【事例】相続人に未成年者がいる場合の手続きが知りたい(51歳女性 遺産6,800万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、未成年の相続人がいる場合の相続手続きについて、51歳女性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、行政書士瀬崎昌彦事務所の行政書士・瀬崎 昌彦さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士、経営革新等支援機関〉
大阪の西淀川区で、行政書士として誰もが元気に楽しく安心して暮らせる街を目指して、皆様の暮らしのお手伝いを続けています。相続、成年後見、経営サポートを主業務としております。「親なきあと相談室」として障がいのある子の親への活動も行っており、民事信託についてもお客様に満足いただける提案を心がけております。そのようなお困りごとがあればお声がけください。
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相続人に未成年者がいる場合、どのように相続手続きをすれば良い?
相談内容
昨年夫が病死しました。ようやく気持ちが落ち着き、相続手続きを進めようと思うのですが、何からすればいいのかわかりません。また未成年の子どもがいると、普通とは違う手続きになるのでしょうか。進め方など教えていただきたいです。
- プロフィール:51歳女性
- お住まい:神奈川県
- 相続人:妻(相談者本人)、長男(21歳)、長女(16歳)の3名
- 被相続人:夫
総額6,800万円
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 自宅マンション 70㎡ |
2,500万円 |
預貯金 | 1,600万円 | |
死亡退職金 | 1,200万円 | |
生命保険 | 契約者・被保険者:被相続人 受取人:妻 | 1,500万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 未成年者の相続では代理人が必要
死亡されたお父様の法定相続人の中に未成年のお子様がいる場合、お子様も財産を承継します。しかしながら、未成年のお子様は一定の法律行為を単独ですることができません。
そのような場合、「代理人」を立てて法律行為を代理してもらう必要があります。
未成年者の代理人は、未成年者の保護者、つまり親権を持つご両親が法定代理人となります。(民法818条、同824条)
親が代理人になれない場合
未成年者の相続人がいる場合、ご両親が法定代理人となりますが、親が代理人になれない場合もあります(未成年者とその法定代理人の間で利害関係が衝突する場合)。
ご相談のケースにおいて法定相続割合で相続を行うと、母親2分の1、長男4分の1、長女4分の1の相続となりますが、遺産分割協議において 母親4分の3、長男4分の1、長女なしのように協議を行うことで、法定代理人である母親が、長女の相続分を減らした状態で代理承認すると、長女の意思とは関係なく自由に遺産を取得できてしまいます。
このように母親と長女との間でお互いに利益が相反する関係となりますので、遺言書の内容や法定相続割合で相続を行わない場合、長女に母親以外の代理人を立てる必要があります。
この代理人を特別代理人と呼び、未成年者の長女のために、遺産分割協議や手続書類の記入・捺印等を法定代理人に代わって行うことになります。
特別代理人を選ぶ手続きは親権者や利害関係人が家庭裁判所に申請します。相続の当事者でない成人であれば誰でも特別代理人になることができます。
特別代理人は、決められた手続きのみの代理となりますし、相続の内容や家庭環境などの事情が明らかとなるため、ご親族の方に依頼するケースがもっとも多いです。
そのような方がいらっしゃらない場合、手続きを依頼した士業など専門家に頼むケースも多いです。
特別代理人の候補として届け出た人が適任でない場合は、家庭裁判所によって弁護士などの専門家が選任されます。
アドバイス2 未成年者がいる場合の相続手続き
以下の2つのケースについて、相続の流れをご説明します。
A.遺言書の内容や法定相続分で分ける場合(親が代理できる)
B.遺産分割協議を行い、法定相続分以外の内容で分ける場合(親が代理できない)
A. 遺言書の内容や法定相続分で分ける場合
①遺言書の確認
②相続財産の確定
③法定相続人の確定・通知
④遺産分割協議
⑤遺産分割協議書作成
⑥相続手続き(土地建物の登記、銀行口座の解約など)
①~③については、戸籍謄本や名寄帳、固定資産評価証明書など必要な書類を取得して確認を進めます。
④⑤調査及び確認が終わりましたら、遺産分割協議を行い、話し合いの内容を文書にします。
*①にて遺言書が存在する場合、④⑤は不要です。
⑥遺言書または遺産分割協議書の内容に従い、相続手続きを行います。
B.遺産分割協議を行い法定相続分以外で分ける場合
①遺言書の確認
②相続財産の確定
③法定相続人の確定・通知
④特別代理人を家庭裁判所に請求
⑤家庭裁判所が特別代理人を選任 (請求から選任まで約2~3週間)
⑥遺産分割協議
⑦遺産分割協議書作成
⑧相続手続き(土地建物の登記、銀行口座の解約など)
*子どもが2人とも未成年だった場合、特別代理人が2人必要となります。
*相続放棄(親も放棄する場合)や限定承認の場合、特別代理人は必要ありません。
その他の注意点
- 2022年4月より、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられます。(18歳になれば特別代理人の選任が不要となります。)
- 同一の親権に服する子の間で利益が相反する行為や、未成年後見人と未成年者の間の利益相反行為についても特別代理人の選任が必要です。
- 未成年者が婚姻をしたときは、成年に達したものとみなされ、代理人は不要となります。(民法753条)
- 未成年者が相続人になるときには「相続税の未成年者控除」を利用できます。
- 未成年者が成人になってから、遺産分割協議のやり直しを行うことも可能です(税務上は贈与や譲渡などとみなされます。多額の税金がかかる場合もありますので、やり直す前に一度税理士など専門家へご相談ください)。
まとめ
・未成年者の代理人は、親権を持つご両親が法定代理人となります。
・法定相続割合以外の遺産分割協議で、法定代理人も相続人となる場合、特別代理人が必要です。
相続人の中に未成年者がいる場合、遺産分割協議の手続きが複雑になります。わからないことやお困りごとがあれば専門家にお気軽にご相談ください!
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