【事例】義父名義の土地を自分名義にしたい(45歳男性 遺産6,150万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は亡くなった義父名義の土地を自分の名義にしたいと考える、45歳男性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、鎌田真一事務所の行政書士、土地家屋調査士、宅建士・鎌田 真一さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士、土地家屋調査士、宅建士〉
徳島県吉野川市に事務所を構え、県外案件にも対応。前職で不動産に関する手続き全般を、多数の事例から学び独立。豊富な経験を活かして、現在は行政書士・土地家屋調査士の業務を中心に活躍中。
▶鎌田真一事務所
義父名義の土地を、自分の名義にすることは可能?
相談内容
妻の父が亡くなりました。私達が住んでいる場所は、土地が義父名義、建物は私の名義です。この機会に土地の名義を私の名義にしたいのですが、可能でしょうか。また何か税金はかかりますか。妻や妻の家族も同意してくれています。
相談者
- プロフィール:45歳男性
- お住まい:千葉県
- 相続人:妻、妻の母、妻の兄の3人
- 被相続人:妻の父
相関図
アドバイス1 相談者は、被相続人の法定相続人ではない
一般的な事項として、被相続人(死亡した人)の相続が開始した場合に行うことは、被相続人の相続人を確定することです。
被相続人の戸籍謄本を本籍地がある市町村役場に請求して、被相続人の出生から死亡までの戸籍を請求します。
上記請求した戸籍より、被相続人の両親、兄弟姉妹、並びに被相続人が婚姻している場合は、配偶者及び子供の名前が記載されています。
被相続人の相続人(以下「法定相続人」という)とその順位については、民法で定められています。法定相続人と相続の順位、相続する割合については、次の表を参照してください。
被相続人との関係 (相続人) |
相続の順位 | 相続する割合 |
---|---|---|
配偶者 (夫または妻) |
常に相続人 | 配偶者のみであれば100% |
子(被相続人より子が既に亡くなっている場合は、代襲相続として孫) | 第1順位 | 配偶者は、2分の1 子は、残り2分の1を均等に分割 |
直系尊属(両親、祖父母) (被相続人に子や孫がいない場合) |
第2順位 | 配偶者は、3分の2 両親は、残り3分の1を均等に分割 |
兄弟姉妹(第1順位、第2順位に該当する方がいないとき) | 第3順位 | 配偶者は、4分の3 兄弟姉妹は、残り4分の1を均等に分割 |
上記を確認しながら、今回のケースについて考えていきたいと思います。
被相続人は、相談者の妻の父です。義父の相続人となるのは、配偶者である義母、妻の兄及び妻の3名となります。
したがって、被相続人名義の土地(現在居住している)を相談者が、相続人として相続することはできません。
仮に、生前に、被相続人と養子縁組を結んでいたのであれば、相談者も相続人の一人として、被相続人名義の土地を相続することが可能となります。
アドバイス2 義父の土地の名義を相談者名義に変更するには
ここでは、被相続人名義の土地を相談者名義に変更する流れを説明します。
被相続人である義父名義の土地を、相談者の名義に直接変更することはできません。その理由としては、相談者が被相続人の相続人でないからです。
では、どうすれば被相続人名義の土地を相談者の名義に変更することが可能となるのでしょうか。
まず相続人の妻が、被相続人名義の土地をお一人で相続します。その際は、上記内容を記載した遺産分割協議書が必要となります。
遺産分割協議書に、義母と義兄及び妻が署名・御実印での押印後、所有権移転登記(相続登記)を管轄法務局に申請します。
その後、妻から夫(相談者)へ、所有権移転登記(登記原因は、売買か贈与)を管轄法務局に申請します。
以上で、被相続人名義の土地を相談者名義に変更する手続きは完了します。
アドバイス3 妻が一人で相続し、その後夫に所有権を移転する場合の税金
ここでは、妻から夫へ所有権移転登記を行った場合の税金(登録免許税等)について、簡単ではありますが、説明します。詳細な計算については、専門職にご相談下さい。
所有権移転の原因が売買の場合にかかる税金
所有権移転の原因が贈与の場合にかかる税金
- 登録免許税(不動産の名義を変更する際に、収入印紙で納税)
- 贈与税(受贈者(今回は夫)が、確定申告で贈与税の申告を行う必要があります)
- 不動産取得税(不動産を取得した際に払う税金で、取得時の1回のみ)
以上により、妻から夫へ土地の所有権を移転するだけでも、さまざまな税金等を支払う必要があります。
アドバイス4 本当に、土地を自分名義にする必要はある?
ここからは、私の個人的な意見となります。
被相続人の土地を妻が相続し妻名義になったのであれば、夫名義にする必要はないと考えます。
将来、相談者及び妻に相続が開始した際に必要であれば、名義を変更することで余分な税金及び専門職の費用も軽減できるからです。
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この記事を書いた人
〈行政書士、土地家屋調査士、宅建士〉
徳島県吉野川市に事務所を構え、県外案件にも対応。前職で不動産に関する手続き全般を、多数の事例から学び独立。豊富な経験を活かして、現在は行政書士・土地家屋調査士の業務を中心に活躍中。
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