて多岐にわたるサービスを提供。不動産や遺品整理、信託、生活保護など幅広い対応を一括して行ういわば高齢者・終活コーディネーター。
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家族がもめないように相続対策をしたい
相談内容
自分には娘がいますが10年以上疎遠となっており、甥が一番生活の世話をしてくれています。できれば遺言書を作成してできるだけ多く甥に遺産を渡したいです。どうすればもめずに相続対策できますか?
- プロフィール:77歳男性
- お住まい:埼玉県
- 家族構成:長女、弟、甥(弟の子ども)の3名
- 被相続人:相談者本人
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 自宅マンション(50㎡) | 2,000万円 |
預貯金 | 1,000万円 | |
有価証券 | 500万円 | |
生命保険 | 契約者・被保険者:相談者本人 受取人:長女 |
500万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 遺言書を作成しなかった場合・・・
遺言書を作成しなかった場合は、(ア)相続人に対し、(イ)法定相続分もしくは遺産分割協議に沿った取り分を分けることとなります。
(1)相続人
今回のケースでは配偶者は既に他界、お子様が1名ということですので、相続人はお子様(娘さん)おひとりということになります。
(2)取り分について
相続人が1名のため、100%がお子さん(娘さん)に継承されることとなります。もちろん、相続人は1名のため、分割協議の余地はありません。
なお、相談者様の弟さんと甥っ子さんは今回のケースでは相続人とはならないので、遺産分割の協議すら参加できません。
アドバイス2 遺言書を作成した場合・・・ 遺留分に注意
遺言書を作成すれば、相談者様の想いを遺産継承に反映させることが可能です。
もちろん、遺言書についてはいくつか種類があり、そのすべてはご自身で進めることが可能です。ただし、「自筆証書遺言」については、たった一つの間違いですべてが無効になってしまう危険性があるので、「公正証書遺言」の作成をおすすめします。
公正証書遺言の作成には公証役場とのやり取りが必要となります。手間を省き、詳しい相談を行いながら遺言作成をされたい場合は行政書士にご相談ください。
ところで、遺言書に「遺産はすべて甥に与える」旨を書くことで、すべての遺産を甥っ子さんに渡すことができます。ただし、以下の点に注意が必要です。
(1)生命保険
生命保険の受取人はお子さん(娘さん)となっているので、これは遺産分割協議の対象外であり、無条件に受取人である娘さんに支払われることとなります。
(2)遺留分
遺留分といって、本来遺産を受け取れるはずの相続人は自分のもらえるはずだった遺産の一部の受取を主張することができます。その額は法定相続分の半額ですので、今回であれば50%の主張をお子さん(娘さん)が行うことが可能です。ただし、この遺留分については主張があった場合に対応する必要があるものですので、遺言書は一旦「すべて甥に」と書いても差し支えありません。
娘さんがこの遺留分の主張をした場合、50%は遺言書の内容とは裏腹に娘さんに継承されることとなります。
アドバイス3 もめないように配慮して遺言書を作成
上記に述べたとおり、遺言書の内容は自由ですが、その後遺留分の主張などの可能性を考慮して作成されることをおすすめします。
(1)生命保険の扱いの注意
分割の割合については遺留分も考慮し、50%は娘さんに渡すようにされたほうが良いでしょう。このままだと娘さんは生命保険として500万円を受け取ることになりますが、これは通常であれば遺産分割に含まれません。ですので、この生命保険についても、遺産分割の対象としたほうが結果的にスムーズで公平です。
生命保険を遺産分割の対象とするためには、受取人名を工夫する必要があります。詳しくは、生命保険の担当者に相談するか、遺言書作成時に生命保険についても相談できる対応力のある行政書士を選ぶことをおすすめします。
(2)自宅マンションの扱いに注意
自宅マンションの遺産分割をする必要がありますが、マンションを不動産としてそのまま娘さんと甥っ子さんの50%ずつの共有とすることは絶対におすすめしません。なぜなら、管理などの際にその2名が力を合わせる必要が常に発生するからです。これは現実的ではありません。
ですので、娘さんか甥っ子さんが住まれるのであれば、不動産はそのまま丸ごとどなたか1名の所有とするのが良いでしょう。その場合、マンションは一体幾ら相当の価値があるのか、が重要となってきます。
ある程度その価値を正確にとらえないと、高すぎる安すぎるという争いに発展します。これは固定資産税などの公的な評価の額ではなく、実際に売却可能な額をもとに算出することをおすすめします。そのためには、不動産業者への査定依頼が必要です。不動産査定を代理でとれる対応力のある行政書士に、遺言書作成とともに一括して頼むのも一つの手です。
結論とまとめ
遺言書作成時には、以下の4点が重要となります。
- 有効な遺言書の作成
- 遺留分への配慮
- 不動産の額の査定
- 生命保険の受取人の調整
単に遺言書の作成だけであれば、行政書士の対応力に大きな差はありません。しかし、不動産や生命保険といった幅広い分野についての対応力は行政書士によってまちまちです。
遺言書作成となっても、単に遺言書の作成だけにとどまらないことがほとんど。幅広い対応力のある行政書士を選ぶことで、スムーズにかつ確実で中身の質の高い遺言書作成が行えます。
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専門オペレーターが丁寧にお話を伺いサポートしますので、お困りの方は、お気軽にご相談ください。
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元小学校教員。現在、行政書士しばた法務事務所代表兼、株式会社イグジスト代表取締役。自身で福祉事業所を営むなど、高齢者等の様々なライフステージにおいて多岐にわたるサービスを提供。不動産や遺品整理、信託、生活保護など幅広い対応を一括して行ういわば高齢者・終活コーディネーター。
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