【事例】娘とは疎遠。介護をしてくれる姪に財産を残したい(67歳女性 資産1,880万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、面倒を見てくれている姪へ遺産を渡したいという、67歳女性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、行政書士福祉法務オフィス・フェリスの行政書士、大森 美保さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士、社会福祉士〉
相続を、大切に思う人達の幸せを想う「想続」に。ひとりひとりの想いやお悩みを大切にし、相続、遺言書作成、終活、成年後見など、ニーズにあったより良いご提案・ご提供ができるよう、日々精進しております。
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疎遠の娘ではなく、姪に財産を渡したい
相談内容
階段でころんで骨折してからずっと、姪が介護をしてくれています。娘とは疎遠で何もしてくれません。自分が亡くなるまでそばにいると姪は言ってくれています。この子にできるだけ遺産を渡したいです。
- プロフィール:67歳女性
- お住まい:埼玉県
- 相続人:長女、亡くなった妹の子(姪)の2名
- 被相続人:相談者本人(生前)
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 自宅マンション 50㎡ | 1,000万円 |
預貯金 | 680万円 | |
生命保険 | 契約者・被保険者:相談者本人 受取人:長女 | 200万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 法定相続の場合、姪御様は相続人にならない
介護をしてくれて、亡くなるまでそばにいてくれると言ってくださる姪御様。そうした姪御様に、相談者様は、ご自身の財産をお渡ししたいとのことですが、法定相続という形で姪御様に遺産を残すことはできません。
なぜならご自身の相続においては、現時点での法定相続人は娘様のみとなり、姪御様は相続人にはならないからです。
アドバイス2 姪御様に財産、または遺産をお渡しする方法
法定相続人ではない姪御様に財産または遺産をお渡しする方法として、まず以下の3つの方法があげられます。
1 遺贈
生きている間に、相談者様が渡す相手を遺言によって決め、相談者様亡き後、遺言に則って、その遺産の一部、あるいはすべて与える行為
2 死因贈与
生きている間に、相談者様が財産を渡す相手と契約を結び、相談者様亡き後、遺言に則って、その遺産の一部、あるいはすべて与える行為
3 生前贈与
生きている間に、相談者様が渡したい相手に、財産の一部、あるいはすべてを与える行為 これらの主な違いは、以下のようになります。
遺贈 | 死因贈与 | 生前贈与 | |
---|---|---|---|
手続き | 遺言書を正しい方法で作成する必要があるその他の書面では無効 |
当事者の口約束であっても有効に成立 |
当事者の口約束であっても有効に成立 |
相手の承諾 |
不必要 |
受諾が必要 | 受諾が必要 |
撤回 | 遺言者の撤回は自由 |
口頭と書面で異なる |
口頭と書面で異なる |
放棄 | 可能 | 不可能 | 可能 |
税金 |
・登録免許税 ・不動産所得税 |
・登録免許税 ・不動産所得税 |
・登録免許税 ・不動産所得税 |
※原則は4.0%ですが、令和6年3月31日までに取得した土地(住宅、非住宅を問わない)や家屋(住宅のみ)については3%に軽減されます。住宅以外の建物は4%のままとなります(記事は2022年7月1日時点の情報に基づいています)。
法的な効力はそれぞれ大きく差はありません。最終的には、ご自身でどれが良いか判断することになりますが、判断できない場合には、相続を得意とする専門家に相談することも検討しましょう。
養子縁組
上記以外に、養子縁組を行うことで、姪御様に遺産を渡すこともできます。
養子縁組を行うと相続税の計算上、養子は実子と同じ扱いとなるため、法定相続人になります。
上述した3つの方法であれば相続分を相談者様ご自身で決定することができますが、姪御様を養子にして相続させた場合、遺言書がないと法定相続分あるいは実子である娘様との分割協議において相続分を決めることとなります。その点はご注意ください。
アドバイス3 遺言書や贈与契約書は公正証書にしておくと良い
「預貯金と不動産のうち現金を姪に」「全財産を姪に」など、ご自身の財産をどのように姪御様に相続しようと考えてらっしゃるのか。ご自身のお考えを確実に実現するためには遺言書の作成が最適です。
遺言書(遺贈)、贈与契約書(死因贈与、生前贈与)は、確実にその内容が執行されるよう、公証役場で公正証書を作成することをおすすめします。
なお、遺言による遺贈、死因贈与、生前贈与により相談者様から姪御様へ、相談者様の財産が渡された場合、その内容によっては現在の相続人となる娘様から、「遺留分侵害額請求」がなされることもあります。
遺留分とは、法定相続人に最低保障される遺産の取得分を言います。相談者様のケースでは、遺留分侵害額請求がなされるとすれば、法定相続人である娘様が、自らの遺留分が侵害されたとして、相続人が侵害者(相談者様の場合には姪御様)へ、相談者様が渡した財産に対する金銭の支払い請求されることです。
従いまして、相談者様が姪御様へご自身の財産をお渡しになりたい場合、相続人となる娘様への配慮が必須です。無用なトラブルを引き起こす可能性があるからです。
遺言書や契約書等を作成する際には、できれば娘様や姪御様とよく話し合い、事前に相談者様の大切な「想い」の理解を深めてもらうことが一番大切です。
遺留分対策や遺言書作成など、遺産相続でお悩みや疑問をお持ちの場合には、トラブルを引き起こす前に、一度専門家に相談されることをおすすめいたします。
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