「まずは実際にお話しましょう」高齢化問題に立ち向かう下関の町弁
高齢化問題に関心を持ち、終活セミナーなどを開催している片山 智宏先生。成年後見人なども数多く請け負っているそうです。「終活についても自分一人でやるのは大変なので、相談に来て欲しい」とのこと。
今回はこれまで対応した事例や、弁護士探しのアドバイスを伺いました。
埼玉県出身ながら、司法修習で訪れた下関市に魅力を感じ根を下ろす。地元の中小企業の支援にも注力し、元々下関商工会議所青年部に所属し、現OB会に所属。平成31年度山口県弁護士会副会長。
片山法律事務所
特に高齢者関連の相談が多い
―相続に限らず、どういった分野の案件を対応されていますか?
うちはいわゆる町弁ですから、専門分野があるというより分野に限らずご依頼を受けています。中でも多いのは、中小企業の経営者の方からのご依頼とか、借金問題、終活、高齢者関係の案件ですね。
特に、下関市は少子高齢化が全国でも進んでいて。そういった背景もあって、高齢者関連の案件は私が受ける案件の6割くらいになると思います。その中でも成年後見の依頼が多いですね。
成年後見の案件数では下関市内で3本の指に入るんじゃないでしょうか。成年後見人は家庭裁判所が選定するのですが、裁判所が使いやすい人を選んでいるのかもしれないですね(笑)
特殊な状況の相続を解決した経験あり
―これまで解決した相続の事例を伺えますか?
行方不明の相続人を探し回った事例
印象的なものだと、相続人である兄弟が行方不明なので探してほしいという依頼ですね。
依頼者はその相続人とは長年疎遠。住民票が近畿地方のとある都市にあったので、郵便を送ったが届かない。
そこで探偵を使って調査したのですが見つからない。なんとか関東地方に住んでいると判明して書面で通知を送りましたが、反応がありませんでした。そこでその地域の家庭裁判所に、不在者財産管理人の選任の申し立てをしました。
不在者財産管理人
管理人従来の住所又は居所を去り,容易に戻る見込みのない者(不在者)に財産管理人がいない場合に,家庭裁判所は,申立てにより,不在者自身や不在者の財産について利害関係を有する第三者の利益を保護するため,財産管理人選任等の処分を行うことができます。引用:裁判所
その後、家庭裁判所がその住所を調査したところ、兄弟が居住していることが判明。そのため不在者財産管理人の選任の申し立てを取り下げました。
改めて相続発生地である近畿地方の家庭裁判所に遺産分割審判の申し立てをしたところ、裁判所から兄弟の住所地である関東でも調停を申し立てをするように言われて再び申し立てをし、結局、調停にも出頭せず不成立となって、今度はまた近畿地方の裁判所で別の審判することになり…。というふうに日本を西へ東へ、1年くらい裁判所をたらい回しにされました。
その審判によってようやく相続手続きができるようになり、私が手続きを代行することで解決しました。
法律的に難しいことは何もなかったんですが、そもそも遺産分割が始められない。弁護士人生で、1度あるかないかのインパクトのある案件でしたね。
相続人がいない人の遺産整理をした事例
他には、相続人がいない方の遺産整理を行ったこともあります。この案件は相続財産管理人として関わりました。
相続財産管理人
相続人の存在,不存在が明らかでないとき(相続人全員が相続放棄をして,結果として相続する者がいなくなった場合も含まれる。)には,家庭裁判所は,申立てにより,相続財産の管理人を選任します。相続財産管理人は,被相続人(亡くなった方)の債権者等に対して被相続人の債務を支払うなどして清算を行い,清算後残った財産を国庫に帰属させることになります。引用:裁判所
亡くなったのは、ある程度の資産を持っている方。家や土地、預貯金などが残されていましたが、遺言書がない状況で病気で急死してしまいました。
自宅にはたくさん物が残っていたので、それを処理して自宅を売却。遠方にある土地も売却しました。
売却したお金は、借金があればその支払いをします。それでも財産が残れば、被相続人が特に親しくしていた人に配分します。ちなみにお金はすべて渡せるわけではなく、裁判所が決定した金額のみです。
配分してもあまったお金は、国庫に収められることになります。この案件では最後に何千万円も残りましたが、すべて国庫に収めました。
この亡くなった方は元気なうちは「遺言書作るよ」と言っていたようなんですが、急死してしまったので作られず…。相続人がいない場合は、遺言書がないと自分の思い通りに財産が分配できないという教訓になりました。
―相続人がいない場合の遺言書は、どういった内容になるんでしょうか?
例えば、お世話になった方や、親しい友人に相続するという内容にする方もいます。またユニセフ・赤十字などの慈善団体や、自分の母校に寄付するという方法もあります。
そうしないとすべて国庫に入ってしまうので。国に渡すよりも、友人や自分で選んだ団体に寄付した方が良いと考える方が多いですね。
自分が把握できる範囲だから柔軟に対応できる
―以前に所属していた事務所から、独立したきっかけを伺ってもよろしいですか?
私は当時、商工会議所の青年部に所属していまして。社長さんとかその候補の方とか、個人事業主の方とかと接する機会が多いんですね。そういう人を見ていると、自分一人で活動するのも楽しそうだなと思ったんです。
前の事務所では7名くらいの弁護士が所属していましたが、それぞれの仕事が私には見えない。同じ事務所で、私が把握していない仕事をするのはどうかなと感じるようになりました。私は自分の名前が入っているものは、自分でチェックしたいと思うタイプなので。
なので今は自分で把握できる範囲で、こじんまりと活動をしています。
それに小さい事務所ならではの長所もありますね。例えば旅行にいったとして、大きいホテルは設備がよかったり、サービスが安定していますよね。でも柔軟な個別対応は難しいことが多い。
家族経営のホテルとか小規模な旅館の方が、「この料理を夜食で持ってきて」とリクエストしてもすぐに持ってきてくれることが多いですよね。融通が効いて臨機応変に対応してくれる。
当事務所は、そのような小規模で柔軟な対応を目指しています。
ネットの情報に惑わされず、直接話してみる
―弁護士探しをしている方にアドバイスをいただけますか?
ネットで探した弁護士でも、まずは一度相談することをおすすめします。弁護士から見た評価と、ネットでのお客様からの評価が異なることが多々ありますから。
ホームページはきれいでも、同業者である弁護士からの評判は良くないということもあります。
それに波長が合う・合わないがあると思います。実際に会って話してみて、気持ちよく話せる人が良いと思います。会ってみて「違うな」と思えば、別の弁護士に相談してみてください。
弁護士にも得意分野があります。私は下関の弁護士であれば、ほとんど把握していますので「この分野だったらあの弁護士が得意だな」と思えば、別の弁護士をご紹介することもありますね。
あとネットで調べて上手くいくと思ったら、実際にはそんなに簡単にいかないことも多いです。例えば寄与分(被相続人の財産の維持・増加に貢献した相続人に、相続分を増やすこと)。審判で寄与分の主張が認められることはかなりまれと思っていいです。これは弁護士歴30年以上の大先輩も同じことを言っていました。
そのため、裁判まで行かずに遺産分割調停で多めにもらえるように交渉します。裁判ではほとんど法定相続分での分割になりますから。
そういった上手く交渉を進める方法のノウハウもありますし、まずは相談に来てほしいですね。
―大変勉強になりました!ありがとうございました。
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