公正証書遺言にかかる費用一覧│弁護士、司法書士、行政書士の報酬をまとめて解説
遺言書には、主に自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言の3種類があり、それぞれの特徴や遺言の内容に合わせてどの遺言書にするのかを選びます。
検討を重ねて、公正証書遺言を作成しようと決めたときに、費用はどのくらいかかるのか気になるでしょうか。この記事では、公正証書遺言にかかる費用をわかりやすく説明します。
公正証書遺言の費用
公正証書遺言の作成にかかる費用には、次の4つがあります。
- 証明書交付手数料
- 公証人手数料
- 証人手数料
- 専門家報酬
1~3は実際にかかる費用(実費)で、4は専門家に依頼したときの費用です。以下、それぞれについて説明します。
1.証明書交付手数料
公正証書遺言の作成には、主に次の書類が必要です。
遺言作成に必要となる書類は遺言内容によって異なり、また、公証役場によっても若干運用が異なるため、事前に公証役場に確認すると良いでしょう。
遺言者本人の本人確認資料
印鑑登録証明書に加え、運転免許証、パスポート、マイナンバーカード、住基カード等顔写真入りの公的機関の発行した証明書のいずれか一つ。
戸籍謄本又は戸籍全部事項証明書
遺言者と推定相続人との続柄が分かる戸籍謄本または戸籍全部事項証明書、及び推定相続人の戸籍謄本(直系尊属が推定相続人の場合には、遺言者に子がいないことの分かる戸籍が必要となり、兄弟姉妹が推定相続人の場合には、遺言者に子がなく、かつ、直系尊属が死亡していることの分かる戸籍が必要となります。)
住民票
財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票(法人の場合には資格証明書(法人登記簿謄本又は登記事項証明書))
証人の情報
自分で証人を用意した場合は予定者のお名前、住所、生年月日及び職業をメモしたもの
以上のうち、証明書類については、下表の通りの交付手数料がかかります。
証明書の種類 | 交付手数料 | 交付期間 |
---|---|---|
印鑑登録証明書 | 1通300円 ※本人確認を他の証明書によってする場合は不要 | 市区町村 |
戸籍謄本・戸籍全部事項証明書 | 1通450円 | 市区町村 |
住民票 | 1通300円 ※相続人以外の受遺者ごとに必要 相続人以外の受遺者がいない場合は不要 | 市区町村 |
登記簿謄本・登記事項証明書 |
|
法務局 |
固定資産評価証明書 | 1通350円〜400円(市区町村ごとに異なる) ※財産に不動産を含まない場合又は固定資産税課税明細書がある場合は不要 | 市区町村 |
2.公証人手数料
公正証書遺言を作成する際に公証人に支払う手数料は、遺言書に記載する相続財産(遺産)の額によって決まり、その金額は、公証人手数料令という法令によって下記のとおり定められています(この手数料は全国の公証役場で共通です)。
相続財産の金額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5,000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11.000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 17,000円 |
1,000万円を超え3,000万円以下 | 23,000円 |
3,000万円を超え5,000万円以下 | 29,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 43,000円 |
1億円を超え3億円以下 | 43,000円+5,000万円ごとに13,000円 |
3億円を超え10億円以下 | 95,000円+5,000万円ごとに11,000円 |
10億円を超える場合 | 249,000円+5,000万円ごとに8,000円 |
この場合の、相続財産の金額については、遺産の総額ではなく、相続人毎に計算します。
例えば、1億6,000万円の遺産を、妻に1億円、長男に4,000万円、次男に2,000万円相続させる遺言の場合、
- 妻 :相続財産1億円 → 手数料 43,000円
- 長男:相続財産4,000万円 → 手数料 29,000円
- 次男:相続財産2,000万円 → 手数料 23,000円
合計:95,000円(43,000円+29,000円+23,000円)となります。
また、公正証書遺言を作成すると、原本、正本及び謄本が各1部交付されますが、交付手数料が、遺言書の枚数×500円かかります(遺言書の枚数が縦書きで4枚又は横書きで3枚を超える場合は、超えた枚数×250円を加算)。
なお、以下のような場合は、前記の表から算定した額に加算がなされます。
- 相続財産の総額が1億円以下の場合、11,000円加算
- 遺言書の中で祭祀承継者を指定する場合、11,000円加算
- 前に作成した遺言を撤回する場合、11,000円加算
- 病院や自宅に出張してもらう場合、前記の表から算定した手数料の額にその2分の1を加算し、別途日当(4時間未満:10,000円、4時間以上:20,000円)と交通費の実費(公証役場からの往復のタクシー代等)を加算
3.証人手数料
公正証書遺言をするには、証人2人以上の立会いが必要です。
証人を自分で手配する場合はこの手数料は不要です。謝礼については遺言者と証人との間で自由に取り決めて構いません。
公証役場で証人の紹介を受けた場合、証人1人につき6,000円程度の手数料が必要です。
謝礼の金額は、公証役場によって異なります。小岩公証役場の例を紹介します。
原則 | 証人1名につき6,000円 |
---|---|
夫婦で同時に遺言する場合 | 証人1名につき9,000円(夫婦2名分) |
出張の場合 | 証人1名につき9,000円(旅費込み) |
以上は証人1名分ですので、2名を依頼すると、この倍額になります。証人の手数料は、証人に直接支払います。
なお、専門家に遺言書の作成を依頼する場合は、通常、専門家やその事務員が証人も引き受けてくれます。
別途の報酬が必要かどうかやその料金設定については専門家ごとに異なりますが、次の3つのパターンがあるようです。
- 2人分の証人立会い料が基本料金に含まれている
- 1人分の証人立会い料が基本料金に含まれていて、2人の証人の立会いを依頼する場合は追加料金が必要
- 証人立会い料が基本料金に含まれていない
証人立会いが別途料金の場合の料金の相場は、証人1人につき1万円前後のようです。
4.専門家報酬
公正証書遺言の文案の作成を専門家に依頼する場合は報酬がかかります。
主に次の専門家が遺言書作成サービスを提供しています。
専門家への報酬は一律で決まっているわけではなく、一人ひとり異なります。以下、それぞれの専門家の報酬について説明します。
司法書士の報酬
司法書士については、実際の事務所の料金体系を紹介します。
司法書士事務所Aの報酬体系
業務内容 | 説明 | 報酬 |
---|---|---|
|
3,000万円以下の部分 | 35,000円 |
3,000万円を超え 5,000万円以下の部分 | 40,000円 | |
5,000万円を超え 1億円以下の部分 | 50,000円 | |
1億円を超え 3億円以下の部分 | 60,000円 | |
3億円を超える部分 | 80,000円 | |
証人立会 | 1名につき | 10,000円 |
※印紙、証紙等の実費は含みません。 ※遺言者の自宅へ出張する場合、旅費・日当が別途かかります
司法書士事務所Bの報酬体系
相談 | 無料 |
---|---|
公正証書遺言文案作成 | 40,000円 |
遺言証人 ※自分で用意する場合は不要 | 20,000円 |
戸籍収集 | 1通1,000円 ※実費別途 |
登記事項証明書 (不動産がある場合) | 1通500円 ※実費別途 |
司法書士事務所Cの報酬体系
基本報酬として、79,800円ですが、証人の立会いや、必要書類の収集についての報酬は含まれていません。
また、遺言の目的である財産が1億円を超える場合または遺言内容が複雑な場合などは別途見積もりになります。
司法書士事務所Dの報酬体系
公正証書遺言案文作成 | 財産額1億円以内…50,000円 1億円を超えるもの(1億円ごとに右記金額を加算)…10,000円 |
---|---|
証人立会料 | 1名につき…10,000円 |
公正証書遺言保管料1年につき…10,000円 |
上記費用のほか、書類の授受等を郵送処理等で行う場合、若干の通信費等がかかります。
行政書士の報酬
行政書士についても、実際の事務所の料金体系を紹介します。
行政書士事務所Aの報酬体系
行政書士事務所Aの報酬は、一律84,000円となっていて、次の業務が含まれます。
- ご相談・出張相談・お見積り
- 遺言内容のヒアリング
- 相続人調査
- 財産調査
- 公証人との打ち合わせ
- 遺言書文案の作成
- 証人2人の手配
ただし、戸籍取り寄せ、財産調査に実費は別途必要です。
行政書士事務所Bの報酬体系
行政書士事務所Bの報酬は、基本料金98,000円となっています。
このほか、遺言の保管を依頼する場合は、1年につき10,000円がかかります。
遺言証人1人の立会い料の追加料金はありませんが、2人ともの証人の手配を依頼する場合は、10,000円の追加料金が必要です。
また、証明書類収集のための実費と、そのための出張が必要な場合の出張費は別途かかります。
相談料は無料です。
また、夫婦(内縁を含む)や親子2名以上で依頼する場合は、2人目以降の基本料金が半額になります。
公正証書遺言の作成支援を専門家に依頼するメリット
遺言の文面は公証人が作成してくれるのに、費用をかけてまで文案の作成を専門家に依頼する必要はないように思えるかもしれませんが、文案の作成を専門家に依頼することには主に次のようなメリットがあります。
- 遺言内容についての相談ができる
- 手間を削減できる
- 遺言執行者になってもらえる
以下、それぞれについて説明します。
遺言内容についての相談ができる
公正証書遺言では、遺言者が公証人に遺言内容を口述し、その内容通りに、公証人が遺言書を作成します。
公証人は遺言内容をどうするかについての相談には応じてくれません。
手間を削減できる
それでは、公正証書遺言の場合は、司法書士や行政書士に依頼する意味はまったくないのかというと、そういうわけではありません。
手間が削減できるというメリットがあります。公正証書遺言をするためには、必要書類を収集したり、証人になってくれる人を探したりする手間が生じますし、また、公証役場に最低でも2回は行かなければなりません。
専門家に依頼すると、書類の収集や証人の立会いもやってもらえますし、遺言者が公証役場に行くのも1回だけで十分です。
遺言執行者になってもらえる
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人のことです。
遺言が執行される時には、遺言者は亡くなっていますから、遺言の内容を自らの手で実現させることはできません。
そこで、遺言執行者がいると、遺言者の代わりに遺言の内容を実現させることができるのです。遺言執行者は、必ずしも指定しなければならないわけではありません。
遺言執行者がいない場合は、相続人や受遺者(遺贈によって財産をもらい受ける人)が遺言の内容を実現させるための手続きを行うことになります。また、相続開始後に裁判所に遺言執行者を選任してもらうこともできます。
しかし、相続手続きの知識のない相続人や受遺者自らが、遺言の内容を実現する手続きを進めることや遺言執行者の選任を申し立てることは煩雑で大変です。
遺言執行者がいない場合は、相続人と受遺者全員の署名、押印と印鑑証明が必要になる手続きも多数あり、手続きの度に相続人全員に連絡して、署名などを集めるのは、なかなか大変です。
その点、遺言執行者は、単独で相続手続きを行うことができるので、スムーズに進めることができます。
また、相続人や受遺者が単独で行うことができる手続きもありますが、一部の相続人や受遺者が勝手な手続きをしてしまうリスクもあります。ですので、遺言執行者が必須でないケースでも遺言執行者を選定した方が手続きが安全かつスムーズに進むでしょう。
遺言執行者は、専門家ではなくても、相続人や受遺者であっても構いません。
しかし、通常、相続人や受遺者は、遺言執行に関する知識がないでしょうから、適切な遺言執行ができない可能性もありますし、どうにかできたとしても大きな負担になるでしょう。
遺言作成を依頼した専門家に遺言執行者もまとめて依頼するのがスムーズでしょう。
まとめ
今回は公正証書遺言の作成費用について説明しました。
公正証書遺言は他の種類の遺言よりも費用はかかりますが、確実な遺言書を作りたいのであればもっともお勧めの形式です。公正証書遺言を検討する際は、一度、相続の専門家に相談してみることをお勧めします。いい相続では相続に強い専門家をご紹介していますので、ぜひお問い合わせください。
▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に相続手続きや遺言書の作成を依頼した方のインタビューはこちら
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