相続税が払えない場合の対処法を解説!延納や物納など
相続財産には相続税がかかります。しかし相続財産の価値のほとんどが、現金や預貯金の以外の財産で占められていた場合は、相続税を支払えなくなってしまうことがあります。
この記事ではそのような場合の対処法について、わかりやすく説明します。
相続税を安くする方法について税理士に相談
まず先に検討すべきは、相続税を安くする方法について、相続税に強い税理士に相談することです。
相続税に強い税理士に依頼すると、相続税の税額を大幅に安くすることができる場合があります。
なぜなら、特に土地については、その形状等に応じて様々な減額評価の方法があり、利用できる減額制度を漏れなく利用することが大きなポイントになります。他にも配偶者控除などの控除や特例を適用できれば、相続税額が抑えられる可能性があります。
納税猶予の特例の適用を受けられるかを確認
自社株(相続人が後継者の場合)や農地にかかる相続税は納税の猶予や免除を受けられることがあります。
非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等(事業承継制度)
事業承継税制は、事業承継にかかる相続税や贈与税の支払いを猶予する制度です。平成30年には制度が改正され、要件が大幅に緩和されました(特例措置の創設)。
従来は納税猶予の対象が発行済株式の3分の2の割合までだったのに対し、特例措置では上限を撤廃し、発行済の全株式が猶予の対象となりました。その結果、事業承継をした段階では相続税を支払うことなく事業承継をおこなうことが可能となりました。ただし、事業承継税制は相続税が免除になる制度ではなく、あくまで猶予をする制度です。免除になるためには要件を満たす必要があります。
農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例
農業を営んでいた被相続人(亡くなった人)等から相続や遺贈(遺言によって財産を取得させること)によって農地を取得し、その人も農業を営む場合等に、相続税の一部又は全部の納税が猶予され、さらに一定の要件を満たすと猶予中の相続税の納税が免除されるというものです。
相続財産の売却
相続税に強い税理士に税額を出し直してもらっても相続税が払えない場合は、相続財産の売却を検討しましょう。
不動産の場合は、通常、買い手が見つかるまでに日数がかかります。相続税の申告・納付の期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内となっています。
期限までに買い手を見つけて、代金を受領しなければならないことを考えると、あまり猶予はありません。早めに不動産会社に相談したほうが良いでしょう。
また、焦って実勢価格よりも大幅に安く売却してしまうのも勿体ないので、無理に売却せずに、税理士や不動産会社とよく相談の上、売却価格を決定しましょう。
なお、不動産を売却する場合は、相続登記した後でなければ売却できません。
また、抵当権が付いている場合は、債務を弁済する等して抵当権を抹消しなければ買い手が付かないでしょう。
借金する
相続税の納付資金を金融機関等から借入れるという方法もあります。
延納とどちらが得になるかは、税理士に相談のうえ、判断した方がよいですが、銀行のような金利の比較的低い金融機関から借入れできる場合は、通常、延納による利子税よりも負担が軽いでしょう。
延納
相続税には延納の制度があります。延納とは、本来、一括で払うべき税金を、最長20年の分割払いにすることをいいます。
納付期限までに財産が売却する目途が立たず、借り入れも難しい場合は延納の利用を検討すべきでしょう。相続税の延納は、次に掲げる全ての要件を満たす場合に、申請することができます。
- 相続税額が10万円を超えること
- 金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であること
- 延納税額及び利子税の額に相当する担保を提供すること
※ただし、延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合には担保を提供する必要はありません。 - 延納申請に係る相続税の納期限又は納付すべき日(延納申請期限)までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること
延納の担保になる財産
延納の担保として提供できる財産の種類は、次に掲げるものに限られます。
なお、相続又は遺贈により取得した財産に限らず、相続人の固有の財産や共同相続人又は第三者が所有している財産であっても担保として提供することができます。
- 国債及び地方債
- 社債その他の有価証券で税務署長が確実と認めるもの
- 土地
- 建物、立木、登記される船舶などで、保険に附したもの
- 鉄道財団、工場財団など
- 税務署長が確実と認める保証人の保証
税務署長が延納の許可をする場合において、延納申請者の提供する担保が適当でないと認めるときには、その変更を求めることとなります。
延納の利子税
延納には利子税がかかります。
利子税の年利はその人の相続財産の価額の合計額のうちに占める不動産等の価額の割合によってによって変動しますが、2019年の年利は0.2%〜1.3%となっています。
金融機関での借入とどちらが得になるかは、税理士と相談の上で判断した方がよいでしょう。
物納
物納とは、金銭で相続税を納付することが困難な場合に、相続した財産(土地・建物・有価証券等)で納税することをいいます。
物納は、延納によっても金銭で納付することを困難とする事由がある場合でなければ利用できません。
また、財産の生前贈与を受けて相続時精算課税や非上場株式の納税猶予を適用している場合には、それらの適用対象となっている財産は、物納の対象とすることはできません。
物納する財産の収納価額は原則として相続税の課税価格計算の基礎となった価額になります。
土地の相続税評価額は実勢価格の8割程度になっており、また、建物の相続税評価額も、通常、実勢価格より低くなるため、その意味では、物納するよりも、売却して金銭で納付した方が得という見方ができます。
しかし、売却する場合には、次のようなデメリットもあります。
- 譲渡所得が生じた場合は、税金がかかる
- 相続税の納付資金にするために、期限までに、売却して代金を受領しておかなければならない
したがって、どちらの手段を採るべきかについては、税理士等の専門家に相談する等して慎重に検討した方がよいでしょう。
相続放棄
相続放棄とは、相続発生の際に相続財産となる資産や負債などの権利や義務の一切を引き継がず放棄することです。相続放棄をすると、相続税を払わなくてよくなりますが、現金や預貯金などの財産ももらえなくなるため、他に方法がないときの最終手段と言えるかもしれません。
他に、きっと選択肢があるはずですので、早まって相続放棄をせずに、相続税に精通した税理士に相談することを強くお勧めします。
まとめ
以上、相続税が払えない場合の対処法について説明しました。
相続税の納付期限まで相続開始から10か月しかありませんから、まずは、出来る限り早めに、一度、税理士に相談することが重要です。
相続に強い税理士に相談することで、相続税が減る可能性もあります。まずは「いい相続」までお問い合わせください。
▼実際に「いい相続」を利用して、税理士に相続税申告を依頼した方のインタビューはこちら
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