貸家建付地の相続税評価額の計算方法と貸家建付地による相続税対策
本記事は、いい相続の姉妹サイト「遺産相続弁護士ガイド」で2019年5月17日に公開された記事を再編集したものです。
相続税対策を検討している人のほとんどは、賃貸アパートを建てると相続税対策になるという話を一度は耳にしたことがあるでしょう。
賃貸アパートを建てると、なぜ、相続税対策になるのでしょうか?
その理由の一つに、貸家建付地の評価制度が挙げられます。
この記事では、貸家建付地の相続税評価額の計算方法と、貸家建付地の評価制度を利用した相続税対策について説明します。是非、参考にしてください。
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貸家建付地とは?
貸家建付地とは、貸家の敷地の用に供されている宅地、すなわち、所有する土地に建築した家屋を他に貸し付けている場合の、その土地のことをいいます。
「かしやたてつけち」と読みます。
貸家建付地の相続税評価額の計算方法
貸家建付地の相続税評価額は、「自用地とした場合の相続税評価額−自用地とした場合の相続税評価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合」で計算します。
自用地とした場合の相続税評価額
自用地とした場合の相続税評価額の計算方法については、「相続税を計算する際の土地の評価方法についてわかりやすく説明!」をご参照ください。
借地権割合
借地権割合とは、自用地とした場合の相続税評価額に対する借地権の相続税評価額の割合のことをいいます。
借地権割合は、借地事情が似ている地域ごとに定められており、路線価図や評価倍率表に表示されています。
借地権割合は30%から90%の間であり、都会の方が田舎よりも借地権割合が高い傾向にあります。
借地権割合について詳しくは「借地権割合を使って借地権や貸宅地の相続税評価額を計算する方法」をご参照ください。
借家権割合
借家権割合とは、自用の建物とした場合の相続税評価額に対する、その建物の借家権の相続税評価額の割合のことをいいます。
借家権割合は、2019年現在、全国どの地域でも30%となっています。
借家権割合について詳しくは「借家権割合とは?賃貸住宅が相続税対策に有効な理由をわかりやすく説明」をご参照ください。
賃貸割合
賃貸割合は、「当該家屋の各独立部分の床面積の合計のうち課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積の合計」を「当該家屋の各独立部分の床面積の合計」で除した(割った)値です。
なお、この「各独立部分」とは、建物の構成部分である隔壁、扉、階層(天井及び床)等によって他の部分と完全に遮断されている部分で、独立した出入口を有するなど独立して賃貸その他の用に供することができるものをいいます。
相続した、または、贈与を受けた家屋の各独立部分の床面積の合計が100?で、そのうち、課税時期(相続時または贈与を受けた時)において賃貸されている各独立部分の床面積の合計が80?であった場合の賃貸割合は、「80?÷100?=80%」となり、「借家権割合30%×賃貸割合80%=24%」を控除できることになります。
賃貸割合が高ければ高いほど、控除できる額が大きくなります。
賃貸アパートを相続する場合は、相続時に、できるだけ満室に近い方が控除できる額が大きくなるというわけです。
なお、継続的に賃貸されていたアパート等の各独立部分で、例えば、次のような事実関係から、アパート等の各独立部分の一部が課税時期において一時的に空室となっていたに過ぎないと認められるものについては、課税時期においても賃貸されていたものとして差し支えありません。
- 各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものであること
- 賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、空室の期間中、他の用途に供されていないこと
- 空室の期間が、課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど、一時的な期間であること
- 課税時期後の賃貸が一時的なものではないこと
貸家建付地の計算例
借地権割合が40%、借家権割合が30%、賃貸割合が90%だとすると、貸家建付地の評価額は、4000万円−4000万円×40%×30%×90%=3568万円となります。
また、市場価格5000万円の建物の固定資産税評価額は、5000万円×70%=3500万円程度になります。
建物については、賃貸用なので、借家権割合の30%を差し引いて、2555万円×(1−30%×90%(賃貸割合))=2555万円となります。
土地と建物の評価額を合算すると、3568万円+2555万円=6123万円となり、現金のまま持っていた場合に比べて4割近く評価額を削減することができました。
貸家建付地の評価と小規模宅地等の特例の併用
貸家建付地の評価と小規模宅地等の特例は併用することができます。
小規模宅地等の特例の適用を受けると、貸付事業用宅地等に該当する土地については、200?を限度として評価額の50%を減額できます(小規模宅地等の特例について詳しくは「小規模宅地等の特例で8割減で大幅に節税する方法と意外な落とし穴」参照)。
併用する場合の適用する順番は、貸家建付地の評価減を先に適用させて、それから小規模宅地等の特例による評価減を適用させます。
貸家建付地の評価は貸駐車場にも適用できる?
賃貸住宅の入居者専用駐車場が賃貸住宅の敷地内にある場合は、駐車場部分も含めて貸家建付地の評価が適用されます。
しかし、そうではなくて、貸駐車場を経営している場合は、自用地として評価されます。
なお、人に土地を貸していて、その人が貸駐車場を経営している場合は、貸家建付地の評価は適用できませんが、「貸駐車場として利用している土地の評価」の適用を受けられる場合があります(詳しくは、国税庁ウェブサイトの「貸駐車場として利用している土地の評価」のページ参照)。
貸家建付地の評価は借主が親族でも適用できる?
貸家建付地の評価は、親族が借主の場合でも適用を受けることが可能です。
しかし、世間並みの賃料をもらっていることが条件です。
最低でも、固定資産税の2倍〜3倍は賃料をもらっていなければ、適用を受けるのは難しいでしょう。
まとめ
以上、貸家建付地について説明しました。
相続税を計算する際や、相続税対策を検討する際は、相続税に強い税理士に、一度、相談してみることをお勧めします。税理士をお探しの方はお気軽にご連絡ください。
▼実際に「いい相続」を利用して、税理士に相続税申告を依頼した方のインタビューはこちら
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