【事例】「引きこもりの長男にすべての財産を渡したい」という母。長女の私はそれに従うべき?(43歳女性 資産2,400万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、「引きこもりの長男にすべての財産を渡したい」と母から言われた、43歳女性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、ヴェルニー行政書士事務所の行政書士・大友 康生さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士、相続診断士、終活カウンセラー〉
相続・遺言・生前対策専門の行政書士。インターネットで全国対応。見積り比較サイトでの口コミ評価は5段階中4.9と親切丁寧な対応が評価されている。相談は完全無料。電話・メール・ZOOMで完結する「リモート遺言状サービス」を展開中。また介護の負担を軽減し、親に遺言状を書いてもらえる『生前対策一体型遺言』も全国対応で展開中。
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引きこもりの兄に遺産を残したい母。私は我慢するしかない?
相談内容
病気の母から連絡が入り「遺言書を作成したい。引きこもりの長男のことが心配だから、遺産はすべて長男に渡しても良い?」と聞かれました。
私としては不本意ですが、母の希望通りにしなければなりませんか?遺産を渡すなら、兄の面倒は見たくありません。
- プロフィール:43歳女性
- お住まい:静岡県
- 相続人:長男、長女(相談者本人)の2名
- 被相続人:母(健在)
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 自宅マンション(50㎡) | 1,400万円 |
預貯金 | 700万円 | |
生命保険 | 契約者・被保険者:母 受取人:長男 |
300万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
はじめに
相談者様、最近は弟様のように働き盛り世代の引きこもりというケースが珍しくありません。ご家族としても心配なところですね。
さて、ご相談の件については、法的な側面と法律を離れた家族としての側面の2点から回答させていただければと思います。
アドバイス1 遺言書がある場合、原則として遺言書通りに執行される
まず法的な側面についてご説明いたします。
- 遺言書が作成された場合、相続手続きは遺言書どおりに執行されるのが原則です。
- ただし「相続人全員の合意に基づき遺産分割協議書を作成した場合」は、その内容が遺言書よりも優先されます。
- 遺言書の内容に納得がいかない場合、相続人は「遺留分侵害額請求」という手続きをとることで、遺留分を侵害している他の相続人に、遺留分として法定相続分の2分の1を請求することができます。
今回のケースの場合
これを相談者様のケースに当てはめると
- お母様がお亡くなりになった場合、弟様は遺言書通り遺産の全額を受け取ることができます。
- ただし、例えば弟様が「やはり自分ひとりですべての遺産を相続するのは気が引けるのでお姉さんと半分ずつ分けたい」と言って、ご相談者様もそれに合意されるのであれば、遺言書があっても、お2人で決めた分け方で遺産分割をすることができます(実際にそういうケースもまれではありません)。
- もし弟様が遺言状通りすべての遺産を相続したいと考え、相談者様が納得いかない場合、以下の流れで遺留分侵害額請求を行います。
② 弟さんと話し合う
③ 話し合いがまとまったら合意書を取り交わす
④話し合いがまとまらなかったら、家庭裁判所に遺留分侵害額請求の調停申立てをする
となります。
アドバイス2 早いうちに家族でよく話し合うことが大切
次に、法律を離れた家族としての側面からの回答ですが、まずは相談者様の正直なお気持ちを柔らかな形でお母様に伝え、そのうえで、弟様の自立について家族でよく話し合うことをおすすめします。
「すべての財産を弟様に遺す」というお母様の考えが、弟さんにとってプラスかマイナスかは何とも言えませんが、いずれにしても、弟さんが30代半ばから40代であれば、残りの人生を1,400万円のマンションと1,000万円の現預金で生活していくのは難しいでしょう。したがって、どうしても自立することが必要となります。
年齢の面でもキャリアの面でも自立が遅れるほど状況は厳しくなりますので、その点をお母様にも弟様にもよく理解していただき、家族全体で、早めに弟様の自立を促していくことが望ましいかと思います。
もしご家族だけで良い考えが浮かばないようであれば、厚生労働省の引きこもり支援事業として都道府県、市区町村などが運営する引きこもり地域支援センターなどで相談を受け付けていますので、専門の相談員に相談してみるのも良いでしょう。
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