【事例】夫が亡くなりました。おなかの赤ちゃんは相続人になりますか?(34歳女性 遺産4,700万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、胎児が相続人になりますか?という、34歳女性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、りこ行政書士事務所の行政書士・國場 絵梨子さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP、賃貸不動産経営管理士、測量士補、二種証券外務員、他多数資格有〉
遺言や相続関連の業務を専門にしております。
自己研鑽を怠らず、丁寧なヒアリングと迅速な対応でご依頼者様の意に添えるようなサポートを心がけております。
お気軽にご相談いただければ、嬉しく存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
▶りこ行政書士事務所
胎児は相続人になりますか?
相談内容
夫が交通事故により帰らぬ人となりました。家族は私と長男のほか、最近第二子の妊娠がわかりました。これから遺産分割協議を行うのですが、赤ちゃんは相続人になりますか?
- プロフィール:34歳女性
- お住まい:栃木県
- 相続人:妻(相談者本人)、長男(5歳)、長女(胎児)の3名
- 被相続人:夫
総額4,700万円
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 自宅マンション(70㎡) 家族で居住 |
2,500万円 |
預貯金 | 700万円 | |
生命保険 | 契約者・被保険者:夫 受取人:妻(相談者本人) |
1,500万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 胎児にも相続権は認められている
結論から申し上げますと胎児にも相続権は認められており、相続人となります。しかし原則として、まだ生まれていない胎児には権利義務の主体となる権利能力がありません。人が権利能力を取得するのは出生の時と民法で定められているからです。
ですが例外として相続の場合では民法886条第1項において「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす」と定めており、権利能力が認められることになっています。
このことから胎児は相続人となることがわかります。生まれる時期が少し遅いだけで相続権が認められないと、兄弟姉妹間で不平等が生じる、次順位の相続人に財産が分配されるなど、生まれてくる胎児が大きな不利益を受けることになります。そこで民法はこのような事態を避けているのです。
また民法第886条第2項において「前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。」と定めており、胎児が相続人となるのは無事に生まれてくることが条件であるとわかります。
アドバイス2 遺産分割協議を行うには、特別代理人が必要
一般的に、遺産分割協議は胎児が生まれてから行います。胎児は生まれるかどうかが不確定な存在なので、その出生が確定しないと相続人や相続分が確定しないからです。
胎児がお腹の中にいる状態を無視して遺産分割協議を行ったとしても、無事に生まれた場合に相続人全員の合意がないものとして無効となってしまいます。
胎児が無事に生まれた場合、一見すると母親が親権者として代理で遺産分割協議を行うように考えられます。しかし、母親と子どもが相続人である場合には両者の利益が相反します。母親が子どもに遺産を全く相続させないような不平等な遺産分割が起こる事態もありうるわけです。
そこで母親と子どもの利益が相反する場合には、母親は子どもを代理することができず、家庭裁判所に申立をして特別代理人を選任しなければならないと民法は定めています。
ただし胎児がお腹の中にいる時に母親が離婚した場合には、母親に相続権がないため、胎児と利益が相反する場合にあたらず、母親が子どもを代理して相続権を主張していくことができます。
遺産分割協議において特別代理人を選任する手続きは、胎児のみならず、未成年者がいる場合には必ず行われます。そして、未成年者の数だけ特別代理人が選任されます。
特別代理人は家庭裁判所が決めるのではなく、通常は申立人が申立時に候補者を決めておきます。特別代理人には利益が相反せず、相続人でない第三者が選ばれます。また、特別代理人になるためには未成年者の利益のために適切に職務を行えることが条件です。
特別代理人が必ずしも資格を有する専門家である必要はなく、通常は叔父、叔母といった利害関係がない親族が選ばれることが多いです。相続人の中に未成年者がいる場合に特別代理人を選任せずに遺産分割協議を行うと、未成年者が成人した後にその内容を認めないかぎり、無効となります。
アドバイス3 相続人に胎児が含まれるケースは、通常の相続より手続きが複雑になる
今回のご相談者様のケースですと、相続人はご相談者様、ご子息様、現在は胎児であるご息女様が無事にお生まれになった場合には3名になります。そして相続人が確定してから、遺産分割協議を行うことになります。
ご息女様の出生が確定した場合、未成年者が2人相続人に含まれており、かつ親権を持つご相談者様が相続人であるため、それぞれ別々の2人の特別代理人の選任を未成年者と同じ住所地の家庭裁判所に請求することになります。
特別代理人選任の申立は親権者であり、同じ相続人という利害関係者でもあるご相談者様が行うことができます。申立の際には遺産分割協議書案を作成しておく必要があります。申立が受理されて特別代理人が選任されると、特別代理人が未成年者に代わって、遺産分割協議書に署名押印するという流れになります。
相続人の中に胎児が含まれる場合は、通常の相続と比較して手続きが複雑になります。当事者だけで協議を進めていくのが困難な場合が多いので、信頼できる相続の専門家に相談することをおすすめいたします。
関連事例
【事例】相続人の一人が生活保護を受給している(52歳女性 遺産580万円)【行政書士執筆】
【事例】認知症の相続人がいる場合、遺産分割はどうすれば良い?(45歳女性 遺産4,280万円)【行政書士執筆】
相続についてのご相談は「いい相続」へ
いい相続では、全国各地の相続の専門家と提携しており、相続手続きや相続税申告、生前の相続相談に対応できる行政書士や税理士などの専門家をご紹介することができます。
専門オペレーターが丁寧にお話を伺いサポートしますので、お困りの方は、お気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
〈行政書士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP、賃貸不動産経営管理士、測量士補、二種証券外務員、他多数資格有〉
遺言や相続関連の業務を専門にしております。
自己研鑽を怠らず、丁寧なヒアリングと迅速な対応でご依頼者様の意に添えるようなサポートを心がけております。
お気軽にご相談いただければ、嬉しく存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
▶りこ行政書士事務所
ご希望の地域の専門家を探す
ご相談される方のお住いの地域、遠く離れたご実家の近くなど、ご希望に応じてお選びください。