【事例】家の名義が10年以上前に亡くなった父のままでした。どのように遺産分割をすれば良いですか?(56歳男性 遺産2,000万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、自宅の売却を検討しているものの名義変更をしていなかった、56歳男性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、鎌田真一事務所の行政書士・鎌田 真一さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士、土地家屋調査士、宅建士〉
徳島県吉野川市に事務所を構え、県外案件にも対応。前職で不動産に関する手続き全般を、多数の事例から学び独立。豊富な経験を活かして、現在は行政書士・土地家屋調査士の業務を中心に活躍中。
▶鎌田真一事務所
家の名義が、10年以上前に亡くなった父のままでした
相談内容
母が先日亡くなったので遺産分割協議をしていたところ、自宅の名義が10年以上前に亡くなった父のままでした。自宅は空き家になるので売却したいと思っています。兄弟4人で平等に遺産を分けるにはどうすれば良いでしょうか?
- プロフィール:56歳男性
- お住まい:大分県
- 相続人:長男(相談者本人)、長女、次男、次女の4名
- 被相続人:母
総額2,000万円
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 自宅戸建て(土地・家屋) 土地120㎡ |
1,500万円 |
預貯金 | 200万円 | |
生命保険 | 契約者・被保険者:母 受取人:長男 |
300万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 自宅の売却には相続登記が必要
相続登記とは、被相続人が所有していた不動産(土地、建物)を相続された相続人の名義に変更することを言います。
現在は相続登記の申請義務がないため、相続登記がされていない不動産が多くあります。その結果、相続人の範囲が広がることにより、さらに相続登記を申請するために多大な費用が掛かるため、相続登記を申請しないまま現在にいたった土地・建物がますます増えてしまいました。世間で最近よく言われている「所有者不明土地」の問題となります。
この「所有者不明土地」の対策として、相続登記の義務化が令和6年4月1日から施行されます。
上記内容を簡単に説明しますと、相続で不動産取得を知った日から3年以内に相続登記を申請しないと10万円以下の過料の対象となります。その他にも規定されている内容はありますが、詳細については、専門家の先生に確認してください。
相続した不動産を売却する場合には、現在の所有者(相続人)に相続登記(名義変更)を申請し、その後、買主に所有権移転登記を申請する必要があります。
今回の相談内容であれば、まず、父の相続登記及び母の相続(持分移転)登記の申請が必要となります。
アドバイス2 不動産の分割について
相談者様は不動産を売却したいとお考えのようですが、その場合、換価分割があてはまります。換価分割とは、遺産を売却して相続人で分け合う遺産分割の方法です。
換価分割の検討が必要となるのは、不動産や株式等が相続財産に含まれている場合です。
今回の相談内容であれば、不動産(土地・建物)について検討する必要があります。
換価分割をする場合には、相続人全員がその分割に同意する必要があります。また各相続人の相続する割合についても、相続人で遺産分割協議をする必要があります。
遺産分割協議が完了しましたら、遺産分割協議書を作成する必要があります。
アドバイス3 このケースでの遺産分割
今回のケースは、換価分割の対象となる不動産(土地・建物)の取扱いをどのようにするかが鍵になると思います。被相続人名義(父)の不動産を売却し、その売却額を相続人で均等に分割するのであれば、相続財産である不動産の相続登記は、相続人全員である4名で、法定相続持分(各相続人の持分)は、4分の1の割合で相続する方法がいいと思います。
その理由として、不動産を売却した場合に、売却代金に応じて所得税(譲渡所得)の申告が必要となるからです。
各相続人が不動産の登記名義人であれば、売却代金総額のうち、各相続人の持分に応じた売却代金を受領できます。
その受領した売却代金に対して、不動産売却に係る必要経費(司法書士への登記費用及び土地の境界確認を行った場合の費用)を控除することが可能となります。
その後、各相続人がそれぞれ所得税の申告を行っていただければ大丈夫となります。
今回のケースは数次相続となるため、不動産所有者である父から相続人への相続登記の後、亡母の持分の移転登記が必要となります。
不動産(土地・建物)を法定相続分で相続される場合(各相続人の持分は4分の1)は、不動産登記を申請する際に、遺産分割協議書の添付は不要となります。
具体的な売却方法ですが、不動産の買主が決まった取引が成立後に、相続登記及び売買による所有権移転登記を一緒に申請することが、費用面及び手続き面から見ても煩雑にならずに良いと思います。
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この記事を書いた人
〈行政書士、土地家屋調査士、宅建士〉
徳島県吉野川市に事務所を構え、県外案件にも対応。前職で不動産に関する手続き全般を、多数の事例から学び独立。豊富な経験を活かして、現在は行政書士・土地家屋調査士の業務を中心に活躍中。
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