相続税の追徴課税を受ける前に知っておくべき事
本記事は、いい相続の姉妹サイト「遺産相続弁護士ガイド」で2020年9月18日に公開された記事を再編集したものです。
期限内に相続税を申告しなかったり、申告した内容に漏れがあった場合には、追徴課税がなされることがあります。
この記事では、相続税の追徴課税について説明したうえで、追徴課税を免れる方法について説明します。
この記事を書いた人
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追徴課税とは?
「追徴課税」(「ついちょうかぜい」と読みます)という言葉は税法用語ではないので、公式な定義はありませんが、一般に、次の2つの意味で使われています。
- 税務調査を受け課税される本税
- 附帯税
以下、それぞれについて説明します。
税務調査を受け課税される本税
税務調査とは、申告漏れが無かったかどうかを確認するための税務署による調査のことです(税務調査については「相続税の税務調査の実態と対策〜何年後?通帳やタンス預金も対象?」参照)。
税務調査で申告漏れが明らかになると、税額の不足分を納付しなければなりません。
税務調査で指摘を受けると、基本的には、期限内申告をした場合は修正申告、期限内申告をしなかった場合は期限後申告をすることになりますが、自主的に申告しない場合は、更正・決定の処分を受けて、結局、不足分を納付することになります(それでも納付しない場合は、財産を差し押さえられます)。
このように、税務調査での指摘を受けて課税される本税(相続税)のことを追徴課税といいます。
附帯税
期限内に申告しなかったり、申告した内容に漏れがあった場合は、本税に加えて附帯税(ふたいぜい)が課されることがあります。
相続税の附帯税には、次のものがあります。
- 延滞税
- 過少申告加算税
- 無申告加算税
- 重加算税
附帯税がかかる場合は、本税を納付後に、税務署が税額を計算し、通知書が送られてくるので、税率や計算方法については、知らなくても構いませんが、以下、それぞれについて説明します。
延滞税
延滞税とは、税金が定められた期限までに納付されない場合に、原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて課される、利息に相当する税金のことです。
延滞税については、別の記事にまとめました。「相続税の延滞税がかかる場合と免除される場合、計算方法」をご参照ください。
無申告加算税
無申告加算税は、申告を行うべきケースであるにもかかわらず、申告期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内)までに申告を行わなかった場合に課せられる加算税です。
無申告加算税について詳しくは「相続税の無申告加算税の税率と計算方法、延滞税についても説明」をご参照ください。
過少申告加算税
過少申告加算税は、申告はしたが申告した税額が過少であった場合に課せられる加算税です。
過少申告加算税がかかるのは、税務調査の通知があってから修正申告をした場合です。
税務調査の通知があったわけではなく自主的に修正申告をした場合は、過少申告加算税はかかりません。
過少申告加算税について詳しくは「相続税の修正申告|期限と延滞税、申告書・納付書の書き方、報酬」をご参照ください。
重加算税
重加算税は、事実を隠ぺい又は仮装して、申告しなかった場合や、過少申告をした場合に課せられる加算税です。
重加算税の方が無申告加算税や過少申告加算税よりも税率が高く設定されており、重加算税が課せられる場合は、無申告加算税や過少申告加算税は課されません。
追徴課税を受けた人の中で重加算税を受けた人の割合は、約16.5%です。
重加算税について詳しくは「相続税の重加算税の要件・税率・計算方法、配偶者控除の適用可否」をご参照ください。
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追徴課税の時期
相続税の税務調査の対象となった場合、通常、申告の翌年か翌々年の8月〜11月に税務署から連絡がきて、9月〜12月に実施されます。
この時期を過ぎると、税務調査が入る可能性は格段に低くなります。
相続税の追徴課税の時効
相続税は、原則として、法定納期限から5年で時効にかかり、納付義務がなくなります(相続税の法定納期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月)。
したがって、法定納期限から原則として5年経てば、税務調査が入ることも、追徴課税を受けることもありませんし、自ら修正申告や期限後申告をする必要もありません(しようとしても受け付けてもらえません)。
ただし、偽りその他不正の行為により税額を免れた場合は、時効期間が7年になります。
なお、「偽りその他不正の行為」は積極的な隠ぺい行為を指し、単に相続税を申告しなかったというだけでは、これに該当しないものと解されています。
追徴課税を受ける割合
相続税申告をした人の中で追徴課税を受けた人の割合は、約12.3%です。
相続税申告をしなかった人の中で追徴課税を受けた人の割合は、約0.1%です。
割合だけ見ると、申告しない方が追徴課税を受ける可能性が低くなると誤解される方がいらっしゃるかもしれませんが、そういうことではありません。
相続税申告をしなかった人の大多数は、課税価格の合計額が基礎控除額以下で相続税の対象外なので、追徴課税の受ける人の割合が低くなるのです。
課税価格の合計額が基礎控除額を超えているにもかかわらず申告しなかったとしたら、極めて高い割合で追徴課税を受けることになるでしょう。
また、無申告の場合は、加算税の税率が高くなるので、追徴課税の加算税の税額が高くなります。
追徴課税はいくら取られる?
追徴課税の税額は、「相続税の不足額+附帯税の税額」で計算します。
追徴課税の税額がいくらになるかは、個別に計算しなければなりませんが、ここでは、平均額をご紹介しておきます。
追徴課税の平均額は、約601万円です。
内訳は、相続税の不足分が約517万円、加算税が約84万円です。
また、ケースごとの追徴課税の平均額は下の表のとおりです。なお、「簡易な接触」とは、税務署が、申告漏れ、計算誤り等がある申告を是正する目的で、申告者に対して実施している、文書、電話による連絡又は来署依頼による面接などの接触のことをいいます。
ケース | 追徴課税の平均額 |
---|---|
申告後に税務調査が入った場合 |
約663万円 ※内訳 相続税の不足分:約571万円 加算税:約92万円 |
申告後に「簡易な接触」があった場合 |
約192万円 ※内訳 相続税の不足分:約184万円 加算税:約9万円 |
無申告で税務調査が入った場合 |
約820万円 ※内訳 相続税の不足分:約666万円 加算税:約154万円 |
合計 |
約601万円 ※内訳 相続税の不足分:517万円 加算税:84万円 |
さらに刑事罰が科させることがある
偽りその他不正の行為によって相続税を免れた者や、正当な事由がなくて期限内に申告しなかった者等は、刑事告発され、懲役又は罰金に処せられる可能性があります。
もっとも、これらに該当した場合でも、告発されるケースは少なく(相続税では年平均2件ほど)、よほど悪質な場合に限られます。
追徴課税が課せられる事案のうち、隠ぺい又は仮装によって相続税を免れたケースに重加算税が課せられ、その中でも極めて悪質なケースが告発されるかたちになっています。
なお、告発されるケースでは、通常、任意の税務調査ではなく、国税局査察部(通称「マルサ」)による強制捜査が行われます。
強制調査が入ると、約7割が告発されています。脱税で告発されると、統計上、ほぼ100%の確率で、起訴、有罪判決に至っています。
強制捜査が入った時点で、告発され、逮捕・起訴されることを視野に入れて、税理士だけなく、弁護士に相談することをお勧めします。
まとめ
以上、相続税の追徴課税について説明しました。
追徴課税を受けると、附帯税がかかってしましますし、その過程において税務調査の対応等の手間が取られることになります。
追徴課税を受けることのないように、相続税申告は、あらかじめ相続税に強い税理士に依頼することをお勧めします。
また、既に申告済み又は無申告で期限が過ぎた場合で、税務署から接触があった場合や申告漏れ等の不安がある場合は、可能な限り早期に税理士に相談することを強くお勧めします。税理士をお探しの方は、お気軽にご連絡ください。
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