【事例】実家を兄弟で半分ずつ相続したあと弟の相続分を兄が買い取りたい(53歳男性 遺産5,000万円)【FP執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、実家を兄弟で半分ずつ相続したのち、弟の相続分を兄が買い取りたい場合について53歳男性の方からの相談事例をご紹介します。
「いい相続」の運営会社(株)鎌倉新書在籍のファイナンシャルプランナーminorinが解説します。
目次
この記事を書いた人
【所有資格】 行政書士試験 平成23年度合格/ 宅地建物取引士 平成26年度合格/ 3級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP)
【専門・得意分野】 企業法務全般、不動産関連法務、経営助言
実家を兄弟で半分ずつ相続、弟の相続分を兄が買い取りたい場合
相談内容
今年両親が相次いで亡くなりました。
3ヶ月前に亡くなった父の相続財産は、年金暮らしでしたので預貯金は少なく、実家の土地・建物が主な財産でした。
これらの相続財産は、遺言がありませんでしたので兄と話し合った結果、全てを均等に相続することにしました。ただ、兄の強い希望により実家には兄の家族が移り住むこととなりました。兄は後約7年で定年を迎えるので、退職金の支給等でお金ができ次第、私の持分を買い取りたいとのことでした。
このような事情がある場合、相続手続き等で注意することはなんでしようか。
- プロフィール:53歳男性
- お住まい:兵庫県
- 相続人:兄、弟(相談者)
- 被相続人:父
総額5,000万円
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 実家 200㎡ |
4,700万円 |
預貯金 | – | 300万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 手続きを簡単に済ませたいなら単独相続も検討
お兄様が相続財産である実家に住まわれることを希望しており、かつ、将来的には相談者の持分を買い取りたいとの希望を有しているということですので、このようなケースをどう相続手続きなどに反映させればよいのかは悩ましいところです。
相続財産を共同相続した場合、遺産分割(民法第906条以下)手続きが終了するまで相続財産は相続人が共有することとなります(民法898条)。
本事案ではお兄様が将来的には相談者の持分を買取り、相続財産である実家を所有したいという意思を明確に示されているので、遺産分割協議の中で実家はお兄様の単独所有として遺産分割協議書を作成して、これを利用して実家の相続登記を行うという方法も考えられます。
この方法であれば、手間もかからず(実家を共有登記して後日相談者の持分を移転登記すると登記を2回することになります)登記を行う際に必要な登録免許税的にも有利となる(相続の場合は0.4%ですが、後日相談者から買取る場合は1.5%です)ので、最初から実家はお兄様の単独所有として遺産分割手続きを進めることができます。
加えて遺産分割協議協議書には支払い条件等遺産分割に際してのお兄様の義務を定めることができるので手続きの面でみれば合理的な方法と思われます。
単独相続の場合の問題点
しかし、この場合はお兄様がご相談者様から譲られた半分の持分の支払いを行わないという心配もあります。
一旦成立した遺産分割協議書は債務不履行を理由として解除することは出来ません(最高裁平成元年2月9日判決 解除を認めると民法909条本文により遡及効を有する遺産の再分割を余儀なくされ、法的安定性が著しく害されることになる、というのが理由です)。
つまり、支払いがなかったとしたら、ご相談者様が粘り強く支払いの履行を求めることしかできないのです。(裁判所の助力を受けることが出来ない)。
本事案のように支払いまでお兄様の退職まで7年という期間があり、かつ、支払いの目処が立っていない場合に単独相続をしてしまうことに対しては不安が残りますので、「強制執行認諾文言付きの公正証書による遺産分割協議書」というある意味特殊な遺産分割協議書を作成すれば、お兄様の債務不履行時には強制執行による解決手段(要は差押えですね)を取ることも可能となりますが、そこまでの遺産分割協議書を作成しているケースは多くは無いですし、これを作成するとかえって兄弟間の争いの種となりかねません。
アドバイス2 遺産分割協議書の作成は必須、他にも契約を
お兄様が、相談者から持分を買取ることのできるとする具体的な見込み時期まで約7年あります。その間に実家の状況の変化や相続人の環境・状況の変化があることは十分にありうることです。
従いまして、相続財産を均等に相続されるという意思が合致しているのであれば、遺産分割協議としてはその旨で協議書を作成して、ご自身の持分等を相続登記し、その他の相続財産を均等に分割した上で、その後実家の使用については別途兄弟間で賃貸借契約などの契約を締結したほうが、後日の「争続」の発生を防ぐことになると思います。
兄弟間で遺産分割協議書以外にさらに契約書の作成なんて・・・と思われるかもしれませんが、財産に関係することは兄弟間といえども争いになりやすいですし、将来のことは分かりません。堅苦しいと思うかもしれませんが後々のためにも遺産分割協議書とは別に実家の利用・将来の処分に関しては契約書を用意することをお勧め致します。
本事案のように少々考慮しなければいけない事情があるケースの場合には、色々と専門知識を活用して書類の作成や手続きを進めなければ適切に解決を導くことは出来ません。ぜひ、専門家にご相談の上で対応方法を決めてください。
相続についてのご相談は「いい相続」へ
いい相続では、全国各地の相続の専門家と提携しており、相続手続きや相続税申告、生前の相続相談に対応できる行政書士や税理士などの専門家をご紹介することができます。
専門オペレーターが丁寧にお話を伺いサポートしますので、お困りの方は、お気軽にご相談ください。
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この記事を書いた人
【所有資格】 行政書士試験 平成23年度合格/ 宅地建物取引士 平成26年度合格/ 3級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP)
【専門・得意分野】 企業法務全般、不動産関連法務、経営助言
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