「根抵当権」が付いている不動産を相続する際の注意点は?相続放棄したほうがよい?
相続不動産に根抵当権が設定されていた場合は、どうすればよいのでしょうか?根抵当権とは、担保する額の極度額を設定し、その上限を超えない範囲で何度でも融資を受けることができる権利のことを言います。
この時にどのような選択肢があり、それぞれ、どのような場合に選択するのでしょうか?
根抵当権のついた不動産とは
根抵当権付き不動産とは、担保する額の上限を超えない範囲で何度でも融資を受けられる設定がされている不動産を言います。相続財産に根抵当権付き不動産があった倍、まずは相続するかしないかを考えます。
相続不動産に根抵当権が設定されていた場合の選択肢
相続不動産に根抵当権が設定されていた場合に、相続人が採ることできる主な選択肢と、その選択をすべき主なケース等についてまとめると、下の表のようになります。
選択肢 | 想定されるケース | 手続き | 手続き期限 |
---|---|---|---|
相続放棄 | プラスの財産の総額よりもマイナスの財産の総額の方が大きい場合 | 相続放棄の申述 | 自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内 |
相続する | 被相続人が個人事業主であり、相続人がその事業を承継するために新たに資金が必要な場合等、相続人において新規借入が必要な場合 | 次の3つすべての登記 ● 相続人への所有権移転登記 ● 相続人全員を債務者とする根抵当権の債務者変更登記 ● 指定債務者の合意の登記 |
相続開始後6か月以内 |
元本確定 | 相続人において新規借入が不要な場合 | 不要 | 相続開始後6か月以内に指定債務者の合意の登記をしない場合は相続開始時に元本が確定したものとみなされる |
根抵当権の抹消 | ローンを完済していて、当該不動産を売却したいまたは他のローンを利用したい | 抹消登記 | 無期限 ※売却や他のローン申込の予定がある場合はそれまでに行う |
相続放棄
相続放棄とは、相続人が被相続人(亡くなった人)の権利や義務を一切承継しないことをいいます。
つまり、相続放棄をすると、根抵当権付き不動産やその被担保債務に限らず、すべての財産・債務を承継しません。
したがって、相続放棄をすべきかどうかを検討するに当たっては、相続財産全体において、プラスの財産の総額とマイナスの財産の総額を比較します(当然ながら、マイナスの財産の総額の方が大きい場合は、相続放棄をした方が相続人にとって得です)。
そして、相続放棄をするかを判断するには、相続財産について調査し、その全容を把握しておくことをおすすめします。
相続放棄ができる期間
相続放棄ができる期間は、原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です。
「相続の開始」とありますが、相続は死亡によって開始するので、要するに、被相続人の死亡を知った時から3か月以内が相続放棄することのできる期間です。
また、「自己のために」とありますが、これは相続順位の先順位者全員が相続放棄をしたことによって自分が相続人となった場合などに特に関係してくる文言で、この場合は先順位者全員が相続放棄をしたことを知った時が「自己のために相続の開始があったことを知った時」となります。
相続放棄ができる期間は、相続人等の請求によって家庭裁判所において伸長(延長)することができます。
相続する
被相続人が個人事業主で相続人がその事業を承継する場合は、承継後に事業資金の借入が必要になることがあるでしょう。
借入が必要になる場合に備えて根抵当権が設定されたままにしておくと、事業を承継する相続人が根抵当権者から極度額の範囲内で借入をすることができます。
相続後も根抵当権が設定されたままにするためには、次の3つの登記が必要です。
- 相続人への所有権移転登記
- 相続人全員を債務者とする根抵当権の債務者変更登記
- 指定債務者の合意の登記
相続開始後6か月以内にこれらすべての登記を完了しなければ、相続後も根抵当権を設定したままにしておくことはできません。
通常の相続登記と違って期限があり、手続内容も複雑であるため、司法書士などの専門家に依頼することをお勧めします。
元本確定
相続開始後6か月以内に合意の登記を完了しなかったときは、相続開始時に元本が確定したものとみなされます。手続きは特に必要ありません。元本確定とは、根抵当権で担保される債権を元本確定時(債務者に相続が発生した場合は相続時)に残っている債権に限定することです。
根抵当権の元本が確定すると、その根抵当権は抵当権となります。
根抵当権の場合は一つの契約の中で極度額の範囲内で何度でも借入と返済を繰り返すことができますが、抵当権の場合は一つの契約の中で追加の借入をすることはできません。
前述のとおり被相続人の個人事業を承継した場合等のように繰り返し借入の必要性が生じる場合は根抵当権が設定されたままにしておくと便利ですが、そうでない場合は、相続時に元本を確定させ、完済後に根抵当権を抹消できるようにしておいた方がよいでしょう。
元本を確定させなければ、債務を完済して根抵当権を抹消することもできません。
根抵当権を抹消しなければ、当該不動産を売却する場合に買い手が付かず価格が安くなってしまう場合がありますし、他のローンの審査を組む際に審査に通りにくくなります。
根抵当権の抹消
基本的に根抵当権付きの不動産は売却することができません。このため不動産を売却したいときは抹消手続きをおこなうこととなります。
また、根抵当権が残ったままだと他のローンを組もうとしたときに審査に通りにくくなります。
相続時に既に被担保債務が完済されている状態であれば、抹消登記をすることで根抵当権を抹消させることができます。
被担保債務が完済されていない場合は、まず、相続開始後6か月待って元本を確定させ、完済して抹消登記をします。抹消登記については必要書類を集めるのに時間がかかるため、司法書士に依頼するとよいでしょう。
よくある質問
以上、根抵当権付き不動産の相続について説明しました。最後によくある質問とその回答を示します。
根抵当権付き不動産を相続したらどうすればいい?
根抵当権付き不動産を相続した場合の選択肢として、(1)相続放棄、(2)合意の登記(相続後の根抵当権が有効な状態を維持)、(3)元本確定、(4)抹消登記の4つの選択肢があります。相続財産が債務超過なら(1)、繰り返し借入をしたい場合は(2)、繰り返し借入をする必要がない場合は(3)、既に完済している場合は(4)を選択するとよいでしょう。
根抵当権付き不動産を相続した場合に相続放棄すべきケースは?
相続財産について、プラスの財産の総額よりもマイナスの財産の総額の方が大きい場合は、相続放棄をした方がよいでしょう。
根抵当権付き不動産を売却した場合は?
根抵当権付き不動産を売却するためには、根抵当権を抹消しなければなりません。根抵当権を抹消するためには、元本を確定させて、被担保債務を完済しなればなりません。相続開始後6か月以内に合意の登記をしなければ、元本を確定させることができます。債務を完済したら、抹消登記をすることで根抵当権を抹消できます。
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