生命保険と年金|遺族がお金をもらうために必要な手続き
この記事はこんな方におすすめ:
「家族が亡くなったときに受け取れる生命保険や公的年金の手続きについて知りたい方」
- 生命保険や未支給年金は受取人のもの。他の相続人と分ける必要はない
- 遺産分割協議が進んでいなくても、必要書類が揃えば保険や年金の請求が可能
- 死亡届を役所に出しただけでは、公的年金の支給は止まらない?
相続手続きには死亡届の提出や世帯主変更の届出など多くの手続きが必要になります。また、相続財産を確定させるために金融資産や不動産などの調査も必要です。
そして、相続財産以外に金融資産がいくらあるのかを確定させるためには、生命保険などの遺族が持っている債権をお金に変える必要があります。また、遺族が直接受け取ることができる可能性のある年金についても、受け取りのための手続きが必要になります。
この記事では、遺族がお金をもらうための生命保険や年金の手続きをご紹介します。
生命保険の手続き
亡くなった方が生命保険に加入していた場合には、その契約内容や加入条件によって保険金を請求することができます。残された家族の生活の支えとなる場合もありますので、なるべく早めに請求しましょう。ここではどのように生命保険の手続きを行うのかを解説していきます。
保険金の請求とは
生命保険の手続きは、生命保険会社にその保険金の支払いを請求するということです。このような保険金の支払いを請求することができる権利を「保険金請求権」といいます。
保険金請求の手続き
親族が亡くなった場合には、その方が生命保険に加入していたのかを保険証券や保険会社からの手紙を探すなどの方法で調査しましょう。
生命保険に加入していたことがわかった場合には、その保険会社に対して電話などでその方が亡くなったことを連絡します。そこで確認が取れれば、保険会社から請求手続きに関する案内書面などが送られてきますので、そこに記載されている必要書類などを提出して手続きを進めます。
保険会社は提出された書類や保険の契約内容などに基づき、支払いの可否について審査の結果、保険金の支払いが決定したら、あらかじめ指定された受取人の口座に保険金を振り込みます。
必要書類が保険会社に到達してから支払いが行われるまで、およそ5営業日となります。相続手続きの中では比較的スピーディに行われる手続きとなります。
請求権は消滅する?
相続手続きには期限が定まっているものが多く存在します。
保険金の請求にも期限が存在します。ただ保険金請求の場合は、死亡届などの「期限」とは異なり「時効」になります。保険金請求権の時効は「3年」(かんぽ生命の簡易保険の場合の時効は「5年」)となっていますので、保険金請求権を行使できるようになったときから3年(かんぽ生命簡易保険の場合は5年)が経過すると保険金請求権は消滅します。
この「3年」(かんぽ生命簡易保険の場合は5年)は法律(保険法)で定められたものであり約款にも規定されています。
他方で、加入者が亡くなってから3年(かんぽ生命簡易保険の場合は5年)が経過したとしても保険会社が保険金請求権の時効を「援用」しない場合には保険金を請求することができます。
「援用」とは、保険金請求権を時効によって消滅させる権利を行使させるというような意味です。3年が経過してしまっても、ただそれだけで保険金請求ができなくなるわけではありませんので、一度保険会社に連絡してみることをおすすめします。
請求に必要な書類
保険金請求の手続きをする場合には、保険会社から必要な書類などを記載した案内などが送られてきますが、相続によって家計が不安定になっているなどの理由によってなるべく早く保険金を受け取りたいという場合には、あらかじめ必要になる書類を用意しておきましょう。
保険金請求の手続きに必要な書類は「支払請求書」「被保険者の住民票(死亡の事実の記載があるもの)」「受取人の戸籍謄本」「受取人の印鑑証明書」「医師の死亡診断書(死体検案書)」「保険証券」などになります。民間企業との間での手続きとなります。保険会社によって必要になる書類が増える場合や提出書類の省略が認められる場合もありますので事前にホームページなどで確認しておくと良いでしょう。
支払請求書は保険会社の所定の用紙で、必要事項を記入して提出します。被保険者の住民票とは、亡くなった方の住民票のことを指します。亡くなった方の住民票はコンビニなどで取得することができませんので、市役所や出張所などで取得しましょう。
受取人の印鑑証明書の提出が必要になる場合があるので、必要に応じてあらかじめ自治体に実印の登録をしておきましょう。印鑑証明書を提出する場合、支払請求書などに押す印鑑は印鑑証明書と同じ印影の実印となります。
医師の死亡診断書(死体検案書)は死亡届と同じ用紙に医師や警察が記載したものです。
死亡診断書は保険金請求の場面だけでなく、他の手続きでも用いることがありますので、自治体に提出する前にコピーしておきましょう。もしコピーがない場合には、発行してもらった病院などで再発行を行うことができます。ただ、病院によって手続きの方法や料金は異なりますので気をつけましょう。
誰が請求できる?
生命保険契約には「契約者」「被保険者」「受取人」が存在します。
「契約者」は保険会社と契約を行った者で、保険料の払い込みなどを行います。
「被保険者」は保険の対象となる者で、被保険者が死亡することで死亡保険金が支払われます。
「受取人」とは保険金を受け取る者のことです。
被保険者が死亡保険金受取人になることはできません。これらの当事者の中で死亡保険金を請求できる者は、契約者が指定した死亡保険金受取人です。死亡保険金受取人が必要書類を準備して請求手続きを行うと、保険会社から受取人に死亡保険金が支払われます。死亡の連絡は契約者が行うこともできます。
また、この記事での詳しい解説は避けますが、被保険者以外の契約者や受取人が亡くなった場合にも手続きが必要になりますので気をつけましょう。 ※被保険者以外の契約者が亡くなっても、死亡保険金は支払われません。
保険金は相続財産に含まれる?
保険金を受け取ることができるのは契約者があらかじめ指定した死亡保険金受取人です。この場合には死亡保険金は相続財産に含まれません。
すなわち、受取人は保険金に加えて法定相続分を相続することができますし、相続放棄をしていても保険金を受け取ることができます。
なお、生命保険金は相続財産には含まれませんが、契約形態によってはみなし相続財産として相続税の課税対象になることがありますので、申告の際には注意が必要です。
年金の手続き
亡くなった方が年金受給者であった場合には、その手続きが必要になります。
年金に関する手続きは「受給権者死亡届」「未支給年金請求」となります。また、遺族年金などの支給対象に含まれる場合にはその申請が必要です。
ここからはそのような年金の手続きについて解説していきたいと思います。
受給権者死亡届
年金受給者が亡くなった場合には年金を受給する権利を失うため、その旨を最寄りの年金事務所や年金相談センターなどに届け出て年金の給付を止める必要があります。後ほど詳しく解説しますが、この届出をしないと年金の不正受給に該当し、最悪の場合刑罰を課せられてしまいます。
年金の受給権は相続の対象とはなりませんので、しっかりと届出をしましょう。届出の期限などは亡くなった方の加入していた年金の種類によって異なりますので注意しましょう。
届出の期限
受給権者死亡届の提出期限は加入していた年金によって異なります。自営業や農業・漁業従事者など、「国民年金」に加入していた方が亡くなった場合には、その日から14日以内に届出をする必要があります。
他方で会社員や公務員など、「厚生年金または共済年金」に加入していた方が亡くなった場合には10日以内に届出をする必要があります。
亡くなった方がどの年金に加入していたかわからない場合には、年金手帳や年金証書で確認することができますし、年金事務所に問い合わせるという方法もあります。どちらも亡くなった後すぐに行わなければならない手続きですが、期限を間違えないように気をつけましょう。
必要な書類
受給権者死亡の届出を行う際には「年金受給者死亡届(報告書)」、「年金証書」、「死亡の事実を明らかにできる書類」の提出が必要です。
年金受給者死亡届(報告書)は年金事務所や年金相談センターで入手することができます。また、年金事務所のホームページからダウンロードすることも可能です。
年金証書は亡くなった方のものを提出しましょう。死亡の事実を明らかにできる書類とは、戸籍謄本や死亡診断書(死体検案書)のコピー、死亡届の記載事項証明書などが該当します。
死亡届を提出する前に死亡診断書(死体検案書)のコピーを作成していた場合にはそれを提出することが、一番手間がかからない方法だと思います。
年金の受給を止めないとどうなるの?
年金の受給権者が亡くなった場合に、受給権者死亡の届出を行わないと年金は銀行口座に振り込まれ続けてしまいます。これは、死亡届を提出することで自動的に受給権が失われるわけではないからです。
銀行口座に亡くなった方の年金が受給され続けているからといって、そのまま放置して置いてはいけません。このまま放置しておくと、年金の不正受給となってしまいます。
不正受給をしてしまうと「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」を課せられてしまいます。また、虚偽の届出をしてしまうと「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金」を課せられてしまします。そして、届出をしていないだけでも「30万円以下の罰金」を課せられてしまうことがありますので注意が必要です。
受給権者死亡届が不要な場合
年金の受給権者が亡くなった際には原則として受給権者死亡届が必要になりますが、例外として生前にマイナンバー(個人番号)を日本年金機構に収録している場合には届出が不要になります。マイナンバーカードを発行していても、日本年金機構にマイナンバーを収録していなければ受給権者死亡届の提出が必要ですので気をつけましょう。
未支給年金請求
年金は2ヶ月に一回、偶数月に2ヵ月分の金額をまとめて支給されます。その関係で、受給者が亡くなる前に受給することができたはずの年金が未支給になることがあります。その場合には未支給年金の請求届けを提出しましょう。なお、未支給年金は相続の対象にはなりません。
請求をできる場合
年金受給者が亡くなった場合に銀行口座を解約または凍結します。この解約などをするタイミングが年金の支払日より前になることが多いのですが、それによって未支給年金が生じてしまいます。
年金の支給のために用いていた銀行口座が解約されている場合には、当然年金を支給することができません。未支給年金が発生していると日本年金機構から相続人宛に通知が送付されることもあるので、金額などを確認して請求をしましょう。
この請求は5年で時効になってしまいます。忘れないうちに申請をすることがおすすめです。
請求をする人
未支給年金を請求できる者、つまり未支給年金を受け取ることができる者は、「配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、その他の3親等内の親族」の中で「死亡当時生計を同じくしている人(生活を共にしている人)」と法律で定められています。
配偶者や子供、父母であっても、同居をしていないケースのように生活を共にしていなければ、未支給年金の請求をすることも受け取ることもできないのです。逆に同居をしている者でも配偶者や子供などでないと請求ができません。
法律上の婚姻関係にない事実婚の場合でも、「事実婚関係及び生計同一関係に関する申立書」を提出し認められれば、未支給年金を受け取ることができます。
必要な書類
未支給年金の請求に必要な書類は「未支給年金請求届」「年金証書」「戸籍謄本」「住民票」「通帳」となります。戸籍謄本は亡くなった方と請求者の関係性を明らかにすることを目的としています。
住民票は亡くなった方と請求者が生計を同じにしていた(同居していた)ことを明らかにするためのものです。通帳は未払い年金の振込先を明らかにするためのものです。
その他の手続き
これらの他にも該当する方は遺族基礎年金や寡婦年金、死亡一時金、遺族厚生年金などが支給されます。ご自身が該当するかどうか、ぜひ一度ご覧になってみてください。
まとめ
ここまでこの記事では、保険金の請求や年金に関する手続きについて解説してきました。どちらの手続きにも共通することは、最終的に遺産分割協議の対象にならないお金を受け取ることができるという点です。
一方でお金が関係する手続きでは遺族の間で揉めてしまうこともあります。正確な法律の知識や豊富な経験を持つ専門家にアドバイスを受けてスムーズに手続きを進めることも良い選択だと思います。
▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に相続手続きを依頼した方のインタビューはこちら
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