【事例】父の遺産を放置したまま、母が亡くなりました。相続手続きはどうすれば良い?(50歳女性 遺産2,650万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、父の遺産分割協議をしないまま、母も亡くなったという、50歳女性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、片桐行政書士事務所の行政書士・片桐 政勝さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士、家族の絆信託代表〉
行政書士業務の柱である、建設業許可、運送業許可、旅行業登録などの許認可業務、個人の権利・義務をサポートする、相続手続き、離婚協議書起案、契約書作成などの権利義務、遺言書、任意後見契約、民事信託契約(家族信託)を活用した、老後の財産管理にトータルでのご提案を得意としています。
▶片桐行政書士事務所
父の遺産分割協議をしないまま、次の相続になりました
相談内容
3年前に父が亡くなり、先週母が亡くなりました。父が亡くなったときに遺産分割協議をしておらず、預金や自宅も父名義のままです。母の遺産もまだ手をつけていません。金額はそれほど大きくないので、相続税はかからないと思います。まず何からすれば良いですか?
- プロフィール:50歳女性
- お住まい:香川県
- 相続人:長女(相談者本人)、長男、次男の3名
- 被相続人:父(3年前に死亡)、母
父の財産:総額2,100万円
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 自宅戸建て(土地・家屋) 土地120㎡ 長女が居住 |
1,500万円 |
預貯金 | 400万円 | |
有価証券 | 200万円 |
母の財産:総額550万円
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
預貯金 | 250万円 | |
生命保険 | 契約者・被保険者:母 受取人:長女 |
300万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 父の遺産分割協議のための必要書類を揃える
父(被相続人)の相続手続きをするには、被相続人の出生から死亡までの戸籍及び住民票除票の収集をする必要があります。
あわせて、相続人(母、長女、長男、次男)の現在戸籍を収集します。母については、次に母(被相続人)の相続手続きがありますから、出生から死亡までの戸籍及び住民票除票を収集します。
長女、長男、次男については現在戸籍を取得します。これに加えて遺産分割協議書など、各種書類に住所を記載する際に正確に記載するために住民票の取得をおすすめしています。
続いて父所有の不動産の手続きのため、固定資産評価証明書と登記事項全部証明書を取得します。
次に、父名義の預貯金・有価証券の正確な金額を把握するために死亡日時点の残高証明、株数などを取得します。
ここまで準備ができたら、財産の総額から相続人である母、長女、長男、次男で遺産分割協議をします。
実際には母は既に死亡していますので、長女、長男、次男で協議し遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議の結果に基づいて不動産の名義変更、預貯金の解約、有価証券の名義変更等を行います。
不動産や預貯金、有価証券などの相続手続きを進めるにあたり、相続関係説明図や法定相続情報一覧図を作成しておくとスムーズです。
アドバイス2 母の遺産分割協議と相続手続きを行う
父の相続手続きが終わったら、母の遺産分割協議を行います。遺産分割協議に必要な戸籍等は、父の相続手続きで取得しているものがそのまま使えます。
預貯金は父の時と同様、残高証明を取得します。その結果により、長女と長男、次男の3名で遺産分割協議を行います。
遺産分割協議の結果に基づいて、預貯金の解約を行います。
相続手続きを進めるにあたり、先ほどと同様に相続関係説明図や法定相続情報一覧図を作成しておくとスムーズに手続きができます。
生命保険金は受取人が長女のため、長女が単独で受け取ることができます。
アドバイス3 相続手続きをしないとどうなる?
今回は、父の遺産を分割しないまま母が亡くなったというケースですが、相続手続きを行わないと預貯金は口座が凍結され、引きおろしや解約などができなくなります。
また不動産の相続登記をしないと、売却などをすることができません。売却時にいざ、相続登記をしようと思っても、放置していた期間が長くなると相続関係が複雑になり、手続きが相当膨大になります。
また、相続登記は法改正により義務化されましたので、今後相続登記をしないと10万円以下の過料(罰金)が科されます。
このように相続手続きをせずに放置してしまうと、後々の手続きがさらに煩雑になりすべての手続きを終えるのに時間もかかってしまいます。ご自身で手続きをするのが面倒、やり方がわからないという方は、行政書士や税理士に相談してみるのも一つの方法です。
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この記事を書いた人
〈行政書士、家族の絆信託代表〉
行政書士業務の柱である、建設業許可、運送業許可、旅行業登録などの許認可業務、個人の権利・義務をサポートする、相続手続き、離婚協議書起案、契約書作成などの権利義務、遺言書、任意後見契約、民事信託契約(家族信託)を活用した、老後の財産管理にトータルでのご提案を得意としています。
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