【事例】相続人代表者指定届が届いたがどうしたらいいか(85歳女性 遺産調査中)【FP執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、亡くなった方の遺産を調査中に「相続人代表者指定届」が届いたとの相談事例をご紹介します。
「いい相続」の運営会社(株)鎌倉新書在籍のファイナンシャルプランナーminorinが解説します。
目次
この記事を書いた人
【所有資格】 行政書士試験 平成23年度合格/ 宅地建物取引士 平成26年度合格/ 3級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP)
【専門・得意分野】 企業法務全般、不動産関連法務、経営助言
相続人代表者指定届が届いたがどうしたらいいか
相談内容
85歳の母の相続について、代理で相談させていただきます。今年に入り、疎遠だった母の弟が亡くなりました。 母は足が悪く、耳も遠く、一人で出歩くには補助が必要な状態。 もう一人の相続人である母の妹は80歳、独身で遠方に住んでいます。
高齢な母と遠方に住んでいる叔母に代わって娘の私が代わっていろいろ手配しているのですが、亡くなった叔父が住んでいた地域の土地勘がなく手続きや調査に苦労しています。 まだまだ、いろいろなことを調べないといけないのですが、そんな折に母あてに亡くなった叔父が住んでいたマンションがある市役所から相続人代表者指定届を提出してください、との連絡が届きました。
遺産全体の把握も終わっていないのにどうしたらいいでしょうか。断ってもいいのでしょうか?
- プロフィール:85歳女性(相談者は娘)
- お住まい:千葉県
- 相続人:姉、妹
- 被相続人:弟
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 自宅(分譲マンション) 35㎡ |
800万円 |
住宅ローン | 団信で相殺予定 | 500万円 |
預貯金 | – | 50万円 |
その他 | – | 調査中 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 相続人代表者指定届は提出しなくても罰則はないが指定を拒否することは出来ない
「相続人代表者指定届」とは、亡くなった人が固定資産(不動産等)を持っている場合、亡くなった人の代わりに固定資産税等の納税通知書を受け取る人「相続人代表者」として指定する届け出のことです。
相続人代表者となった人は、その後市町村から送られてくる固定資産税の納税通知書を受け取ることとなります。
相続人代表者を届け出ることとされているのは、相続が発生しても、遺産分割協議(民法907条参照)がすぐにまとまるわけではなく、新たな財産承継人が決まるまでには時間がかかるのが普通ですが、その間にも相続財産となった不動産などの固定資産に対する固定資産税は発生し、市町村では固定資産税の課税明細書を送付しなければならないことより、相続人代表を定めて課税明細書を送付できるようにするため、代表者を届け出てもらう求めることとしているためです。
「相続人代表者指定届」は、提出しなくても特に罰則はありません。ただ、提出しなければ市町村側で相続人代表者を指定するのが通常です。
指定の基準は公開されていないので不明ですが、相談者のお母さまは被相続人の住んでいた市役所から指定の連絡を受けていますので、相続人代表者として指定されるケースがほとんどであると思います。なお、この制度の根拠である地方税法第9条の2により、指定を拒否することは出来ないと考えられます。
出典:e-GOV 地方税法(相続人からの徴収の手続)
第九条の二 納税者又は特別徴収義務者(以下本章(第十三条を除く。)においては、第十一条第一項に規定する第二次納税義務者及び第十六条第一項第六号に規定する保証人を含むものとする。)につき相続があつた場合において、その相続人が二人以上あるときは、これらの相続人は、そのうちから被相続人の地方団体の徴収金の賦課徴収(滞納処分を除く。)及び還付に関する書類を受領する代表者を指定することができる。この場合において、その指定をした相続人は、その旨を地方団体の長に届け出なければならない。
2 地方団体の長は、前項前段の場合において、すべての相続人又はその相続分のうちに明らかでないものがあり、かつ、相当の期間内に同項後段の届出がないときは、相続人の一人を指定し、その者を同項に規定する代表者とすることができる。この場合において、その指定をした地方団体の長は、その旨を相続人に通知しなければならない。
3 前二項に定めるもののほか、第一項に規定する代表者の指定に関し必要な事項は、政令で定める。
4 被相続人の地方団体の徴収金につき、被相続人の死亡後その死亡を知らないでその者の名義でした賦課徴収又は還付に関する処分で書類の送達を要するものは、その相続人の一人にその書類が送達された場合に限り、当該被相続人の地方団体の徴収金につきすべての相続人に対してされたものとみなす。
なお、相続人代表者指定届を提出または相続人代表者として市区町村から指名された場合は、以後相続財産であるマンションの固定資産税の納税通知書がご相談者のお母さまに送付されてきます。期日までに納付しなかった場合は滞納処分の通知書も送られてきます。
アドバイス2 相続人代表者の相続手続き上の注意点
相続財産は遺産分割協議が終了するまでは相続人全員の「共有」に属します(民法898条参照)。
出典:e-GOV 民法(共同相続の効力)
第八百九十八条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
ですので、遺産分割協議が終了するまでは納付書が送られてくる固定資産税をご相談者のお母さまがおひとりで支払う義務はありません(ただし、支払いを怠ると当該固定資産税には滞納処分がなされます)。
仮にご相談者のお母さまが全額支払った場合には、遺産分割協議時にマンションの維持費等を含めて相続人全員が負担すべきものであったとして精算をする必要があるでしょう。
また、この点に関しては後日の争いを避けるためにも、お母さまの妹様にはしっかりと説明し、納得してもらったうえで届け出をして、税金を納付するようにしましょう。
相続についてのご相談は「いい相続」へ
いい相続では、全国各地の相続の専門家と提携しており、相続手続きや相続税申告、生前の相続相談に対応できる行政書士や税理士などの専門家をご紹介することができます。
専門オペレーターが丁寧にお話を伺いサポートしますので、お困りの方は、お気軽にご相談ください。
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【所有資格】 行政書士試験 平成23年度合格/ 宅地建物取引士 平成26年度合格/ 3級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP)
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