【事例】長年身の回りの世話をしてくれた息子の嫁に、財産を残したい(70歳男性 資産5,300万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、長年身の回りの世話をしてくれた息子の嫁に遺産を残したいという、70歳男性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、行政書士福祉法務オフィス・フェリスの行政書士、大森 美保さんです。
この記事を書いた人
〈行政書士、社会福祉士〉
相続を、大切に思う人達の幸せを想う「想続」に。ひとりひとりの想いやお悩みを大切にし、相続、遺言書作成、終活、成年後見など、ニーズにあったより良いご提案・ご提供ができるよう、日々精進しております。
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良くしてくれた息子の嫁に財産を残したい
相談内容
自分は病気を患い、残り少ない人生となりました。気がかりなことは、長年身の回りの世話をしてくれた息子の嫁のことです。息子が10年前に事故で亡くなって子どももいないのに、嫁は一緒に暮らしてくれました。 自分が死んだら妻と兄弟に遺産が行くでしょうが、嫁に財産を残す方法はありますか?兄弟とは長年顔もあわせてないので、遺産を渡す必要はないと考えています。
- プロフィール:70歳男性
- お住まい:奈良県
- 相続人:妻、弟、妹の3名
- 被相続人:相談者本人
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 自宅戸建て(土地・家屋) 土地140㎡ |
2,800万円 |
預貯金 | 1,500万円 | |
有価証券 | 500万円 | |
生命保険 | 契約者・被保険者:相談者本人 受取人:妻 |
500万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 息子の嫁には、相続権が認められない
相談者様の法定相続人は、配偶者(妻)とご兄弟となります。息子の嫁は法定相続人になることはできず、残念ながら、相続権は認められません。
相続権が認められる可能性として、寄与分という「遺産に対して特別の貢献をした人が、自分の貢献度を理由として、より多くの遺産を受け取ることを主張する制度」があります。
ご子息が亡くなられた後も、ご子息のお嫁さんは、相談者様の長年身の回りの世話をしてくれたそうですが、お嫁さんが寄与分を主張することはできません。寄与分を主張できるのは、法定相続人のみであるためです。息子の嫁はそもそも相続人ではありませんので、寄与分を主張することはできません。
アドバイス2 息子の嫁に財産を渡す方法
では、相談者様が息子の嫁に財産を渡すには、どのような方法があるのでしょうか。相談者様の現在の状況においては、以下の3つが考えられます。
1.「遺言書」を作成する
「息子の嫁に財産の一部を与える」という旨の遺言書を作成する。遺言書を作成しておけば、相談者様の意思で遺贈したことが明確となります。それにより、息子の嫁の献身的な貢献には応えられます。
なお、遺言書で息子の嫁に相続させると指定しても「遺留分」の問題が出てきます。「遺留分」とは、一定の相続人に対して遺言によっても奪うことのできない遺産の一定割合の留保分のことで、法律上確保された最低限の財産のことをいいます。相談者様の場合には、相談者様の配偶者(妻)には遺留分があります。一方、兄弟の方々には遺留分は認められておりません。
2.「養子縁組」をする
相談者様と息子の嫁が養子縁組を行い、相談者様の養女とします。それにより、息子の嫁は被相続人の法定相続人となり、相談者様の遺産を相続する権利を持ちます。
3.「生前贈与」をする
生前贈与することで、相続人ではない息子の嫁に、財産を直接渡すことができます。ただし、金額によっては贈与税がかかる場合があること、多額の財産を生前贈与した場合は原則として相続開始前の1年間に限り、遺留分侵害額請求の対象となることをご注意ください。
なお、相談者様のお身体の状況や契約条件によって可能であれば、息子のお嫁さんを生命保険の受取人にするのも一つの方法です。
まとめ
以上のように、息子の嫁に財産を渡す方法はいくつかあります。しかしながら、これらの方法をとることで他の相続人との間でトラブルが生じるリスクがあります。あらかじめ予防策も考えておきましょう。相談者様のご子息のお嫁さんの貢献に対する感謝の想いが、親族の軋轢を生むことになってしまっては、ご子息のお嫁さんを辛い立場へ追い込んでしまう可能性もあります。
たとえ息子の嫁が家業を手伝ったり、身の回りの世話をしてくれたり、いろいろ尽力してくれた存在でも(あるいはその逆でも)、相続までに何のアクションも取らないと、一切遺産が渡りません。
生前から遺産の分け方や遺言書の書き方などを、行政書士をはじめとした専門家に相談することで、もめやすい点などもアドバイスを受けることができます。事前に他の相続人に理解を求めることや納得のいく方法・範囲で息子の嫁に財産を渡しておくと良いでしょう。
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