相談所のような、ふらっと入れる法律事務所を目指す「あれこれ悩んでいたら早めに相談してほしいです」
弁護士の仕事と並行して、塾講師の仕事をしている清水 脩先生。また小学生~高校生の子どもたちに行っている法教育の授業では「こういう会社はブラックだから就職しちゃだめだよ」といった話をしているそうです。
今回は清水先生に取り扱った事例や、相続問題を抱える方へのアドバイスを伺いました。
相続に限らず、交通事故・離婚・残業代の未払いなど幅広い分野に対応。塾講師としての経験を生かし、丁寧でわかりやすい説明を心掛けている。堅田地区で一番最初の法律事務所として、現在、雪谷弁護士と2名で活動中。
琵琶湖大橋法律事務所
さまざまな相続の問題を解決
―相続の案件で、印象に残っている事例はありますか?
遺言書の内容で母子がもめた事例
夫である被相続人が、妻にすべての遺産を相続させる内容の遺言書を残していたことで、母と子でもめた事例がありました。相続人は妻・子ども2人・養子の全4名。そのうち3名(妻・子ども1名・養子)は遺言書に同意していました。
しかし末の子どもだけが拒否。妻が「これくらいなら渡せるよ」と末の子に提示した金額でも拒否をされました。遺留分減殺請求(現在は遺留分侵害額請求)をすれば遺留分は手に入る状況でしたが、末の子はそれもしませんでした。
末の子は弁護士をつけないこともあり、全く話が進みません。詳しくは省略しますが、別件で末の子を訴えることでなんとか話をつけられました。そうしてやっと末の子に遺留分減殺請求をさせることができたんです。
しかし一筋縄ではいかず、裁判所による不動産鑑定を入れて、ようやく遺留分の金額が確定ができました。しかし金額は末の子が主張していた額の半分以下でしたね。
この案件がこれだけもめたのは、末の子の夫が法律の知識があっていろいろ指示をしていたから。夫は自分が法律に詳しいと思っているため、自分の知識でどうにかなると考えていたのでしょう。そのため弁護士を立てず、むしろややこしいことになってしまったんでしょうね。
特別受益の有無が争いになった事例
他には特別受益に関わる問題も多く扱っています。例えば「弟は大学に行かせてもらったのに、自分は行かせてもらっていない。その分、弟の取り分を減らすべきだ」という主張をする方がいるとします。
こういった場合、大抵は、裁判所は取り合ってくれないです。証拠がありませんから。領収書や銀行の振込用紙などの確実な証拠がないと、まず認められないと思っていい。何十年も前の領収書を持っていることは、普通はないですよね。
ちなみにこれまで私にいただいた相談は、特別受益の主張をされるケースが多いです。言いかえれば防御をする側ですね。ですが、もし私の依頼人に特別受益を証明してほしいと言われたら「証拠がなかったら、 言うだけ無駄になりますよ」とお話すると思いますね。
もちろんご依頼人の希望通り、特別受益の主張はします。でも通らないと思った方がいいです。それだけ裁判所は証拠に厳しいんです。
ちなみに裁判になる前の協議の段階だったら、比較的に特別受益は考慮しやすいと思います。証拠がなくても、相続人同士で譲りあって処理できればいいので。そうなってくれるのが一番だと思いますね。実際はそうならないことが多いのですが…
疎遠な相続人を探し出した事例
あとは、相続人を探し出すことから始めた案件もあります。被相続人が離婚していたなどの理由で、被相続人と相続人の面識がほとんどないようなケースです。連絡先もどこに住んでいるのかも分からない状況です。
まずはいろいろと情報を集めて、相続人を見つけ出す。そして被相続人が亡くなったことや、遺産の詳細について手紙を送ります。
こういったケースでは相続人は相続を拒否するか、そのまま相続するかのどちらかが多いですね。もめることはほとんどないです。その相続人の方からすると、知らない人の財産なのであまり頓着しないのかもしれません。
ですからこのような依頼では紛争を解決する役目というより、調査と調整役が主な私の仕事になります。
わかりやすい相談で、弁護士の敷居を低く
―相談を受けるにあたって、配慮していることはありますか?
うちの事務所は土曜日も営業しています。営業日は火曜日~土曜日です。平日仕事をしている方は休みの日しか相談に来れないので、土曜日に営業することにしたんです。
あと事務所の看板をあえて出していません。事務所はビルの3階にありますが、外から見たらどこにあるかわからないんです。ビルの中に入って、事務所の扉の前に来てはじめて「ああ、ここが法律事務所ね」とわかるようになっています。
というのも、法律事務所に相談していることを、周囲の人に知られたくない方もいますから。そういう方が、心理的に入りやすいように配慮しています。看板がないので、物理的には入りにくいですけどね(笑)そういった意味で、うちの事務所はアクセスしやすいと思います。
また専門用語を使わないようにしています。難しい専門用語を使う専門家もいるじゃないですか。専門用語でしか話せない人は「本当の意味ではわかっていないよね」と思いますね。
例えば、法律家は遺言書(ゆいごんしょ)のことを「いごんしょ」と言います。でも一般の方はそれを知らない。だから私はご相談者と話すときは「ゆいごんしょ」と言うようにしています。
私や同じ事務所の雪谷は、塾講師の経験があって。子どもたちにわかりやすく話す必要がありますから、かみ砕いて話すスキルが培われたんじゃないかと思います。
ちなみに私は今も塾講師を続けていますよ。
子どもたちに、身近な法教育を
―塾講師と弁護士を両立しているんですね。他にも弁護士以外の活動はされていますか?
あとは、小学校・中学校・高校で法律の授業をすることもありますね。今日もこのインタビューの前に、小学校で授業をしてきました。
内容は子どもの年齢によります。例えば小学校では、いじめの授業をしたり。高校では「こういうのがブラックバイトだよ。こういう会社は労働基準法に違反しているから、就職しちゃだめだよ」と伝えたりもします。
こうして子どもの頃に弁護士に触れていると、将来なにかあったときに相談しやすくなりますよね。「昔、授業をしてくれた弁護士がいたな」と、気軽に相談に来てくれるようになればいいと思っています。
依頼をしなくてもいいから、早めに相談をしてほしい
―弁護士に相談するべきか悩んでいる方に、アドバイスをいただけますか?
法的なトラブルのにおいがしたら、すぐに弁護士に相談してほしいですね。病院と同じで、早く来てもらった方がいいと考えています。
「自分で調べてやってみて、うまくいかなくなった」というタイミングだと、手遅れになっている場合がある。早めに来てもらえれば「こういう風にすれば、自分で処理できますよ」「裁判所に行ったら教えてくれますよ」とアドバイスができます。
先日、相続放棄を希望する方が来たときには「これはご自分で資料集められますし、裁判所に行ったらすぐに書類の書き方も教えてくれますよ」と伝えて、依頼は受けませんでした。
もちろん私の方で手続きを代行できますが、弁護士費用で相談者が赤字になることもありますし。そんな状況でお金をいただいても申し訳ないですから。
弁護士に相談したら、依頼しなきゃと思われる方もいるかもしれません。しかし少なくともうちの事務所は、相談したら依頼しなければならないということはありません。
うちの事務所は、ご自身でできることをなるべくご自身でできるように、道しるべを示していくスタンスです。だからふらっと町の相談所に行くような感じで、来ていただきたいです。
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