【事例】父が亡くなった後に振り込まれた年金は相続財産になる?(53歳男性 遺産460万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、父が亡くなった後に振り込まれたという、53歳男性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、行政書士ときた事務所の行政書士、社会保険労務士・鴇田 誠治さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、CFP®、不動産コンサルティングマスター〉
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父の年金は、相続財産になる?
相談内容
先日父が亡くなり遺産は妹と平等に分けると決まりました。しかしその後に父の口座に年金が振り込まれていました。これは相続財産になるのでしょうか?
- プロフィール:53歳男性
- お住まい:千葉県
- 相続人:長男(相談者本人)・長女の2名
- 被相続人:父
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
預貯金 | 260万円 | |
有価証券 | 100万円 | |
生命保険 | 契約者・被保険者:父 受取人:長男 |
100万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 年金の受給者が死亡したら「受給権者死亡届(報告書)」の提出が必要
年金の受給者が死亡すると年金を受給する権利を失いますので、遺族の方は年金事務所に受給権者死亡届(報告書)を提出して、年金の支払いを停止の手続きをする必要があります。
年金は、受給権者が亡くなられた月の分までは支給されます(日割り計算は行われず、1日に亡くなっても1カ月分が支給されます)が、もし、受給権者死亡届(報告書)の提出が遅れてしまって、亡くなった月の翌月以降分の年金が通常通り振り込まれてしまった場合には、返還をしなければなりません。
例えば、4月20日に受給権者が亡くなって、受給権者死亡届(報告書)の提出をしないまま6月15日に4月分・5月分の年金が振り込まれてしまった場合は、5月分を返却しなければなりません。具体的には、年金事務所から「納入告知書」が届くので、そちらを確認して指示に従って返還することになります。
アドバイス2 未支給年金とは何ですか?
年金は偶数月の15日に、前月と前々月分の2か月が年6回に分けて支給されます。仮に、年金の受給権者が7月20日に亡くなられた場合、その方が最後に受け取った年金は、6月15日に支給された4月分と5月分になります。
年金は、受給権者が死亡した月の分まで支給されるため、生きていれば8月15日に支給されたはずの6月分と7月分の年金は未支給の状態となります。これを未支給年金といいます。
アドバイス3 未支給年金を受け取れる遺族
未支給年金は、年金を受けていた方が亡くなった当時、その方と生計を同じくしていた、(1)配偶者 (2)子 (3)父母 (4)孫 (5)祖父母 (6)兄弟姉妹 (7)その他(1)~(6)以外の3親等内の親族が受け取れます。
ただし、未支給年金を受けられる遺族には順位があります。
1番目が配偶者、2番目が子、3番目が父母、4番目が孫、5番目が祖父母、6番目が兄弟姉妹、7番目がこれらの者以外の3親等内の親族の順序になります。
なお、三親等の親族とは、曾孫、曾祖父母、甥・姪、おじ・おば(伯叔父母)、配偶者の曾祖父母、配偶者の甥・姪、配偶者のおじ・おば(伯叔父母)などのことです。
アドバイス4 未支給年金は相続税の課税対象ではなく一時所得
未支給年金は、被相続人と生計を一にしていた人に請求権があります。
これは民法の相続とは別に、受給権者であった人の収入で生活していた遺族の「生活保障」を目的として一定の遺族に支給すると認めたものです。
つまり、未支給年金は民法の規定する相続に関わらず「自己の固有の権利」として請求するものなので、未支給年金は請求権のある人の財産となり、相続財産には含まれず、受け取った方の一時所得となります。未支給年金を含むその年の「一時所得」の合計額が50万円を超える場合には、確定申告が必要になります。具体的なことは最寄りの税務署などに確認してください。
アドバイス5 未支給年金は相続放棄しても受け取れる
相続放棄とは、亡くなった人の財産を相続できる権利を放棄することです。プラスの財産(家や預金)・マイナスの財産(借金や負債)に関わらず、「相続財産」を相続できなくなります。ここでは、『相続できなくなるのは相続財産である』というのがポイントです。
つまり、先ほど述べましたように、未支給年金は「自己の固有の権利」として請求するもので、相続財産ではありませんから、相続放棄をした遺族であっても未支給年金を受け取ることは可能ということになります。
年金に関する相談は、最寄りの年金事務所または社会保険労務士に相談すると良いでしょう。
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