遺贈登記とは?相続登記との違いや必要書類を解説
相続ではなく遺贈によって取得した不動産も、自分名義にするには登記が必要です。このとき、遺贈による所有権移転登記を「遺贈登記」と言います。
登記をしないといつまでも名義が以前の所有者のままとなり、不動産の処分や売却もできません。
遺贈登記は遺言執行者がいる場合といない場合で必要書類などが異なります。今回は遺贈登記の手続きや費用について解説します。
この記事はこんな方におすすめ:
「遺贈登記について知りたい人」「遺言で不動産を譲ろうと考えている人」
この記事のポイント:
- 遺贈登記も義務化するので、早めに手続きをした方がいい
- 遺贈登記は法定相続人が受遺者であれば単独で登記できる
- 受遺者が法定相続人かどうかで登録免許税の税率が異なる
遺贈登記とは?
遺贈による所有権移転登記を、遺贈登記と言います。土地や建物の所有権が移ったことを証明するために行う登記(不動産の名義変更)です。
遺贈とは?
遺贈とは、遺言書によって被相続人(亡くなった方)が定めた人に財産の全部または一部を無償で譲ることです。
遺言によって財産を譲る人を「受贈者」、財産を譲り受けた人を「受遺者」と言います。
相続とは?
相続とは、被相続人(亡くなった方)の権利義務全ての財産を引き継ぐことです。引き継ぐ人は、法律上で決められた法定相続人です。
遺贈登記と相続登記の違いは?
不動産を取得するパターンは新たに土地などの不動産を購入するケースや、相続、贈与により取得するケース、遺贈によって取得するケースなどが考えられます。
いずれのケースにせよ、不動産を取得したときは不動産登記が必要です。
相続したときに行う不動産登記を「相続登記」と言います。
遺贈により行う不動産登記を「遺贈登記」と言います。
相続登記も遺贈登記もどちらに所有権の移転の登記をするわけですが、登記の申請人に違いがあります。
登記の申請人の違い
遺言書があった場合の相続登記は、不動産を引き継ぐこととなった相続人がおこないます。遺言執行人がいる場合で「特定財産承継遺言(後述します)」の場合は遺言執行者も行えます。
遺贈登記は、受遺者(遺贈を受けた人)が相続人であった場合は、相続登記と同じく、不動産を引き継ぐこととなった相続人もしくは、遺言執行人がいる場合で「特定財産承継遺言」の場合は遺言執行者も行えます。
ただし、受遺者(遺贈を受けた人)が相続人以外であった場合は、遺言執行人がいる場合は遺言執行人がおこないます。遺言執行人がいない場合は、受遺者(遺贈を受ける者)と相続人全員との共同で申請をします。遺言執行者が決まっておらず、相続人全員が登記申請に協力してくれない場合は、家庭裁判所に遺言執行者選任の申し立てを行う必要があります。
登録免許税の違い
登記の申請人によって登録免許税率が違います。
- 受遺者が法定相続人でない場合の登録免許税率2%
- 受遺者が法定相続人である場合の登録免許税率0.4%(軽減税率の適用)
遺贈登記の期限
相続人が遺贈を受けた場合の遺贈の登記の申請が義務化されます。
遺贈の登記も相続登記の義務化と同じ令和6年4月1日から開始され、「相続等により所有権を取得したことを知った日から3年以内」が期限になります。正当な理由がないのに申請を怠ったとき、10万円以下の過料の対象になるため注意しましょう。
また、過去のものも対象となりますので早めに手続きをおこないましょう。
遺言執行者とは
遺言執行者とは、相続が遺言書どおりに実行されるように必要な手続きを行う人です。遺言書の検認や相続調査、相続財産目録の作成など多岐にわたります。
遺言執行者は未成年者、破産者以外であれば誰でもなれますが、実際は司法書士などの専門家がなることが多いようです。
遺言執行者は、遺言書であらかじめ指定しておくか、相続発生時に第三者に指定してもらうことができます。相続人が遺言執行者が決まらない場合は、前述のとおり家庭裁判所に遺言執行者選任の申し立てをします。
特定財産承継遺言とは
民法1014条2項にある特定財産承継遺言は「相続させる旨の遺言」ともいわれています。こは、特定の法定相続人に対して、相続財産を遺贈ではなく「相続させる」という内容の遺言書のことです。
例えば、「妻○○○○に全財産を相続させる」とか「長男に土地、次男に建物を相続させる」特定の相続人に財産を相続させる遺言のことをいいます。なお、法定相続人以外に対して「相続させる」と書くことはできません。
「相続させる」場合で不動産を取得した相続人は、相続人単独で相続登記ができます。したがって、法定相続人に不動産を取得させる場合は「相続させる」と記載したほうが、相続人にとって有利と言えるでしょう。
遺贈登記を行う場所
遺贈登記は、不動産の所在地を管轄する法務局で行います。
管轄が違う法務局だと受け付けてもらえないので、あらかじめ法務局ホームページで調べておきましょう。
なお、所在地が異なる複数の不動産を遺贈された場合は、不動産ごとに管轄の法務局で手続きを行います。
遺贈登記の必要書類
遺贈登記に必要な書類は、遺言執行者がいるかどうかで変わってきます。
遺言執行者がいる場合
- 遺言書(自筆証書遺言の場合は家庭裁判所で検認済みのもの)
- 遺言者が死亡した記載のある戸籍謄本(除籍謄本)
- 遺言者の住民票の除票もしくは戸籍の附票
- 遺言執行者選任の審判書(家庭裁判所が選任した場合)
- 当該不動産の登記済証もしくは登記識別情報
- 遺言執行者の印鑑証明書(3ヶ月以内に発行したもの)
- 受遺者の住民票
- 固定資産税評価証明書または固定資産税の納税通知書
- 運転免許証、保険証などの身分証明書
遺言執行者がいない場合
- 遺言書(自筆証書遺言の場合は家庭裁判所で検認済みのもの)
- 遺言者が死亡した記載のある戸籍謄本(除籍謄本)
- 遺言者の住民票の除票もしくは戸籍の附票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 当該不動産の登記済証もしくは登記識別情報
- 相続人全員の印鑑証明書(3ヶ月以内に発行したもの)
- 受遺者の住民票
- 固定資産税評価証明書または固定資産税の納税通知書
- 運転免許証、保険証などの身分証明書
遺贈登記にかかる費用
遺贈登記にかかる費用として、3つの費用に分けられます。
- 登録免許税
- 書類の準備にかかる費用
- 専門家に払う費用(依頼した場合)
登録免許税
不動産の名義変更にかかる税金を登録免許税と言います。登録免許税は、以下の計算式で求めることができます。
固定資産評価額については、毎年所有者に送付される「課税証明書」か不動産の所在地の役所で取得できる「固定資産評価証明書」で確認できます。
遺贈登記にかかる登録免許税は、受遺者が法定相続人かどうかで税率が変わります。なぜなら受遺者が相続人であるなら実質的に「相続による所有権移転登記」と考えられ、相続に関する軽減税率が適用されるからです(令和6年3月31日まで)。
- 受遺者が法定相続人でない…固定資産税評価額の2%
- 受遺者が法定相続人である…固定資産税評価額の0.4%(軽減税率の適用)
書類の準備にかかる費用
遺贈登記の手続きには、登記事項証明書や戸籍謄本など、さまざまな書類が必要になります。 これらの費用として、数千円~1万円程度はかかると見たほうが良いでしょう。
専門家に払う費用(依頼した場合)
遺贈登記の手続きを司法書士などの専門家に依頼した場合、費用の目安として3~10万円程度かかります。これは相続人や不動産の数によっても料金は異なります。
さらに遺言書の検認や遺言執行者の選任などの手続きがある場合も、まとめて専門家に依頼したほうがミスなく進めることができます。
まとめ
今回は遺贈登記について解説しました。相続登記とは違い、遺贈登記は共同申請で手続きを行わなければいけない場合もあります。
また自筆証書遺言の場合は家庭裁判所の検認や、遺言執行者選任の手続きが必要な場合も…。ご自身で手に負えないときは専門家に相談することをおすすめします。
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