遺産相続の手続き費用。司法書士代行費用の相場と自分でやる場合
本記事は、いい相続の姉妹サイト「遺産相続弁護士ガイド」で2020年4月6日に公開された記事を再編集したものです。
遺産相続の手続きにはいくらぐらいの費用がかかるのでしょうか?
司法書士等の専門家に依頼する場合にかかる費用と、自分で手続きする場合にもかかる費用について、それぞれ説明します。
是非、参考にしてください。
遺産相続の手続き費用
「相続手続き」という言葉は法律用語ではないので、はっきりとした定義はありません。
この記事では、相続人が相続財産を自分のものとして使用収益するための手続きのことを「相続手続き」と呼びます。
相続手続きが必要な財産の種類には、主に次の4つがあります。
- 不動産
- 預貯金
- 有価証券(株式等)
- 自動車
以下、それぞれの費用ついて説明します。
不動産の相続手続き費用
不動産の相続手続きについて説明したうえで、費用について説明します。
不動産の相続手続きは登記
不動産(土地や建物)には登記という制度があります。
不動産登記制度は、不動産の所在・面積のほか、所有者の住所・氏名などを公の帳簿(登記簿)に記載し、これを一般公開することにより、権利関係などの状況が誰にでもわかるようにし、取引の安全と円滑をはかるためのものです。
不動産を相続した際の登記(相続登記)は、令和6年4月1日より義務化が施行されます。相続等により所有権を取得したことを知った日から3年以内に、正当な理由がないのに申請を怠ったとき、10万円以下の過料の対象となります。
相続登記をしないでいると次のようなリスクがあります。速やかに相続登記の手続きをおこないましょう。
- 他の相続人の持分を差し押さえられたり、売却されたりするおそれがある
- 不動産の売却・担保設定ができない
- 権利関係が複雑になる
- 次の相続時に2倍の費用がかかる可能性がある
相続登記の費用
相続登記にかかる費用は、次の3つに分類することができます。
- 司法書士報酬
- 必要書類の交付手数料
- 登録免許税
登記は、自分で手続きすることも不可能ではありませんが、司法書士に依頼することが一般的であり、法務局(登記所)で相談しても手取り足取り教えてもらえるわけではく、自分でやろうと思って手間と時間をかけたものの、結局断念して司法書士に依頼するケースも少なくないので、余程時間と自信がある方以外は、始めから司法書士に依頼した方が無難でしょう。
なお、必要経費と登録免許税は、司法書士に依頼した場合でも、自分で手続した場合でも、必要な費用です。
以下、それぞれの費用について説明します。
司法書士報酬
相続登記を一般の方が自分でするのは大変であり、手間やミスをするリスクを考えると、通常は、司法書士に依頼することになるでしょう。
司法書士報酬は、司法書士によっても異なりますし、不動産の数・評価額・地域等によっても異なります。
相続登記や周辺事務に精通した司法書士にいくつか問い合わせて料金を確認するとよいでしょう。司法書士に依頼する場合、通常、次のような周辺事務も併せて依頼することができます。
- 不動産の調査
- 相続人調査や戸籍謄本等の収集
- 法定相続情報一覧図の作成や法定相続情報証明制度利用申出の代行
- 遺産分割協議書の作成
周辺事務も併せて依頼を検討する場合は、どこまでの対応が料金に含まれているのか確認しましょう。
相場としては、登記のみの場合は、6万〜9万円程度、周辺事務も併せて依頼する場合は、9万〜15万円程度となるようです。
必要書類の交付手数料、作成費用
登記の必要書類の中には、その交付を受けるために手数料が必要なものと、作成しなければならないものがあります。
交付を受けるためには手数料が必要なものとしては、例えば、次のものが挙げられます。
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
- 相続登記申請書
- 住所証明情報
- 固定資産税評価証明書
これらの書類の交付を受けるために1通ごとに数百円の手数料がかかります。
必要書類を揃える費用を合計すると、通常、数千〜3万円ほどになります。
相続登記の必要書類は、他の相続手続きとも共通するものが多いので、法定相続情報証明制度や原本還付制度を利用することで、相続手続きの必要経費を安くすることができます。
また、作成しなければならないものとしては、例えば、遺産分割協議書(遺産分割によって不動産を取得した場合)が挙げられます。
このような書類の作成を専門家に依頼する場合は、専門家への報酬が必要になります。
もっとも、相続登記を司法書士に依頼する場合は、遺産分割協議書等の必要書類の作成費用込みの料金設定になっていることが多いです(前述の登記簿謄本等の交付手数料の実費は別途必要)。
登録免許税
登記の際には、登録免許税という税金がかかってきます。相続登記の登録免許税は、「不動産の価額の0.4%」です。
不動産の価額は下3桁を切り捨てて計算します。
例えば、不動産の価額が111万1,111円であれば、111万1,000円として計算します。
この場合の登録免許税の税額は、「111万1,000円×0.4%=4,444円」となりますが、税額の下2桁は切り捨てて計算します。
そうすると、税額は4,400円ということになります。なお、このようにして計算した税額が1,000円未満(0円を含む)になった場合は、税額は1,000円になります。
課税標準となる「不動産の価額」は、市町村役場(東京23区は都税事務所)で管理している固定資産課税台帳の価格(固定資産税評価額)がある場合は、その価格です。
市町村役場(または都税事務所)で証明書を発行しています。
登録免許税には免税措置がありますので、適用を受けられないか検討してみるとよいでしょう。
なお、登記手続きを司法書士に依頼する場合、登録免許税の計算は司法書士がしてくれるため、自分でする必要はありません。
相続登記の費用を安くする方法
相続登記の費用を安くする方法として、次の方法が考えられます。
- 安い司法書士を探す、不動産以外の相続手続きも併せて依頼する
- 自分で手続きをする
- 法定相続情報証明制度や原本還付制度によって書類収集費用を節約
- 登録免許税の免税制度の利用
以下、それぞれについて説明します。
安い司法書士を探す、不動産以外の相続手続きも併せて依頼する
前述のとおり、司法書士報酬は司法書士によって異なるため、いくつかの司法書士事務所に問い合わせて、比較的安価に対応してくれるところに依頼することで、費用を節約することができるでしょう。
必要書類の収集や遺産分割協議書の作成等の周辺事務も併せて依頼を検討する場合は、どこまでの対応が料金に含まれているのか確認しましょう。
また、司法書士の中には、不動産以外の相続手続きも一括して対応している事務所があります。
不動産とそれ以外とを別々に依頼するよりも併せて依頼した方がトータルの費用が抑えられる傾向にあります。
自分で手続きをする
司法書士に依頼せずに自分で相続登記の手続きをする場合は、司法書士報酬を節約することができます。
しかし、自分で手続すると、受けられるはずの登録免許税の免税制度の適用漏れが生じたり、必要書類の収集や登記申請書の作成に膨大な時間と手間がかかってしまい、あまりお勧めはしません。
登録免許税の免税制度の利用
続登記の登録免許税の税額が免除される免税措置には、次の2つがあります。
- 相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合の登録免許税の免税措置
- 市街化区域外の土地で市町村の行政目的のため相続登記の促進を特に図る必要があるものとして法務大臣が指定する土地のうち、不動産の価額が10万円以下の土地に係る登録免許税の免税措置
リンク先の記事を読んでも適用を受けられるかどうか分からない場合は、司法書士に相談することをお勧めします。
司法書士に相続登記を依頼する場合は、免税制度を受けられるかどうかも司法書士が判断してくれるため、自分で学習しなくても大丈夫です。
法定相続情報証明制度や原本還付制度によって書類収集費用を節約
法定相続情報証明制度とは、亡くなった人の相続人は誰で、各相続人は亡くなった人とそれぞれどのような間柄なのかという情報を、戸籍謄本等の代わりに証明する制度です。
被相続人が、不動産を多数所有していたり、銀行口座を多数開設している場合は、都度、戸籍謄本等を用意するやり方では、手間も取得費用もかさみます。
取得費用を節約するために、ひとつの手続きが終わって、原本の還付を受けてから次の手続きを行う方法もありますが、それではすべての手続きが終わるまでに大変な期間が必要になります。
法定相続情報証明制度を利用すれば、戸籍謄本等は利用申出時に一度だけ用意すればよく、かつ、並行して複数の手続きを進められます。
また、法定相続情報証明制度の対象となる書類は戸籍謄本等のみで、住民票、住民票の除票、印鑑登録証明書、遺産分割協議書等の書類は対象外です。
これらの書類は、原本の還付を受けることによって、取得費用や手間を節約することができます。
還付を受けたい場合は、還付を受けたい書類のコピーの余白部分に「原本と相違ない」旨を記載のうえ、申請者の記名押印をします。
この押印に用いる印は、その手続きの申請書(登記の場合は登記申請書)に押印したものと同じものでなければなりません。
原本還付を受けたい書類が複数枚ある場合は、そのすべてに「原本に相違ない」旨の記載と申請者の記名押印をするか、ステープラー(ホチキス)等で綴じて、一番上の書類にだけ「原本に相違ない」旨の記載と記名押印をして、他の書類には契印をする方法があります。
なお、司法書士に相続登記を依頼する場合は、法定相続情報証明制度や原本還付制度の利用についても、併せて司法書士に依頼することができるため、自分で制度の利用方法を学習する必要はありません。
▼あなたに必要な相続手続き1分で診断できます。▼預貯金の相続手続き費用
預貯金の相続手続き費用としては、次のようなものが挙げられます。
- 手続き代行手数料
- 必要書類の交付手数料、作成費用
預貯金の相続手続き代行は、行政書士、弁護士、司法書士等の専門家が1件2万〜10万円程度の費用で行っています。
代行手数料は専門家に手続きの代行を依頼する場合の手数料で、自分で手続きする場合は不要です。
相続財産が預貯金だけであれば自分で手続きしてもそれほど大きな手間ではないでしょうが、相続財産が複数ある場合は、一括して代行を依頼することをおすすめします。
相続財産に不動産が含まれる場合は司法書士に、不動産が含まれない場合は行政書士に、一括して手続きを依頼すると、最も費用が抑えられるのではないかと思います(割安なパッケージプランを用意している司法書士・行政書士を利用した場合)。
有価証券の相続手続き費用
株式等の有価証券の相続手続き費用としては、預貯金と同様、次のようなものが挙げられます。
- 手続き代行手数料
- 必要書類の交付手数料、作成費用
有価証券の相続手続き代行については、行政書士、司法書士等の専門家が1件2万〜10万円程度の費用で行っており、相続財産に不動産が含まれる場合は司法書士に、不動産が含まれない場合は行政書士に、一括して手続きを依頼すると、最も費用が抑えられるのではないかと思います(割安なパッケージプランを用意している司法書士・行政書士を利用した場合)。
自動車の相続手続き費用
名義変更には、以下の費用がかかります。
- 移転登録手数料:500円
- 車庫証明取得費用:2500円〜3500円(都道府県ごとに異なる)
- ナンバープレート代:1500円前後(地域によって異なる。なお、ナンバー変更がない場合は不要)
- 自動車取得税(車種やグレード、経過年数によって異なる)
- 名義変更代行料(自分で手続する場合は不要)
自動車の相続手続き代行についても同様に、行政書士、司法書士等の専門家が1件2万〜5万円程度の費用で行っており、相続財産に不動産が含まれる場合は司法書士に、不動産が含まれない場合は行政書士に、一括して手続きを依頼すると、最も費用が抑えられるのではないかと思います(割安なパッケージプランを用意している司法書士・行政書士を利用した場合)。
相続手続きの代行をまとめて依頼した場合の費用(報酬)
相続手続きの代行費用は事務所によって異なります。
料金体系としては、1件いくらというかたちで手続きごとに計算する方式、遺産額に応じた料金体系になっている場合、固定料金になっている場合等があります。
件数が少なく遺産額が多い場合は手続きごとに計算する方式が、件数は多いが遺産額が少ない場合は遺産額に応じた料金方式が、件数も遺産額も少なくない場合は固定料金方式が割安になる傾向にあります。
固定料金方式では、20万円程度で請けてくれる専門家もあるようです。
パッケージ料金を設定している専門家に依頼する場合は、パッケージの中に含まれる業務を確認するようにしましょう。思わぬ追加料金がかかることもあります。
事前に明確な料金体系を提示してくれる専門家に依頼するべきでしょう。
まとめ
以上、遺産相続の手続き費用について説明しました。
相続手続きは、手続きが分かりにくく手間もかかるので、専門家を上手に活用することをおすすめします。
▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に相続手続きを依頼した方のインタビューはこちら
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