配偶者の死後、遺族年金はどのくらいもらえる?遺族年金の金額や受給要件、必要書類まで解説【行政書士監修】
夫や妻が亡くなったとき、配偶者は遺族年金をもらうことができます。遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があり、受け取れる金額・種類は子どもの人数や保険料を支払った期間などによって変わってきます。
今後のライフプランを考えるうえでも、遺族年金の基礎知識を知っておくことは大切です。今回は遺族年金について、受給資格や計算方法などを紹介します。
この記事はこんな方におすすめ:
「配偶者が亡くなったときの遺族年金について知りたい人」
この記事のポイント:
- 遺族基礎年金は、子どもがいない配偶者はもらえない
- 遺族厚生年金の金額は平均標準報酬月額によって異なる
- 遺族年金には寡婦年金などの遺族給付制度がある
この記事の監修者
〈行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、CFP®、不動産コンサルティングマスター〉
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目次
配偶者が亡くなったとき、もらえる遺族年金は2種類
夫や妻が亡くなったとき、もらえる遺族年金は「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」の2種類があります(他に給付金などがもらえる場合もあります)。
しかしすべての人が両方とも受給できる訳ではなく、遺族基礎年金しかもらえない人も。また、受給要件を満たせば死亡一時金などの給付金をもらえる場合もあります。まずは、2つの遺族年金の違いについて見ていきましょう。遺族基礎年金
遺族基礎年金は、国民年金に加入していた人が亡くなったときにもらえる遺族年金です。
国民年金は原則として、20歳以上60歳未満の日本在住のすべての人が加入しなければいけません(皆年金)。
しかし保険料の滞納などがあると、遺族基礎年金が支給されない可能性があります。遺族基礎年金の対象となる家族は定められており、「死亡した人によって生計を維持されていた子のいる配偶者」もしくは「死亡した人によって生計を維持されていた子」に限られます。したがって、子どものいない配偶者に遺族基礎年金は支給されません(死亡一時金や寡婦年金をもらえる場合があります)。
このほか、年収による制限もあります。遺族年金を受け取る人の前年の年収が850万円以上、もしくは年間所得655万5,000円以上だと、遺族基礎年金をもらうことはできません。
遺族厚生年金
遺族基礎年金に対して、遺族厚生年金は亡くなった人が厚生年金に加入していた場合にもらえる遺族年金です。そのため、厚生年金に加入していない自営業や無職の方の場合には支給されません。
遺族厚生年金は受給できる家族の範囲が遺族基礎年金と異なり、配偶者や子だけでなく、父母、祖父母、孫までもらう資格があります。ただし受給対象者には優先順位があり、最も優先順位の高い人に限られます。
なお、遺族基礎年金と遺族厚生年金は、あわせてもらうことが可能です。
遺族基礎年金の受給要件
遺族基礎年金をもらうためには、亡くなった人が国民年金に加入している以外にもいずれかの要件を満たさなければいけません。
亡くなった人の要件
- 国民年金に加入している
- 国民年金に加入する60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所がある
- 老齢基礎年金を受給中
- 老齢基礎年金の受給資格を満たす
1および2については、死亡日の前日において国民年金加入期間のうち2/3以上が保険料納付済期間であること。ただし、死亡日が令和8年3月末までは亡くなった人が65歳未満の場合、死亡した月の前々月(2か月前)までの1年間に保険料の未納がないこと。
3および4の要件については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方に限られます。老齢基礎年金とは、国民年金の加入者であった人が、65歳になったときに支給される年金です。
遺族基礎年金の受給対象者
- 子のある配偶者(亡くなった人と事実上の婚姻関係にあった人を含む)
- 子
どちらについても、生計を維持されていたことが条件となります。
「生計を維持されている」とは
- 同居していること(別居していても「仕送りをしている」「健康保険の扶養親族である」などの事項があれば認められます)
- 加給年金額等対象者について、前年の収入が850万円未満であること。または所得が655万5,000円未満であること。
そのため、離婚した後に配偶者が亡くなったとしても遺族年金を受け取ることはできません。また遺族年金を受け取っていた人が再婚した場合、遺族年金は受け取れなくなります。
「子」の定義とは
- 18歳到達年度の3月31日を経過していない子ども
- 20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級をもつ子ども
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遺族厚生年金の受給要件
遺族厚生年金についても、以下のいずれかの要件を満たしている必要があります。
亡くなった人の要件
- 厚生年金の加入者であること
- 厚生年金加入中に初診日がある傷病がもとで、初診日から5年以内に死亡した場合
- 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている方が死亡したとき
- 老齢厚生年金の受給権者であった人
- 老齢厚生年金の受給資格を満たした人
1および2については、死亡日の前日において国民年金加入期間のうち2/3以上が保険料納付済期間であること。ただし、死亡日が令和8年3月末までは亡くなった人が65歳未満の場合、死亡した月の前々月(2か月前)までの1年間に保険料の未納がないこと。
4および5の要件については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方に限られます。
遺族厚生年金の受給対象者
遺族厚生年金を受け取れるのは妻や夫のような配偶者、子に限らず生計を維持していた遺族のうち、以下の優先順位で最も高い人が受け取ることができます。受け取る人が妻か夫で条件が異なるので、きちんと確認が必要です。
- 妻(年齢は問いませんが、しかし30歳未満の子のない妻の受給期間は5年に限られます)
- 子(上記、「子」の定義にあてはまる人)
- 夫(配偶者の死亡当時55歳以上であること。受給開始は60歳からですが、遺族基礎年金をあわせて受給できる場合に限り、60歳より前から遺族厚生年金を受給できます)
- 父母(死亡当時に55歳以上である方に限る。なお受給開始は60歳から)
- 孫(上記、「子」の定義にあてはまる孫)
- 祖父母(死亡当時に55歳以上である方に限ります。なお、受給開始は60歳から)
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配偶者がもらえる遺族年金の金額はどのくらい?
では実際に、夫や妻を亡くした場合いくら遺族年金をもらうことができるのでしょうか?
遺族基礎年金と遺族厚生年金では金額、計算方法ともに異なるため、それぞれ解説します。
遺族基礎年金の計算方法
子のある配偶者が受け取る場合
子のある配偶者が受け取る遺族基礎年金の年額は、「78万900円+子の加算額」となります。 子の加算額は、第一子・第二子が1人につき22万4,700円、3人目以降が1人につき7万4,900円です。
例えば、対象となる子が4人いる場合の支給額は、以下の計算式となります。
子が受け取る場合
子が受け取る遺族基礎年金の金額(年額)は、「78万900円+2人目以降の子の加算額」となります。 加算額は、配偶者が受け取る場合と同じです。 この金額を子の数で割った額が、1人あたりの支給額となります。 例えば、対象となる子が4人いる場合の1人当たりの支給額は、以下の通りです。
遺族厚生年金の計算方法
遺族厚生年金の年金額は、死亡した方の老齢厚生年金の、報酬比例部分の4分の3の金額となります。
報酬比例部分は、老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金のいずれの給付においても、年金額の計算において基礎となるものです。
年金の加入期間や過去の報酬等に応じて決まります。
具体的な計算方法
老齢厚生年金の報酬比例部分は、平成15年3月以前の加入期間におけるもの(A)と、平成15年4月以降の加入期間におけるもの(B)とを足し算して計算します。
平成 15 年 3月以前の加入期間(A)を計算する
Aは、次の計算式で求めることができます。
A式中の「平均標準報酬月額」は、平成15年3月以前の標準報酬月額の総額を、平成15年3月以前の加入期間で割って得た額です。 標準報酬月額とは、被保険者が事業主から受ける毎月の給料などの報酬の月額を区切りのよい幅で区分したもののことです。
(A)で亡くなった人が老齢厚生年金の受給権者だった場合亡くなった人が老齢厚生年金の受給権者だった場合(前述「亡くなった人の要件」の4及び5に該当する場合)は、A式中の7.125/1000は、亡くなった人の生年月日に応じて、7.125/1000~9.5/1000となります。
平成15年4月以降の加入期間(B)を計算する
Bは、次の計算式で求めることができます。
Bの式中の「平均標準報酬額」は、平成15年4月以降の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、平成15年4月以降の加入期間で割って得た額です。 標準賞与額とは、税引き前の賞与総額から千円未満を切り捨てた金額です(1か月あたり150万円が上限)。
(B)で亡くなった人が老齢厚生年金の受給権者だった場合亡くなった人が老齢厚生年金の受給権者だった場合(前述の「亡くなった人の要件」の4及び5に該当する場合)は、B式中の5.481/1000は、亡くなった人の生年月日に応じて、5.481/1000~7.308/1000となります。 なお、先述の死亡した人に関する要件の1~3に該当する場合は、厚生年金の被保険者期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。
遺族年金の金額の計算は複雑なので、不明点がある場合は日本年金機構「ねんきんダイヤル」や街角の年金相談センター、社労士などの専門家にご相談ください。
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配偶者が利用できる遺族給付制度
遺族給付制度とは、遺族基礎年金、遺族厚生年金に上乗せしてもらえる給付金です。それぞれ受給要件が異なるので、きちんと確認しておきましょう。
遺族年金の種類一覧
遺族年金や給付金を含めた、遺族年金の種類について、以下にまとめました。寡婦年金や中高齢寡婦加算、経過的寡婦加算については、夫はもらうことができません。国民年金からの給付
国民年金からの給付金は「寡婦年金」と「死亡一時金」があります。しかし、これらはどちらかしか受け取ることができません。
寡婦年金
国民年金の第1号被保険者として10年以上保険料を納めたある夫が死亡したときに、10年以上継続して婚姻関係にあり、夫に生計を維持されていた妻に対して60歳から65歳になるまでの間支給されます。なお、受給には要件を満たす必要があります。寡婦年金がもらえる金額は、夫の死亡日前日までの期間の老齢基礎年金の計算方法により算出した額の3/4になります。
死亡一時金
死亡一時金は、死亡日の前日において、国民年金第1号被保険者(任意加入被保険者を含む)の保険料納付済期間※が36月(3年)以上ある方が死亡したときに遺族が受け取れる給付金です。
死亡一時金の金額は、保険料を納付した月数に応じて12~32万円となります。
死亡一時金を受け取れる遺族は配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順番で、死亡したときに生計を同一にしていた人が対象になります。
厚生年金からの給付
亡くなった夫が厚生年金に加入していた場合、年齢に応じて以下の給付金を受け取ることができます。
中高齢寡婦加算
中高齢寡婦加算は、遺族厚生年金を受ける妻(夫と死別した妻)が、40歳~65歳までの間、遺族厚生年金にお金を加算してもらえる制度です。
中高齢寡婦加算がもらえる妻は、子どもがいない場合に限られます。また、妻が65歳になると自分の老齢基礎年金が受けられるため、中高齢の寡婦加算はなくなります。
中高齢寡婦加算の金額は、年間59万6,300円です(令和5年度)。
経過的寡婦加算
こちらも遺族厚生年金の加算給付のひとつで、遺族厚生年金を受けている妻が65歳になり、自分の老齢基礎年金を受けるようになったときに、65歳までの中高齢寡婦加算に代わり加算される一定額のことです。
この経過的寡婦加算が受け取れる人は、昭和31年4月1日以前に生まれた人となります。経過的寡婦加算の金額は、生年月日に応じて設定されています。
遺族年金はどうやって受け取る?
遺族年金を受け取るには、必要書類を揃えて提出します。よく確認して漏れのないようにしましょう。
必要書類
- 年金請求書(遺族基礎年金と遺族厚生年金で様式が異なる)
日本年金機構ホームページ、住所地の市区町村役場、もしくは年金事務所、街角の年金相談センターの窓口などに備え付けてあります。
必ず必要な書類
- 年金手帳(提出できないときは、その理由書が必要)
- 戸籍謄本(記載事項証明書)または法定相続情報一覧図の写し(戸籍謄本は受給権発生日以降で提出日から6カ月以内に交付されたもの)
- 世帯全員の住民票の写し(年金請求書にマイナンバーの記入で添付の省略可)
- 死亡者の住民票の除票(年金請求書にマイナンバーの記入で添付の省略可
- 請求者の収入が確認できる書類(年金請求書にマイナンバーの記入で添付の省略可)
- 子の収入が確認できる書類(マイナンバー記入で、添付の省略が可能)
- 市区町村長に提出した死亡診断書(死体検案書等)のコピーまたは死亡届の記載事項証明書
- 受取先金融機関の通帳等(請求者本人名義)
死亡の原因が第三者行為の場合に必要な書類
- 第三者行為事故状況届(所定の様式あり)
- 交通事故証明書または事故が確認できる書類
- 確認書(所定の様式あり)
- 被害者に被扶養者がいる場合、扶養の事実がわかる書類(源泉徴収票など)
- 損害賠償金の算定書(示談書など)
その他状況によって必要な書類
- 年金証書
- 合算対象期間が確認できる書類
書類の提出先
これらの書類を揃え、遺族基礎年金は、住所地の市区町村役場の窓口に提出します。ただし、死亡日が国民年金第3号被保険者期間中の場合は、近くの年金事務所もしくは街角の年金相談センターとなります。
遺族厚生年金は、近くの年金事務所もしくは街角の年金相談センターです。
まとめ
この記事では、遺族年金について解説しました。配偶者が亡くなると今後の生活について不安になりますが、遺族年金制度等を利用して今後の生活を立て直すことができます。
また遺族年金の手続きだけでなく、遺産分割や相続税申告などさまざまな手続きが必要になることも。すべてご自身で行うのは大変ですから、行政書士や税理士などの専門家に依頼しても良いでしょう。
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▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に死後手続きを依頼した方のインタビューはこちら
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