【事例】今の妻と子どもを守るために公正証書遺言を作りたい(49歳男性 資産4,700万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、前妻から現在の妻と子どもを守るために公正証書遺言の作成を検討している、49歳男性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、りこ行政書士事務所の行政書士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP・國場絵梨子さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP、賃貸不動産経営管理士、測量士補、二種証券外務員、他多数資格有〉
遺言や相続関連の業務を専門にしております。
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お気軽にご相談いただければ、嬉しく存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
▶りこ行政書士事務所
今後のことを踏まえ、公正証書遺言を作成したい
相談内容
13年前に離婚し、子どもは前妻と暮らしています。私は今の妻と再婚して 家を買い、子どももいます。いずれ私が死んだとき、前妻の子どもにも相続権はありますよね?前妻と仲が悪いため、相続に口を出してくると思います。今の妻と子どもを守るために、遺言を作りたいです。作り方などを教えてください。
- プロフィール:49歳男性
- お住まい:栃木県
- 相続人:妻とその子ども、前妻との間の子ども 3名
- 被相続人:相談者本人(健在)
総額4,700万円
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 自宅 (戸建て、家族と同居) |
2,200万円 |
預貯金 | 2,000万円 | |
生命保険 | 契約者・被保険者:相談者本人 受取人:妻 |
500万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 離婚すると前妻は相続権を失うが、子どもには相続権がある
前妻は離婚した時点で相続権を失います。ですが離婚した前妻との子どもにはもちろん相続権があり、相続人となります。相続人と相続分の割合は民法で定められていて、これを「法定相続人」「法定相続分」といいます。
法定相続人
法定相続人は相続のケースによって異なります。被相続人の配偶者(夫や妻)は常に相続人となります。 配偶者以外の法定相続人は①被相続人の子どもや孫、②被相続人の両親や祖父母、③被相続人の兄弟姉妹や甥姪の順で決まっています。
例えば、被相続人に子どもと両親がいる場合は子どもが相続人となり、両親は相続人になることができません。
法定相続分
法定相続分はこちらも相続のケースによって異なります。
- 配偶者と子どもや孫が相続人→配偶者が2分の1、子どもや孫が2分の1の割合
- 配偶者と両親や祖父母が相続人→配偶者3分の2、両親や祖父母3分の1の割合
- 配偶者と兄弟姉妹等が相続人→配偶者4分の3,兄弟姉妹等が4分の1の割合
ご相談者様の場合ですと、法定相続人は現在の妻と子ども、前妻との子どもの3名、法定相続分は現在の妻が2分の1、残り2分の1を子ども2人で均等分配することになります。
アドバイス2 遺言書によって、今の妻と子どもに財産を残すことができる
ご相談者様は遺言書の作成をお考えとのことですので、遺言書についてお話します。
遺言書には大きく分けて「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。ここでは実務上よく利用される「自筆証書遺言」「公正証書遺言」について説明します。
自筆証書遺言
「自筆証書遺言」は遺言者が自ら遺言書本文を書いて作成する遺言書です。手軽に作成でき、費用もかからず、自宅で保管することもできますが、遺言書保管制度により法務局にて預かってもらうこともできます。
ただ自筆証書遺言は形式が法律によって決められていて、この形式に反した場合は無効となります。例えばパソコンで作成した場合などは無効となってしまいます。
また「自筆証書遺言」を残した場合は相続開始後に、これを家庭裁判所に提出して検認を受けなければならず、相続人にとって負担となる場合があります。
そして「自筆証書遺言」は「公正証書遺言」と異なり第三者による確認がないため、その有効性を巡って相続人間で揉めるケースがよくあります。
公正証書遺言
「公正証書遺言」は遺言者本人が遺言の内容を口頭で公証人と証人2名に告げ、公証人が内容を確認したうえで作成する遺言書です。
費用や手間がかかりますが、公証人が関与するため無効になりにくく、揉めるケースになりづらいです。公証役場で原本を保管してくれるので、紛失や隠蔽の恐れがありません。
また家庭裁判所で検認を受ける必要がないので、速やかに相続手続きを進めていくことができます。費用や手間がかかるというデメリットはありますが、「公正証書遺言」は「自筆証書遺言」と比べてより安全で確実な方法であり、作成するのでしたら「公正証書遺言」をおすすめいたします。
遺言書があると、遺言に書かれてある部分については相続手続きがその通りに実行されます。ご相談者様が今の配偶者と子どもに財産を残す内容の遺言書を作成すれば、今の配偶者と子どもを守ることが可能になります。
アドバイス3 遺言書を作成するときは、遺留分に気をつける
ご相談者様の場合には、「遺留分」という気をつけなくてはいけないポイントがあります。
遺言で相続人や相続割合を決めたとしても、配偶者と子や孫、両親や祖父母には遺留分という権利があります。
遺留分は一定範囲の相続人に認められた最低限度の遺産取得割合です。本来の法定相続分の半分以下しか財産を取得できない場合、遺留分を持つ相続人は遺留分侵害額請求権を主張することができます。遺言よりも強い効力を持っているので、主張すれば必ずその分の財産を取得することができます。
前妻との子どもには遺留分を主張する権利があるため、遺留分侵害額請求権を主張してくる可能性が充分にあります。対策としては「遺言書であらかじめ前妻の子どもにも遺留分額の財産を渡す内容を記載しておく」「今の配偶者と子どもが前妻の子どもから遺留分を請求された時に渡せるように遺留分と同額の現金を用意しておく」といったことが考えられます。
相続手続きにおいて前妻との子どもがいる場合に、何も対策をとらないでいると、相続人間で揉める可能性が高いです。遺言書を作成することでトラブルや大きな争いごとを避けられるケースはたくさんあります。残される大切な方達を守りたいとお考えの方はぜひ遺言書の作成をご検討ください。
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