終活セミナーで相続相談|オリジナルエンディングノートを生かし、老後・将来の不安を払拭(行政書士インタビュー)
この記事はこんな方におすすめ:
自分の老後・将来のことが気になるが、周囲に相談ができる人がいない方
- エンディングノートに法的な効力はないが、その人の遺志が繋がる
- 終活というのは単にお葬式やお墓の話だけではない
- 必要に応じて税理士や弁護士につなぐのも、行政書士の大切な仕事
生命保険会社から銀行に、そして外資系の生命保険の会社を経て独立。「人とお話をするのが好き」という齋藤道生先生(東京都江戸川区、齋藤道生行政書士事務所)は、自分で作成したオリジナルエンディングノートをもとに終活セミナーを開催し、相続の窓口といわれる行政書士のさらに入り口のところで、活動を続けています。そんな斎藤先生に、終活と相続についてお話を伺いました。
目次
この記事を書いた人
2007年鎌倉新書入社。『月刊仏事』編集記者を経て、「いい葬儀マガジン」等、葬儀・お墓・仏壇など、終活・エンディング関連のお役立ち情報や業界の最新の話題をさまざまな切り口で紹介するWebメディアを立ち上げる。2018年には終活・葬儀情報に特化した「はじめてのお葬式ガイド」をリリース、同サイトの編集・運営を行う。2020年からは「相続なび」の編集・運営を開始し、現在に至る。
完全な第三者だからこそ、気兼ねなく相談できる
-はじめに、事務所の特徴についておしえてください
事務所は東京都内にありますが、実際の仕事は都内よりも長野県での案件が多いです。
私の出身が長野県ということもありますし、縁あって毎月必ずそちらに行っていますので、いろいろなところに顔を出しつつ、セミナーを開かせていただいたり個別相談を受けたりしています。
また、施設に入られている方の身の回りのご相談なども受けています。
-東京と長野では、相続相談に違いはあるのでしょうか?
あります。
東京から私が来ているということは、相続の相談については非常にプラスになっているようです。
東京に比べて人間関係が濃密ということもあってか、普段は東京で暮らしていて時々訪れる私は、離れて暮らしているということで「情報がよりしっかり守られている」と安心していただけているようなのです。
もちろん守秘義務がありますので、士業にご相談した内容など、情報が漏れることはありません。それでもやはり、財産のことであったり、家の中の人間関係のことであったりというのは、身近な人にはかえって話しにくいものなのでしょう。
完全な第三者だからこそ、気兼ねなく相談できるということがあるのではないかと思っています。地元の行政書士さんや司法書士さんにご相談するよりも、気楽なのかもしれません。
相続も含め終活に必要なことをすべて、一冊にまとめたエンディングノート
-どのようなセミナーをおこなっていらっしゃるのですか?
セミナーではオリジナルで作成したエンディングノートを活用して終活全般について、皆さんにお話しています。
「何をどうするか?」ということ、もちろん相続についても、残す側も残される側も最低限、知っておきたい知識というものがあります。
それらをすべて、一冊にまとめたのが私のエンディングノートです。これをみれば、万一の時のためにどのような対策をとれば良いのか、誰が何をしたら良いのかがわかるように編集してあります。
-生前や葬儀のことから死後のことまで詳細に網羅されています。相続の解説もわかりやすいですが、全体的に市販のエンディングノートとはまったく体裁が異なります
エンディングノートを書いていても、時間の経過とともに状況は変わってしまいます。
まず変わるのが法律・税制、そして社会もどんどん変わる。さらに書いた本人の考えも変わっていきます。ですので、1ページごとに内容を書き換え、差替えできるように作っています。
エンディングノートには法的な効力はありませんが、亡くなった後、本人ではできないことが書いてあればその人の遺志が繋がります。
私も身内を亡くした経験がありますが、何も残していなかったので、銀行、電気、ガス、電話と、ひとつずつ契約先を調べて連絡しなければなりませんでした。
エンディングノートに書いてさえあれば簡単にできることが、なければすべてを手探りでやらなければならないのです。
相談後「安心した」と感じていただけたら、それが一番
-セミナーにはどのような方がいらっしゃるのですか?
私の終活セミナーにいらっしゃる方は、年代は60代以上の方、中でも一人暮らしの女性の方が多いです。やはり男性の方が早く亡くなって、女性は結婚していても十年から十数年は一人で生活しなければならないケースが多いわけです。
今、地縁や血縁といった人のつながりが減ってきています。
一人で暮らしている女性がたくさんいて、その方々が誰かに相続の相談をしようと思ったときに、では弁護士さんや税理士さんなどに相談するか?といったら、敷居を高く感じてしまう方もいらっしゃいます。そのようなときに気楽に相談していただけているようです。
エンディングノートは、感謝と安心を伝え、記録するものです。
例えばあるご高齢の女性の方がセミナーにいらして、後で個別相談を受けたら「私が死んだときにはどうすればいいの?」というご相談でした。
後日、遺言書が仕上がった時に「ああ、これで安心した」といってくださいました。
これが私の仕事の一番の”核心”だと思います。その人が将来を考えて不安になった時に、「安心した」と感じていただけたら、それが一番です。
-将来に不安を感じている方はかなり多くいらっしゃると思います
晩年になってどうしようかな?と思うことはたくさんあります。
今までの社会だったら、例えば戦前であったら残った人に全部丸投げで良かったわけです。ところが、今は自分で自分の葬式のことまで考えなければいけません。ここで「終活」の登場です。
終活ですから、もちろん死にかかわることも含まれていますが、私は2種類の人がいると思っています。
終活を受け入れる方と、忌み嫌う方。はっきりと分かれます。
以前、ある大学の同窓会で、40~50人の方にお話をしたことがあります。
セミナーの前に、参加者の一人が「なんで終活なんて話を聞かなければならないの?」と言われたそうです。役員の方が「もしかしたら失礼な態度をとる方がいらっしゃるかもしれません」と事前に知らせてくださいました。
確かに、会場に入るとそういった様子の方がいらして、私はどのように聞いていただけるのかと気にしながら話していたのですが、15分ほど経つと表情が一変、熱心に話を聞いてくださいました。
「終活」がなぜ必要なのか?が、腑に落ちたのでしょう。終活というのは単にお葬式やお墓の話だけではない、ということがわかっていただけたのだと思います。
聞いていただけたことはとても有難かったですし、私にとっても自分の力になるというか、そんな気がしています。
あらゆる相続相談に乗る行政書士は町医者と同じ
-終活では具体的にどのようなサポートをされるのでしょうか?
生前でしたら遺言書作成のお手伝いをしたり、またお亡くなりになったら遺産分割協議書を作ったり、財産調査をしたり、さまざまなお手伝いをします。でも、これらは当たり前のことで、通常はどの行政書士もやることですね。
行政書士は窓口は非常に広いけれども、できることは制限されています。
争いになったら弁護士しか対応できませんし、法務局に行って不動産の名義変更をするとなったら司法書士、税金については税理士が担当します。
行政書士は町医者と同じです。すべての相談に乗って、できることはするし、できないことはさらに専門家につないでいく。
一般の人にとっては弁護士さんといきなりお話しすることは、気後れしてしまうことですよね。そういうことを、行政書士がつないで差し上げる。それが行政書士の仕事ではないでしょうか。
エンディングノートを使って終活についてお話をする私は、相続の窓口である行政書士の、さらにその入り口に力を入れているということです。
-行政書士がお困りの方と専門家の間をつなぐわけですね
私の終活セミナーのレジュメの参考文献をご覧いただければおわかりいただけると思いますが、葬式は要らないという人もいれば、葬式は必要という人もいるという具合で、正反対の意見があります。これが今の「終活」を表していると思います。
自分の残った時間をいかに有効に使うか、生きている間をどう充実させるかが終活。それを知らないから不安になるわけです。
だからこそ相談に乗って、必要に応じて、税理士さんや弁護士さんにつないであげる。その「つなぐ」という仕事が一番、行政書士が間に入ってやるべきことだと思います。
-これまでのご相談で印象に残っているエピソードはありますか?
あるご高齢の女性の方が、長野の施設に入られていました。ご結婚はされていなくて、ごきょうだいは大勢いらしたのですが、交流はあまりなかったようです。その方の一番仲良しの妹さんからのご依頼で、公正証書遺言を作成し、毎月1度、施設を訪れてお話を伺うようになりました。
2年経たないうちにお亡くなりになったのですが、故人の知り合いに訃報を送ったりしていたところ、「お別れの会を開きたい」という連絡がありました。そこで出席される方のリストを見ると、皆さん大学の教授です。故人はある分野では世界的な功績を残された方だったのです。
-もしも公正証書遺言だけだったら、ご遺族もきょうだいの偉業を知らないままでしたね
もし、訃報の作成まで踏み込んでいなければ、そのままご遺族も知らないままでした。その人の最後のしめくくりが「亡くなったね」で終わってしまっていたかもしれません。
ご遺族にも「きょうだいに、こんな立派な仕事をしていた人がいたのだ」ということを伝えることができたのは、とても印象に残っています。
-ありがとうございました
この記事を書いた人
2007年鎌倉新書入社。『月刊仏事』編集記者を経て、「いい葬儀マガジン」等、葬儀・お墓・仏壇など、終活・エンディング関連のお役立ち情報や業界の最新の話題をさまざまな切り口で紹介するWebメディアを立ち上げる。2018年には終活・葬儀情報に特化した「はじめてのお葬式ガイド」をリリース、同サイトの編集・運営を行う。2020年からは「相続なび」の編集・運営を開始し、現在に至る。
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