【事例】妹の取り分を増やして遺言書を作成したい(69歳女性 資産4,400万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、兄弟の取り分に配慮して遺言書を作成したいという、69歳女性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、玉野行政書士事務所の行政書士・玉野由美さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士、宅地建物取引士、相続診断士〉
山口県周南市、下松市、光市、防府市の4市で、相続(終活)を専門として日々活動しております。「笑顔相続」の案内人として一つ一つの案件に丁寧に対応させて頂いております。
▶玉野行政書士事務所
弟妹でもめないように遺言書を作成したい
相談内容
私は独身のため、遺産は弟妹に渡るかと思います。自分には夫や子どもがいなかったので、弟たちの事業や生活の面倒を一生懸命見てきました。そのため、あまり面倒を見てあげられなかった妹の分の遺産を増やしたいと思うのですが可能ですか?弟妹でもめないよう対策もしたいです。
- プロフィール:69歳女性
- お住まい:福岡県
- 相続人:弟2人、妹
- 被相続人:相談者本人
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 自宅マンション(45㎡) | 1,200万円 |
預貯金 | 2,000万円 | |
有価証券 | 1,000万円 | |
生命保険 | 契約者・被保険者:相談者本人 受取人:妹 |
200万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 兄弟に遺留分侵害額請求権はない
まず、ご兄弟は法定相続人にはなりますが、遺留分侵害額請求権がないので、相談者様のご希望通りの財産分与になります。ちなみに遺留分侵害額請求権とは、最低限の相続割合を保障する「遺留分」を請求できる制度です。
そして、相談者様は不動産も所有されているので、相続人同士のトラブルを防ぐためにも、遺言書で必ず遺言執行者を指定しておきましょう。
アドバイス2 遺言書を作成するなら公正証書遺言がよい
今回のように相談者様が自分の意思で遺言書の作成を希望されている場合、そして時間がある場合は、複数ある遺言の方式のなかでも、公正証書遺言をおすすめします。
理由としては、以下の通りです。
- 公証人が作成するため法的に有効が保証されている
- 公正証書遺言の原本が公証役場に保管されるため紛失や隠匿等についても防止できる
- 自筆証書遺言と異なり、家庭裁判所での検認手続きが不要
ただし、公正証書遺言は自筆証書遺言と比べると、作成までに時間と費用がかかるのが難点です。
また、大変稀なケースですが、相続人全員の合意があれば、遺言書があっても「遺産分割協議は可能」となることがあります。
アドバイス3 遺言書の付言事項をきちんと書いておく
相談者様の希望に沿う遺言書を作成した場合、どうしても各相続人間で不公平が生じてしまいます。
だからこそ、
- なぜ遺言書を作成したのか
- どうして遺言書のような財産分与になったのか
- 残されたご兄弟に相談者様が自身の死後、どのような事を望まれるか
を、付言事項として公正証書遺言と一緒に遺されることをおすすめします。
そうすることで、作成される遺言書が本来の役目を果たすことになります。
また相談者様のご年齢も踏まえて、見守り契約や任意後見人(移行型)及び死後事務委任を提案しておくことで、相談者様がもし今後そのような助けを必要とした場合、安心して相談できる「人と場」の準備をすることができます。
そして、できるだけ行政書士などの専門家を遺言執行者に指定して、「遺言執行引受予諾確認書」の契約を締結しましょう。私ども行政書士は、相談者様に未来を託されているのです。
【玉野先生が今回の案件を受任した場合】
最初に、公正証書遺言は時間がかかりますので、相談者様にその場で、自筆で遺言書を書いていただきます。誰にどの財産を残したいかを詳しく考えていただきます(日付・氏名・実印又は認印)。そうすることで、相談者様の想いと作成までに時間がかかる不安を払拭します。
次に推定相続人を確定し、最後に、財産調査をさせていただきます。
ただ、上記の手続き通りに進むには、相談者様とのたびたびの面談は欠かせません。
それらを考慮して書面に落とし込んでいくのです。私ども行政書士は、紛争分野に入っていくことができません。だからこそ、事実を積み重ねて、それらを書面に記すのです。
相談者様の想いや事実を記載し、そして法律的に有効な遺言書へ。
ちなみに生命保険は、相談者様が亡くなられた場合、受取人の固有の財産になります。
下記が、私が作成するであろう遺言書の原案になります。参考になれば幸いです。
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