自筆証書遺言の開封前に必ず確認!検認が必要なケースと手続きの流れ
同居していた家族が亡くなり、故人の机から封をした遺言書が見つかったらどうしますか?
決してすぐ開封してはいけません!
自宅などで保管していた自筆証書遺言や秘密証書遺言を発見した場合、家庭裁判所で検認をおこなう必要があります。遺言書に封印がある場合は、相続人が勝手に開封することは認められていないのです。
この記事では検認について、ご説明します。
- 自筆証書遺言は、家庭裁判所での検認が必要
- 検認するまでは開封厳禁。検認を怠った場合、ペナルティーが科せられることも
- 検認手続きの後に開封した自筆証書遺言でも、その内容が無効となることもある
目次
遺言書の検認とは
遺言書の検認とは、遺言書が存在するということやその形式について、裁判所が確認することです。遺言者が保管している自筆証書遺言や秘密証書遺言などが見つかった場合は、開封する前に家庭裁判所に検認の請求をすることが民法で定められています。
(遺言書の検認)
第1004条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
検認の目的
遺言書を検認手続きの目的は、次の3つです。
- 相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせる
- 遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にする
- 遺言書の偽造、変造を防止する
ここで気を付けたいのは、検認は遺言書の有効性を判断するものではない、ということです。そのため、検認手続きをして開封したけれど、遺言書そのものは無効だったということも起こり得ます。
検認が必要な遺言書の種類
自筆証書遺言と秘密証書遺言は原則、家庭裁判所での検認が必要です。
検認が不要な遺言書
公正証書遺言は公証役場に保管されているため、家庭裁判所での検認は不要です。
法務局で保管されている自筆証書遺言の検認は不要
また、自筆証書遺言のうち、民法改正によって自筆証書遺言書保管制度が始まった2020年7月10日以降、この制度を利用して遺言書保管所(法務局)で保管されている自筆証書遺言も検認の必要はありません。
なお、自筆証書遺言書保管制度を利用した場合、相続人は遺言書そのものではなく、遺言書情報証明書を取得して遺言書の内容を確認します。
遺言書情報証明書とは、遺言書保管所(法務局)に保管されている自筆証書遺言の内容の証明書です。遺言者が亡くなった後に、相続人や受遺者、遺言執行者などが交付の申請をして取得できます。
証明書の交付の請求は全国のどの遺言書保管所でも可能ですが、請求書とともに法定相続情報一覧図、または相続人全員の戸籍謄本(全部事項証明書)、住民票の写しなどの添付書類も用意する必要があるほか、手数料もかかります。
また、相続人などのうち一人が遺言書情報証明書の交付を受けた場合、遺言書保管官はそのほかの相続人などにも、遺言書を保管している旨を通知します。
検認はどこでするのか
検認は、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所で申立てます。
遺言書の保管者、または遺言書を発見した相続人がおこないます。検認の申立てをした人を、申立人といいます。
検認手続きの流れ
検認の手続きは、つぎのような流れでおこないます。
- 検認の申立て
- 検認(検認期日)
- 検認済証明書の申請
1. 検認の申立て
検認の申立てがあると、裁判所から相続人に検認期日(検認をおこなう日)が通知されます。申立人は、検認日に遺言書や印鑑などを持参し、家庭裁判所で検認を受けます。
なお、検認期日になるまで、封印がしてある遺言書は開封することはできません。
検認期日の当日に出席が必要なのは申立人のみです。申立人以外の相続人は任意参加となっています。
検認日に出席しなかった相続人などに対しては、裁判所から検認がおこなわれた旨の通知がされます。
2. 検認(検認期日)
検認期日には、相続人たちの立ち合いの下、裁判官が申立人から提出された遺言書を検認します。遺言書に封がされていた場合は裁判官が開封します。
3. 検認済証明書の申請
検認の後、検認済証明書の申請をします。遺言書に検認済証明書が付いていないと、遺言の執行はできません。
検認済証明書の発行には、遺言書1通につき150円分の収入印紙と申立人の印鑑が必要です。
検認の申立てに必要な書類
検認の申立てには申立書のほか、遺言者や相続人の戸籍謄本などの書類が必要ですが、遺言者と相続人との関係によって必要となる書類は異なります。
申立書
申立書は、裁判所のホームページからダウンロードが可能です。
申立書の記入例
相続人が遺言者の配偶者と直系尊属、第二順位相続人の場合の必要書類
- 遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺言者の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 遺言者の直系尊属(相続人と同じ代及び下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合、父母と祖父))で死亡している方がいる場合、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
相続人が不存在、または遺言者の配偶者のみ、または遺言者の配偶者と第三順位相続人(その代襲者)の場合の必要書類
- 遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺言者の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 遺言者の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 遺言者の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 遺言者の兄弟姉妹で死亡している方がいる場合、その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 代襲者としてのおいめいで死亡している方がいる場合、そのおい又はめいの死亡の記載のある戸籍(除籍改製原戸籍)謄本
検認の申立ての費用
検認の申立てには、遺言書(封書の場合は封書)1通につき収入印紙800円分の費用がかかります。
また、裁判所からの連絡用の郵便切手(予納郵便切手)も必要になります。申立てをおこなう家庭裁判所に確認しましょう。
検認をしなかった場合のペナルティー
自筆証書遺言を検認しなかった場合には罰則があります。
検認をしないと5万円以下の過料の定めも
検認を経ないで遺言を執行したり、封のされた自筆証書遺言を家庭裁判所以外で開封した場合、5万円以下の過料に処されるということも民法では定められています。
検認を怠ると相続権を失う可能性も
民法では、「相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者は欠格になる」と定められています(民法891条5)。
遺言書の内容にもよるでしょうが、検認が必要な遺言書であったにも関わらず検認をしなかった場合、隠匿したと判断され、相続権を失ってしまう可能性もあります。
検認をしてもしなくても遺言書の効力には変わりはない
検認が必要な遺言書であっても、検認を受けていないからといってその遺言書が無効になるわけではありません。しかし、検認手続きをおこなっていない遺言書では、財産の承継手続きをおこなうことができません。特に不動産を相続した場合など、登記手続きで自筆証書遺言を提出する際に、検認されてないと登記ができないということもあります。
なお、検認は遺言の有効・無効を判断する手続きではないため、検認を受けていも形式の不備などの理由から無効となる遺言書もあるというのは先述の通りです。
検認を受けても無効となる遺言書とは?
検認を受けたからといって、遺言書が有効とは限りません。検認とは、あくまでも遺言書の偽造や変造を防止するための手続きであって、遺言書の有効性を判断するものではないので、検認を受けていても無効とされる遺言書もあります。
無効となる遺言書
自筆証書遺言が無効となる一例を紹介します。次の場合に無効となる可能性があります。主に形式的な不備が挙げられます。
- 自分で書いていない
- 日付がない
- 署名押印がない
遺言書が無効だった場合はどうする?
検認を受けた遺言書が形式不備のため無効となった場合、相続人が複数いるときには、相続人全員が参加する遺産分割協議などによって誰が何を相続するかを具体的に決める必要があります。
遺産分割協議が終ったら、その結果を書面にまとめて遺産分割協議書を作成し、相続手続きをおこなっていきます。
なお、遺言書が無効であっても、相続人同士の合意が得られれば、故人の遺志をついで遺言書に沿って遺産分割をするということもあります。
検認不要な遺言書を残したい場合
検認が必要な場合は相続人に負担がかかりますし、また折角書いた遺言書であっても、定められた作成方法に則っていないと無効とされてしまいます。このような事態を避けるためには、公正証書遺言を残しておくことをおすすめします。
まとめ
以上、検認について説明しました。
自筆証書遺言は原則、家庭裁判所での検認手続きをおこなったことを証明する検認済証明書がないと、遺言の執行はできません。もしも遺言書を発見した場合は速やかに家庭裁判所に検認の申立てをしましょう。
また、検認を受けても無効となってしまう場合もあります。遺言書を作りたいときは一度専門家に相談しましょう。
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▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に相続手続きや遺言書の作成を依頼した方のインタビューはこちら
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