【事例】亡くなった妻の父親を捜したい(48歳男性 遺産1,170万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、亡くなった妻の父の行方がわからず途方に暮れている、48歳男性の方からの相談事例をご紹介します。
解説はあいりん行政書士法人の行政書士、梅澤 徹さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士〉
平成26年開業。神奈川東京を中心に相続サポートを行っています。あいりん行政書士法人は、相続、遺言の専門事務所です。相談者に寄り添い共に解決していく「身近な暮らしの法律家」になることを使命としています。無料相談件数600件の実績から、わかりやすい言葉で相談者の「困った」を解決します。
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相続人である妻の父が、行方不明となっています
相談内容
妻の母が半年前に、妻が2か月前に相次いで亡くなりました。私達には子どもがいません。妻は母子家庭で育ち、一人っ子。義母にも兄弟姉妹はいませんでした。父親は死んだと聞いていたのですが、義母の戸籍を取り寄せたところ、実は離婚していなかったことがわかり、妻の父親も相続人に当たることが判明しました。当然行方がわからず途方に暮れています。どうしたらいいでしょうか。
- プロフィール:48歳男性
- お住まい:新潟県
- 相続人:相談者本人、行方不明の妻の父の2名
- 被相続人:妻、妻の母
義母の財産
総額270万円
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
預貯金 | 義母の財産 | 270万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
妻の財産
総額900万円
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
預貯金 | 妻の財産 | 400万円 |
生命保険 | 契約者:妻 受取人:相談者 |
500万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 誰がどのくらい財産をもらえるかは、相続できる「順位」と「割合」で決まる
本記事では、法定相続する方法によって、どの財産が誰に行くのか、という視点で解説します。
法定相続とは法定相続分の割合で相続手続きを進めていく方法で、法定相続人は相続できる「順位」やその「割合」についても民法に定められています。以下では「順位」と「割合」に分けて説明します。
相続できる「順位」
相続できる「順位」に関しては、被相続人に「配偶者」が居るときは常に相続人となり、第1順位の法定相続人は「被相続人の子ども」、第2順位は「被相続人の両親や祖父母などの直系尊属」、第3順位は「被相続人の兄弟姉妹」とされています。
本事例において義母の相続財産は、配偶者と第1順位の子どもが承継することから、「義母の配偶者である義父」と「子どもである相談者の奥様」が義母の相続財産を承継します。
また、奥様の相続財産については配偶者と第2順位の直系尊属が承継することになるから、「奥様の配偶者である相談者」と「直系尊属である義父」が奥様の相続財産を承継します。
相続できる「割合」
相続できる「割合」に関しては、法定相続人の組み合わせにより異なり、以下のルールが定められています。
①配偶者と直系卑属である子どもが法定相続人になる組み合わせでは、配偶者の相続割合は2分の1、子どもの相続割合も2分の1
②配偶者と父母(直系尊属)が法定相続人となる組み合わせでは、配偶者の相続割合が3分の2、直系尊属である父母の相続割合は3分の1
③配偶者と、兄弟姉妹が相続人となる組み合わせでは、配偶者の相続割合が4分の3、兄弟姉妹の相続割合が4分の1
なお、本事例では「数次相続」が発生しています。数次相続とは、被相続人の死亡後に、法定相続人が死亡した場合のことです。義母の死後、義母の法定相続人である奥様が死亡したので数次相続が発生しているといえます。
上記「割合」についての定めを本事例に当てはめると、義母の相続財産である預貯金については義父が2分の1、子どもである奥様が2分の1の割合で承継し、奥様の相続財産である預貯金については配偶者である相談者が3分の2、義父が3分の1の割合で承継することになります。
なお、生命保険金の請求権は受取人固有の財産であり、相続財産ではありません。したがって本事例で、奥様名義の生命保険金は指定された受取人である相談者に支払われることになり、相続財産として相談者に承継されるわけではありません。
アドバイス2 行方不明者の住所は、戸籍の附票に記載される
次に、「義父は生きているし、離婚もしていなかったが、行方が分からず途方に暮れています」というご相談に関して、その調査方法を解説します。
法定相続人を調査することを「相続人調査」と呼びます。通常、人が亡くなった時は、その方の出生から死亡までの戸籍を漏れなく取り寄せます。
出生から死亡までの戸籍を取得することで「法定相続人はいるのか?また、法定相続人はだれなのか?」が客観的に証明できます。
これらの戸籍を取得した結果、義父は生きていることが判明しました。もっとも、戸籍を取得するだけでは、住所まではわかりません。戸籍に住所は記載されないからです。
したがって相続人の住所を知るためには、「戸籍の附票」を取得する必要があります。戸籍の附票とは、その戸籍が作られた時からの住民票があった住所が記載された証明書です。
もっとも「戸籍の附票」には住所が記載されていますが、実際に住んでいる居所が記載されているわけではありません。したがって、稀に最新の住所に本人が住んでいないケースがあります。
その場合、手紙や現地訪問しても本人が行方不明のまま見つからないケースもあります。
アドバイス3 仮に見つからなかった場合、不在者財産管理人や失踪宣告を利用する
亡くなった方の「出生から死亡までの戸籍」や「戸籍の附票」を取り寄せ、法定相続人が生きていることやその住所地が判明したが、行方不明で連絡が取れない場合に他の手段や方法はあるのか?相続人がいないと決まった場合に相続財産の行方はどうなるかを解説します。
相続人が行方不明で連絡が取れない場合に、代表的な制度として、「不在者財産管理人制度」や「失踪宣告制度」があります。
不在者財産管理人
「不在者財産管理人」は行方不明などで不在者となった人の財産を管理する人のことで、不在者本人のために相続財産などを管理します。
本事案においては「不在者財産管理人」が選任されると、義父が承継した法定相続分の預貯金を不在者財産管理人が管理します。
失踪宣告制度
「失踪宣告制度」は、家庭裁判所が、生死不明の者について、法律上は死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。家庭裁判所による失踪宣告を受けると、失踪宣告を受けた人は死亡したものとして扱われます。
本事案においては義父について「失踪宣告」がなされると死亡したものとみなされるので、義母の相続財産である預貯金はすべて、法定相続人として子どもである奥様が承継することになります。
また、奥様の相続財産である預貯金についても、義父は死亡したものとみなされるため法定相続人として配偶者である相談者が取得することになります。
「不在者財産管理人制度」も「失踪宣告制度」も、ご自身で手続きするのは難しい制度です。相続に詳しい行政書士や司法書士が対応可能ですので、ご相談されるといいでしょう。
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〈行政書士〉
平成26年開業。神奈川東京を中心に相続サポートを行っています。あいりん行政書士法人は、相続、遺言の専門事務所です。相談者に寄り添い共に解決していく「身近な暮らしの法律家」になることを使命としています。無料相談件数600件の実績から、わかりやすい言葉で相談者の「困った」を解決します。
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