【事例】夫の遺産分割協議を終えた後に隠し子の存在が発覚。隠し子に遺産を渡さなければいけませんか?(34歳女性・遺産5,400万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、夫の遺産分割協議後に隠し子が発覚したケースについて、34歳女性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、安部行政書士事務所の行政書士、安部亮輔さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士〉
平成23年行政書士登録。10年以上のキャリアがあり、多くの相続案件をご依頼いただきました。相続人が多数いる複雑な案件にも自信があります。
「身内の死という、人生において最も悲しい時期を迎えられているお客様の手助けをしたい」という理念のもと、業務に励んでおります。
▶安部行政書士事務所
見知らぬ女性から遺産を要求されました
相談内容
夫が急な事故で亡くなりました。バタバタと葬儀を執り行い、義両親と遺産分割協議をした後、夫と内縁関係だったという女性が訪ねてきました。しかも夫の子らしき子どもも一緒で、夫の遺産を要求してきたのです。
正直一銭も渡したくないし、遺産分割協議も終えてしまったのに、この子どもに遺産を渡さなければいけませんか?
- プロフィール:34歳女性
- お住まい:山口県
- 相続人:妻(相談者本人)、義母、義父の3名
- 被相続人:夫
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 自宅マンション(65㎡) | 2,500万円 |
預貯金 | 2,400万円 | |
生命保険 | 契約者・被保険者:夫 受取人:妻 |
500万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
はじめに
相続が発生すると遺産分割協議が行われることが多くあります。
法定相続分通りに相続する場合、特に遺産分割協議書を作成する必要はありません。
しかし、不動産などの分割しにくい遺産があると、法定相続分通りに遺産を分割することが困難になりますし、仮に不動産を複数の相続人で共有した場合、後々権利関係が複雑となることから、遺産分割協議により遺産を分け合うことが想定されます。
遺産分割協議書を作成する際には、戸籍を収集し誰が相続人なのか確定させる必要があります。
しかし、「他に相続人がいるわけがない」と思い込んで戸籍の収集を怠り遺産分割協議を行った場合、今回のケースのように思わぬ展開となることがあります。
アドバイス1 遺産分割協議書のやり直しができる場合
そもそも、一度協議がまとまった遺産分割協議がやりなおせるのか。
1 相続人全員の合意がある場合
相続人全員の合意がある場合、遺産分割協議書のやり直しができるとする最高裁判所の判例があります。
しかし、全員が遺産分割協議書のやり直しに合意するのは極めて稀なケースであるため、簡単なことではないと考えておく方が良いでしょう。2 本来相続人である者を省いて行われた遺産分割協議の場合
今回のように、妻や義両親が知らないところに被相続人の子どもがいた場合、その子どもから遺産分割協議のやり直しを求められたとき、遺産分割協議はやり直しをしなければなりません。
本来相続人である者が参加していない無効な遺産分割協議として扱われるからです。
たとえその子どもの存在を妻や義両親が知らなかったとしても、同様の結論となります。
もちろん遺産分割協議のやり直しが認められるには、その子どもが被相続人から認知をされている(本来の相続人である)必要があります。
今回のケースでは遺産分割協議をする前に、被相続人の戸籍をしっかりと読み込んで、認知されている子どもがいないか、その存在を調べる必要があったといえます。
アドバイス2 内縁関係の子にも相続権がある
内縁関係の者との間に生まれた子であっても、被相続人の子であれば相続権が発生します。
ここでいう子というのは、法律上の子であることを意味します。
生物学上の子であっても、被相続人から認知(自分の子であると認めること)がされていない場合は法律上の子には該当しません。
また、認知には生前認知と死後認知というものがあります。
死後認知とは遺言によって認知を行うものです。
この死後認知が行われた場合で、死後認知よりも先に遺産分割協議が行われていた場合には、遺産分割協議のやり直しを求めることはできず、自己の法定相続分に応じた価額を請求できるにとどまります。
アドバイス3 今回のケースの法定相続割合
まず、今回の法定相続人は妻と、内縁関係の子の2人となり、そして法定相続割合は妻が2分の1、内縁の子が2分の1となります。
やり直しを行うことで多くの遺産を内縁の子にわたす必要がでてきます。
仮に死後認知の子であったとしても、遺産の半分を子に渡す必要があるのです。
さいごに
このように被相続人に内縁関係の子がいたような場合は、とても大変な手続きが求められます。
このようなことにならないためにも、あらかじめ遺言書を作成する、相続手続きは慎重に行うといった工夫が必要です。
遺言書作成、相続手続きは専門家への依頼をおすすめします。
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〈行政書士〉
平成23年行政書士登録。10年以上のキャリアがあり、多くの相続案件をご依頼いただきました。相続人が多数いる複雑な案件にも自信があります。
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