【事例】エンディングノートは遺言書になりますか?(70歳女性 資産1,590万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、エンディングノートと遺言書の違いについて、70歳女性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、行政書士キズナ法務事務所の行政書士、小嶋 秀和さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士、家族信託専門士、ファイナンシャルプランナー、相続診断士、宅地建物取引士、不動産コンサルティングマスター、賃貸不動産経営管理士、宅建業免許〉
相続・生前対策に特化した千葉市の法務事務所です。認知症による資産凍結対策に有効な家族信託に力を入れています。宅建業免許も取得しておりますので、空家でお困りのケース等、不動産までワンストップ対応が可能です。
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エンディングノートと遺言書は同じ?
相談内容
最近、エンディングノートの存在を知り、購入して少しずつ書いています。ふと疑問に思ったのですが、エンディングノートはこのまま遺言書として残せるのでしょうか?
また、エンディングノートに書くべきことを教えてください。
- プロフィール:70歳女性
- お住まい:千葉県
- 相続人:長女、次女の2名
- 被相続人:相談者本人
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
預貯金 | 890万円 | |
有価証券 | 200万円 | |
生命保険 | 契約者・被保険者:相談者本人 受取人:長女 |
500万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 エンディングノートと遺言書の違い
最近、認知されるようになってきた「エンディングノート」。
本記事をお読みの方の中にも「既に書き始めた」「書いてみたいと興味がある」という方は多いのではないでしょうか。
さて、エンディングノートと遺言書の違いですが、エンディングノートがご自身の人生を振り返りそれを書き留めておく、あくまでも「ノート」であるのに対し、遺言書は民法で定められた「法律行為」となります。
したがって、遺言書には民法上の要件が定められており、それを満たさないと無効となってしまいます。
例えば、遺言書には
- 「吉日」等と記載し、日付を特定できないものは不可
- 被相続人がお亡くなりになった後、家庭裁判所にて検認が必要
等、事細かく定められていますので、ここが一番の違いと言えるでしょう。
他に混同しやすいものとして「遺書」がありますが、改めて整理すると、
と言えます。遺言書がれっきとした「法律行為」であるのに対し、後の2つは「メモ」ということになりますので、あくまで別物です。
アドバイス2 エンディングノートに書くべきこと
エンディングノートはあくまでも「ノート」「メモ」ですので、堅苦しく考える必要はありません。
また、最近はさまざまな会社・団体から出版されており、その内容にしたがって書き進めれば作れるようになっていますので、活用された方が良いかと思います。
ちなみに、記載内容は大きく2つに分かれます。
1【家族のため】どこに何があるかや、亡くなった後の希望要望を伝える
(例) ・財産のこと
・介護や医療のこと
・葬儀やお墓のこと
・友人知人の連絡先
2【自分のため】これまでの人生を振り返り、残りの人生のあり方を考える
(例) ・自分の歩んできた足跡
・ご家族や大切な人への想い
特に、2の作業「自分の人生を振り返る」ことが、「残りの人生で自分はどのようなことをなすべきか」を考えるきっかけになり、ご自身の人生を豊かにする、エンディングノートは、まさに「生きる」ためのものということができると思います。
アドバイス3 エンディングノートとは別に公正証書遺言を作成しておきましょう
相談者様がおっしゃるように、エンディングノートに財産の状況やそれをどのように引き継いでほしいかを書くことはもちろん可能です。ただ法律行為ではありませんので、相続トラブルが珍しくない昨今、備えとして遺言書も書いておいた方が良いでしょう。
おすすめは公正証書遺言です。ちなみに自筆証書遺言でも現在は法務局での保管を活用すれば、前述した日付の件の他、形式要件はチェックしてもらえるようになりました。
ただ、自筆証書遺言があってももめてしまうケースがあります。最近私が遭遇した事例は、「親の面倒をみていた姉が自分に都合の良い遺言を書かせた」と弟が主張し、姉弟間でトラブルとなってしまったというものでした。
このような事態を回避するために、公正証書遺言であれば、公証人の他利害関係のない証人2名が立ち合いますので、本人の意思であるとの信用力が増します。
公正証書遺言は費用がかかりますが、せっかく遺言書を書くのであれば、効果のあるものにしたいものです。他にも注意すべきポイントは存在しますので、専門家に相談してみてはいかがかと思います。
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この記事を書いた人
〈行政書士、家族信託専門士、ファイナンシャルプランナー、相続診断士、宅地建物取引士、不動産コンサルティングマスター、賃貸不動産経営管理士、宅建業免許〉
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