【事例】異母兄妹の兄が死亡、遺産分割はどうなる?(46歳女性 遺産4,740万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、異母兄妹の兄が亡くなった場合の相続について、46歳女性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、プラス行政書士事務所 の行政書士・植野 正大さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士〉
開業以来、相続・遺言の業務を多く扱う。相続人が数十人に及ぶ調査も経験し、これまでに読み込んだ戸籍は1000通を超える。相続や遺言等の研修講師や講演の実績も多数。
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異母兄弟姉妹の相続、どのように遺産を分ければ良い?
私は4人兄妹なのですが、先日一番上の兄が亡くなりました。兄は生涯独身で、子どももおらず、父親と母親も既に死亡しています。ただ長男(被相続人)と長女の2人は、私(次女)と次男とは母親が違う異母兄弟になります。 この場合、相続人は誰で、遺産はどのように分けることになるでしょうか。
相談内容
- プロフィール:46歳女性
- お住まい:宮城県
- 家族構成:長女、次女(相談者本人)、次男の3名
- 被相続人:長男
総額4,740万円
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
預貯金 | 3,000万円 | |
有価証券 | 540万円 | |
死亡退職金 | 1,200万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 異母兄弟姉妹の相続と法定相続人
今回のケースでは、相談者様と亡くなられた長男様が異母兄弟姉妹の関係とのことですが、まず誰が相続人になるのか、そして相談者様が相続人となるかについて、解説したいと思います。
まず、相続人となりうる人物は「法定相続人」といい、民法という法律でその順序と範囲が決められています。1番目は「子」、2番目は「直系尊属(亡くなった方の親や祖父母等直系の上の世代)」、最後の3番目が「兄弟姉妹」です。
長男様は奥様やお子様がおらず、ご両親も既に他界されているとのことですので、1番目と2番目にあたる相続人がおられません。したがって、3番目の「兄弟姉妹」が相続人となるのですが、この兄弟姉妹の関係では父・母のどちらか一方が異なっている場合でも、半分血はつながっていることから、法律的にも兄弟姉妹の関係であることに変わりはありません。
ですから、長女様、異母妹の相談者様、異母弟の次男様の合計3名が長男様の法定相続人となります。
ちなみに相続人を確定させるためには、長男様とご両親それぞれのお生まれから亡くなるまでの戸籍、また、長男様・長女様のお母様のお生まれから亡くなるまでの戸籍を集める必要があります。
アドバイス2 異母兄弟姉妹の法定相続分について
相続人が確定したら、次にどのように遺産を分けるかを検討します。
このとき実際の分け方の参考にされるのが民法で定められている「法定相続分」であり、相続人が複数人いるときは、その相続分は等分であると定められています。
今回のご相談では相続人が3名となるため、一人あたり3分の1ずつ・・・という計算になりそうなのですが、実は民法では異母兄弟姉妹が相続人の場合、もうひとつ別の定めがあります。
両親が同じ兄弟姉妹と、父親のみが同じ兄弟姉妹を比べたとき、先ほど触れたように血のつながりは半分になります。法定相続分でもこの考えに沿って、両親が同じ兄弟姉妹に対して、血のつながりが半分になる兄弟姉妹の法定相続分は半分にする、という定めになっているのです。
具体的にこのケースに当てはめると、長男様と両親が同じ長女様に対して、父親のみが同じ次男様と相談者様(次女様)の法定相続分は半分になるという計算になるため、長女様の法定相続分が2分の1となり、相談者様と次男様は4分の1ずつとなります。
アドバイス3 遺産分割協議によって、遺産を3等分にすることも可能
今回のご相談では、法定相続分は3名が平等でない割合になりますが、この法定相続分は「強制的にこの割合で分けなければならない」という決まりではありません。
そこで、相続人全員が話し合いをして遺産の分け方を決める「遺産分割協議」をし、全員が納得すれば法定相続分によらず3等分することもできます。長男様の遺産には不動産がなく、分けやすい金銭がほとんどですので、合意さえできれば3等分することも難しくないと思います。
遺産分割協議をされたら、その合意した内容を「遺産分割協議書」という書面にし、きちんと残しておくことをおすすめします。法定相続分と異なる分け方を決めたという記録を残しておくことが、万が一の紛争を防ぐために有効です。
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