相続税の特例を完全解説!使える特例は全て使って徹底的に節税
本記事は、いい相続の姉妹サイト「遺産相続弁護士ガイド」で2020年7月27日に公開された記事を再編集したものです。
相続税には、様々な特例が用意されています。
特例の適用を受けることによって、相続税をかからなくしたり、税額を低く抑えたり、納税の猶予を受けることができます。
この記事では、相続税の特例を活用して徹底的に節税する方法について説明します。
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相続税の特例
相続税を計算するルールには、相続人が誰でも一律に適用できるものと、一定の要件を満たす場合のみ適用できる特例があります。
一定の要件を満たす場合のみ適用できる特例は、次のように分類することができます。- 税額から控除できるもの
- 税額計算の基となる財産の価額を減額できるもの
- 取得した財産の価額から控除できるもの
- 納税の猶予又は免除を受けられるもの
以下、それぞれについて説明します。
税額を控除できる特例
相続税の税額を計算する際に一定の金額を控除できる特例には、次のものがあります。- 配偶者の税額軽減(いわゆる配偶者控除)
- 未成年者控除
- 障害者控除
- 相次相続控除
- 外国税額控除
- 医療法人持分税額控除
以下、それぞれについて、説明します。
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配偶者の税額軽減(配偶者控除)
「配偶者の税額軽減」は、配偶者だけが利用できる制度で、「相続税の配偶者控除」と呼ばれることもあります。
配偶者が遺産分割や遺贈により取得した遺産額から、配偶者の法定相続分相当額か1億6000万円のいずれか大きい方の金額を差し引いて、残った金額にのみ課税するという制度です。
差し引く金額の方が大きい場合は、課税されません。
つまり、法定相続分の範囲内で遺産分割や遺贈を受ける分においては、配偶者は相続税が課されることはないのです。
法定相続分を超えて遺産を取得した場合にのみ、相続税が課される可能性が生じますが、それでも1億6000万円までは課税されないので、ほとんどの家庭では配偶者はまったく課税されないということになります。
配偶者控除を受けることができる配偶者は、相続開始の時点(被相続人が亡くなった時点)において、法律上婚姻関係にあった配偶者に限られます。
そのため、内縁関係にあった(事実婚状態にあった)事実上の配偶者や、被相続人が亡くなる前に離婚届を提出してしまった元配偶者は、仮に、遺言等によって財産を相続したとしても、この配偶者控除を利用することはできません。
逆に、法律上婚姻関係にあればよいので、別居しているとか、離婚調停中であるような場合でも、この配偶者控除の制度を利用することは可能です。
なお、配偶者の税額軽減の適用を受けた結果、相続税額が0円になる場合がありますが、その場合でも、相続税の申告は必要です。
配偶者控除を受けるためには、相続税の申告書において、税額軽減の明細を記載する方法で行います。
そのうえで、相続税の申告書を提出する際に、遺言書の写しや遺産分割協議書の写しなど、配偶者が取得した財産がわかる書類を添付する必要があります。
そのため、原則として、相続税の申告期限までに、遺産分割等が終了している必要がありますが、仮に、相続税の申告期限までに遺産分割等が終了していない場合は、相続税の申告書に、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付した上でいったん相続税の申告を行い、その後申告期限から3年以内に分割をした場合には、配偶者控除の対象とすることが可能です。
未成年者控除
未成年者の税額控除は、相続人が未成年者の場合(一定の要件を満たす必要があります)に利用できる税の軽減制度です。
控除額は年齢によって異なり、年齢が低い方が控除額が大きくなるようになっています。
具体的には、次の式で計算できます。
10万円 ×(18歳− 相続時の満年齢) |
例えば、相続時の年齢が満10歳だった場合は、次のように計算します。
10万円 ×(18歳−10歳)=800万円
なお、計算に用いるのは、相続時の「満年齢」なので、10歳になったばかりでも、10歳11か月でも、同じ10歳として計算します。
控除額が相続税額よりも大きい場合は、差額をその未成年者の扶養義務者の相続税額から控除します。
なお、以前も未成年者の税額控除を受けている場合は、控除額が制限されることがあります。
障害者控除
障害者の税額控除は、相続人が85歳未満の障害者の場合(一定の要件を満たす必要があります)に、相続税額から一定の控除額を差し引く制度です。
控除額は次の計算式で算出することができます。
10万円 ×(85歳− 相続時の満年齢) |
なお、特別障害者(重度の障害のある方)の場合は、上式の「10万円」を「20万円」に変更して計算します。
控除額が相続税額よりも大きい場合は、差額をその障害者の扶養義務者の相続税額から控除します。
なお、以前も障害者の税額控除を受けている場合は、控除額が制限されることがあります。
相次相続控除
相次相続控除は、今回の相続開始前10年以内に、被相続人が相続や遺贈などによって財産を取得し相続税が課されていた場合に、その被相続人から相続や遺贈などによって財産を取得した人の相続税額から一定の金額を控除する制度です。
相次相続控除の額は、前回の相続において課税された相続税額のうち、1年につき10%の割合で逓減した金額です。
相次相続控除額は次の式で計算することができます。
A × C ÷(B − A)※× D ÷ C ×(10 − E) ÷ 10 |
- A:二次相続の被相続人の一次相続における相続税額
- B:二次相続の被相続人の一次相続における純資産価額
- C:二次相続における純資産価額の合計額
- D:二次相続における相次相続控除適用者の純資産価額
- E:一次相続の開始から二次相続の開始までの経過年数(端数切捨て)
外国税額控除
外国税額控除とは、外国に納めた相続税額のうち、一定の要件を満たすものについて、日本で課せられる税額から控除する制度です。
外国税額控除については、一般の人が適用可否を判断するのは難しいでしょうから、税理士に相談することをお勧めします。
医療法人持分税額控除
相続人等が、被相続人から相続又は遺贈により医療法人の持分を取得した場合において、その医療法人が相続開始の時において認定医療法人(相続税の申告期限又は令和2年9月30日のいずれか早い日までに厚生労働大臣の認定を受けた医療法人を含みます。)であり、かつ、相続人等が相続開始の時から相続税の申告期限までの間に、認定医療<法人の持分の全部又は一部を放棄したとき、その他一定のときは、その相続人等の相続税額から、放棄相当相続税額を控除します。
詳しくは、国税庁ウェブサイトのこちらのページをご参照ください。
税額計算の基となる財産の価額を減額できる特例
相続税の税額を計算する際の基となる財産の価額を減額できる特例には、次のようなものがあります。- 小規模宅地等の特例
- 特定計画山林の特例
- 郵便局舎の敷地に係る相続税の課税の特例
「小規模宅地等の特例」については、対象となる方が比較的多く、大幅な節税につながることも多く重要なので、ご紹介します。
小規模宅地等の特例とは、被相続人(亡くなった人)の自宅の土地や、被相続人が事業に使っていた土地を相続する場合に、一定の条件を満たせば、相続税を計算する際の土地の評価額を最大8割引にしてくれる制度です。
なお、土地の相続税評価額を算出する際に、評価額を減額できる細かなルールはたくさんあります。
相続財産の中に土地が含まれる場合は、相続税に精通した税理士に相談することで相続税が安くなるケースが少なくないので、相談することを強くお勧めします。
取得した財産の価額から控除できる制度
取得した財産の価額から控除できる制度には、次のようなものがあります。- 債務控除
- 葬式費用控除
債務控除
差し引くことができる債務は、被相続人(亡くなって財産を残す人)が死亡したときにあった債務で確実と認められるもので、次のようなものが含まれます。
- 借入金の返済義務
- 未払い金の支払い義務
一方、被相続人が生前に購入したお墓の未払代金など非課税財産に関する債務は、遺産総額から差し引くことはできません。
葬式費用控除
差し引くことができる葬式費用には、次のようなものが含まれます。- 葬式や葬送に際し、又はこれらの前において、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用(仮葬式と本葬式を行ったときにはその両方にかかった費用)
- 遺体や遺骨の回送にかかった費用
- 葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(例えば、お通夜などにかかった費用)
- 葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用
- 死体の捜索又は死体や遺骨の運搬にかかった費用
一方、次のような費用は含まれません。
- 香典返しのためにかかった費用
- 墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用
- 初七日や法事などのためにかかった費用
納税の猶予又は免除を受けられる特例
納税の猶予又は免除を受けられる特例には、次のようなものがあります。
- 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例
- 個人の事業用資産についての相続税の納税猶予及び免除の特例
- 山林を相続した場合の納税猶予の特例
- 農地等についての納税猶予の適用を受ける特例
「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例」は、「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」と併せて「事業承継税制」と呼ばれており、非上場会社の事業承継を税制面からサポートするもので、非上場企業の経営者や後継者は、絶対に知っておくべき特例です。
誰でも一律に適用できる控除制度
誰でも一律に適用できる控除は、次のように分類することができます。
- 取得した財産の価額から控除できるもの
- 相続税の税額から控除できるもの
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以下、それぞれについて説明します。
取得した財産の価額から控除できる制度
取得した財産の価額から控除できる制度には、「基礎控除」があります。
相続税の基礎控除とは、遺産額(課税価格)に税率を乗じる(掛ける)等して相続税額を算出する前に、遺産額から控除する(差し引く)金額のことです。
基礎控除があることによって、遺産額が一定額以下の場合は、相続税が課されません。
相続税の基礎控除額は、「3000万円 + 法定相続人の数 × 600万円」で計算します。
相続税の税額から控除できる制度
相続税の税額から控除できる制度には次のものがあります。- 暦年課税分の贈与税額控除
- 相続時精算課税分の贈与税額相当額の控除
以下、それぞれについて説明します。
暦年課税分の贈与税額控除
贈与を受けた財産については、原則として、贈与税が課されます(暦年課税の場合)
しかし、相続又は遺贈により財産を取得した者に対して、亡くなる前の3年間に行われた贈与は、相続税の計算に足し戻されるため、相続税が課されます(生前贈与加算)。
既に贈与税を支払っている場合は、相続税も課されることとなり、贈与税と相続税の二重課税となってしまいます。そこで、相続税から既に支払った贈与税の金額を差し引いた金額を相続税として納めればよいこととなっています。
ただし、贈与税として支払った金額が、課されるべき相続税よりも大きかったとしても、差額の贈与税は還付されません。
ちなみに、住宅取得等資金の贈与の特例を利用しての贈与の場合は、亡くなる前3年以内の贈与であっても、贈与税非課税とされた金額については相続税も非課税となります(つまり、足し戻しの計算は行なわれません。
相続時精算課税分の贈与税額相当額の控除
相続時精算課税を選択した者に係る相続税額は、相続時精算課税に係る贈与者が亡くなった時に、それまでに贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額と相続や遺贈により取得した財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して算出します。
その際、相続税額から控除しきれない相続時精算課税に係る贈与税相当額については、相続税の申告をすることにより還付を受けることができます。
なお、相続財産と合算する贈与財産の価額は、贈与時の価額とされています。
▼まずはお電話で相続の相談をしてみませんか?▼譲渡所得に関する特例
相続税に関する特例ではありませんが、相続に関連する特例に、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」(取得費加算の特例)があります。
この特例は、相続により取得した土地、建物、株式などを、一定期間内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができるという特例です。
▼忘れている相続手続きはありませんか?▼まとめ
以上、相続税の特例について説明しました。
相続税は、ここで紹介したような特例や控除の制度や、財産の価額を減額できるルールを適用することによって、大幅に減額することが可能な場合があります。
特例を徹底的に利用して、相続税をなるべく節税するためには、相続税に精通した税理士に相談することをお勧めします。税理士をお探しの方はお気軽にご相談ください。
▼実際に「いい相続」を利用して、税理士に相続税申告を依頼した方のインタビューはこちら
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