【事例】兄が亡くなった。財産調査をお願いしたい(35歳女性 遺産3,550万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、亡くなった兄の財産調査を含めた相続手続きについて、35歳女性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、行政書士ときた事務所の行政書、社会保険労務士、宅地建物取引士、CFP・ 鴇田 誠治さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、CFP®、不動産コンサルティングマスター〉
相続・相続対策の専門家として、相続手続きの総合的なご支援はもちろん、遺言書の作成などの相続対策もお客様と共に考え、アドバイスをさせていただきます。また、後見や財産管理、民事(家族)信託などもお気軽にご相談ください。
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亡くなった兄の相続手続きを教えてください
相談内容
兄が病気で亡くなりました。家族は私と弟しかいません。兄は広島に住んでいて、マンションを購入していたようです。ローンは私が支払わなければいけませんか?また預金通帳は1行確認できていますが、これで全部かわからないので財産調査もお願いしたいです。
また、財産は弟と等分する予定です。必要な手続きと進め方を教えて下さい。
- プロフィール:35歳女性
- お住まい:佐賀県
- 相続人:長女(相談者本人)、次男の2名
- 被相続人:兄
総額3,550万円
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 自宅(分譲マンション) 60㎡ |
2,550万円 |
預貯金 | 800万円 | |
有価証券 | 200万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 相続財産調査を行い、相続税が課税されるかを調べる
相続人は不動産や預貯金などプラスの財産だけでなく、借金や債務などのマイナスの財産も相続により引き継ぎます。お兄様はマンションを購入され、住宅ローンが残っているということですが、住宅ローンはマイナスの財産として相続の対象になります。
団体信用生命保険に加入していたかを確認
ただし、住宅ローンを組む場合、一般的には「団体信用生命保険(団信)」へ加入していることが多いです。団体信用生命保険とは、住宅ローンを契約した方が死亡してローンの支払いができなくなる場合に、保険会社から金融機関に対して、保険金でローン残高分を返済する生命保険です。
つまりお兄様が住宅ローンの契約をされたときに、この保険に加入していれば、住宅ローンの返済が免除されることになりますので、まずは亡くなられたお兄様が住宅ローンを契約した際に、団信保険に加入していたかどうか確認しましょう。
預貯金の確認
次に預貯金の確認方法ですが、通常は、金融機関のカードや通帳などから利用していた金融機関を特定します。しかし、カードや通帳はないが、分かっている以外にも金融機関を利用している可能性がある場合には、心当たりのある金融機関の窓口に行って預金残高の照会をして下さい。
ご自身の身分証明書(運転免許証など)や相続人であることが分かる戸籍謄本などを示して、被相続人の口座を調査していると言えば、預金の有無や残高を回答してくれます(あらかじめ電話などで連絡を入れて、必要書類などを確認しておくと良いでしょう)。
また最近では、インターネットバンキングやスマートフォンのアプリで口座を開設している場合もあります。このような場合には、通帳等が手元にないことが多いので、被相続人が使用していたパソコンやメール、スマートフォンを調べて、被相続人名義の口座について確認をしてください。
なお、利用している金融機関が分かったら残高証明書を発行してもらうことをおすすめします。
残高証明書の発行手続き
残高証明書では、普通預金や定期預金だけでなく、投資信託などを含めたすべての金融資産の残高や利用状況を把握できます。したがって相続税申告の必要性を判断するために重要な情報となります。
残高証明書の発行手続きは、口座のある支店に、戸籍謄本などの所定の書類を提出して発行してもらいます。所定の書類は金融機関によって異なりますので、各金融機関の窓口やホームページに問い合わせて確認してください。
なお相続財産の調査は、行政書士などの専門家に依頼することも可能です。ご相談者様のように相続が発生した場所から遠方に住んでいる場合や、お仕事等で日中の対応が難しい方は、専門家に依頼したほうがスムーズに手続きがすすめられるのでご検討ください。
相続税の計算
参考までに、相続税は亡くなった人が持っていた財産から、非課税のもの、債務・葬式費用等を差し引いた財産の総額が「基礎控除額」を超えるときに、基礎控除額を上回った分の相続財産に対して課税されます。財産の総額が基礎控除額を下回れば課税されません。基礎控除額は相続人の人数に応じて金額が変わり、具体的な計算式は次のとおりです。
相談者様の場合、相続人はあなたと弟様のお2人ということですから、基礎控除額は4,200万円になります。ご参考になさってください。
アドバイス2 相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成する
相続が発生した場合、遺言書がある場合などを除き、相続人全員で「遺産分割協議」を行い、どの財産を誰が相続するのかについて話し合うことになります。全員が合意した遺産分割方法をまとめた書類が「遺産分割協議書」です。
遺産分割協議書には相続財産を正確に記載して、相続人の誰が、どの財産を引き継ぐのかを明確に示すことが大切です。そして記載内容について、相続人全員が同意していることを証明するために、相続人本人の直筆による署名と実印(役所に登録している印)の押印が必要です。
なお、遺産分割協議書は決められた書式がありませんので、ひな形などを参考にして、専門家でなくても作成することができます。しかし、自分で遺産分割協議書を作成したが意図した内容と違う内容になっていたり、遺産の一部が漏れていた等、せっかく作成したのに不備により使えなくなったケースも実際にあります。
相続財産が不動産と預金、有価証券など複数ある場合や、遺産分けの内容が複雑になる(ある財産は相続人のひとりが相続するが、別の財産は共有で相続するなど)場合には、行政書士など専門家に作成を依頼することをおすすめします。
アドバイス3 不動産を共同名義にする場合の注意点
お兄様の相続について、あなたと弟様で財産を等分して相続するとのことですが、預貯金など分けやすい財産は問題ありませんが、不動産は注意が必要です。
不動産を保有して相続人のどちらかが居住する場合、不動産を共同名義(共有)にしてしまうと、後々不動産を売却したいと思っても、共有者全員の合意がないと売却は難しくなります。また、将来的に共有者が亡くなって次の相続が発生すると、その相続人が新たな共有者となって共有者の人数が増え、権利関係が複雑になっていくからです。
ただし、不動産の売却を前提としている場合には共同名義とすることに問題ありません。あなたと弟様で持分2分の1ずつとなる相続登記をした後、お2人が共同で売却手続きを行ってください。
なお不動産を売却して売却益が生じた場合、譲渡所得税が課税され、所得税の確定申告が必要になる場合があります。このような場合は税理士にご相談されることをおすすめいたします。
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