【事例】財産を寄付したい。遺言書を作るときの注意点は?(70歳男性 資産7,200万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、自分の財産をNPO団体に寄付したいという、70歳男性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、安部行政書士事務所の行政書士・安部 亮輔さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士〉
平成23年行政書士登録。10年以上のキャリアがあり、多くの相続案件をご依頼いただきました。相続人が多数いる複雑な案件にも自信があります。
「身内の死という、人生において最も悲しい時期を迎えられているお客様の手助けをしたい」という理念のもと、業務に励んでおります。
▶安部行政書士事務所
自分の財産は、懇意にしているNPO団体に寄付したい
相談内容
妻が亡くなって7年、自分もそろそろかと思います。財産はNPO団体に8割、残りを息子と娘にと考えています。子どもたちは親不孝者なので、正直あまり渡したくなくて、すべて寄付しても良いくらい。遺言書を残しておけば、実現できそうでしょうか?
- プロフィール:70歳男性
- お住まい:埼玉県
- 相続人:長男、長女の2名
- 被相続人:相談者本人(健在)
総額7,200万円
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 自宅戸建て(土地・家屋) 土地120㎡ |
2,500万円 |
預貯金 | 3,700万円 | |
有価証券 | 1,000万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
はじめに
今回の相談者様のように、終活を考えられた際にNPO団体やお世話になったところへの寄付をご検討される方もいらっしゃると思います。
しかし、「自分が生きている間の生活のこともあるし、今すぐに寄付をするのは不安だ。自分が死んだ後に寄付できたら…でも、どうしたら…」という場合、「遺贈寄付」という方法を検討されてはいかがでしょうか。
遺贈寄付という言葉は、あまり聞き馴染みのないかもしれませんが、相続手続きにおいて最近注目されている手法の1つです。
アドバイス1 遺贈寄付によって、自分が亡くなった後に寄付ができる
遺贈寄付とは、「遺贈」と「寄付」を組み合わせたものです。遺贈とは民法に規定があり、簡単にいうと遺言によって贈与することです。
そして、遺言によって寄付をすることを「遺贈寄付」と言います。遺言の中に「寄付をする」という内容を記載することで、遺贈寄付が行えます。
しかし寄付をする際には、大きく2つの注意事項があります。
寄付をする相手
1つ目は、寄付をする相手です。
寄付する相手によって、受け取れる財産と受け取れない財産があります。例えばお金は受け取れるが、不動産は受け取れないといった場合です。
このような相手に不動産を寄付したい場合には、死後、不動産を売却しお金を寄付する流れが必要になりますので、後述する死後事務委任契約を活用すると良いでしょう。
遺留分に注意
2つ目は、遺留分についてです。
法定相続人には民法で定められた「遺留分」という権利があります。
遺留分とは、法定相続人に最低限度の割合で認められた相続財産の割合のことをいいます。財産を渡したくない相続人であったとしても、この遺留分がある限り、法定相続人は民法で定められた割合の財産を相続する権利があるということです。
そしてこの遺留分を侵害された相続人は、自己の遺留分が侵害された額を請求する権利を有するのです。
そこで、今回のような遺贈寄付を検討する場合に限らず、遺言を作成する際は遺留分に配慮する必要があります。
これを怠ると、円滑に遺贈寄付を行うことが難しくなったり、相続トラブルの原因となる可能性があります。
アドバイス2 死後事務委任契約により、自分の死後の手続きを依頼しておく
先ほど少し述べました、死後事務委任契約についてご説明致します。
死後事務委任契約とは、死後の手続きを生前に依頼する契約をいいます。死後手続きにはさまざまなものがあり、遺族の方は大変な思いをされることもあります。
そのような手続きをあらかじめ依頼しておくことで、自分の死後、自分の意思通りに手続き等をしてもらうことができます。
最後に
今回のご依頼者さまについては、可能ならば相続人たちに一切相続させたくないとのことでした。
しかし遺留分に配慮した結果、遺留分を相続させることを遺言に記し、残りの額を遺贈寄付されることとなりました。
また、不動産については寄付を受けるNPO団体に配慮し、子どもたちへ相続させ現金等を寄付するという流れとなりました。
もちろん、死後事務委任契約を選択し、不動産売却という流れをとることも可能です。
是非、ご自分に合う最適な相続手続きを探してみてください。
関連事例
【事例】今の妻と子どもを守るために公正証書遺言を作りたい(49歳男性 資産4,700万円)【行政書士執筆】
【事例】遺言書を使って内縁の妻に生命保険を残せるか?(68歳男性)【行政書士執筆】
相続についてのご相談は「いい相続」へ
いい相続では、全国各地の相続の専門家と提携しており、相続手続きや相続税申告、生前の相続相談に対応できる行政書士や税理士などの専門家をご紹介することができます。
専門オペレーターが丁寧にお話を伺いサポートしますので、お困りの方は、お気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
〈行政書士〉
平成23年行政書士登録。10年以上のキャリアがあり、多くの相続案件をご依頼いただきました。相続人が多数いる複雑な案件にも自信があります。
「身内の死という、人生において最も悲しい時期を迎えられているお客様の手助けをしたい」という理念のもと、業務に励んでおります。
▶安部行政書士事務所
ご希望の地域の専門家を探す
ご相談される方のお住いの地域、遠く離れたご実家の近くなど、ご希望に応じてお選びください。