死亡後の家の名義変更の期限は?必要書類・費用についても解説!
本記事は、いい相続の姉妹サイト「遺産相続弁護士ガイド」で2019年12月6日に公開された記事を再編集したものです。
家の所有者が死亡後、その家の相続人は、家の名義変更をしなければならないのでしょうか?
名義変更とはどのような手続きを言うのでしょうか。
その期限は決まっているのでしょうか?
名義変更の必要書類や費用についても併せてご紹介します。
是非、参考にしてください。
死亡後の家の名義変更は義務ではない期限もない
所有者が死亡し、相続した家の名義変更は、今のところ義務ではなく、期限もありません。
ただし、義務化については議論が進んでおり、早ければ、2020年の臨時国会に義務化のための改正法案が提出され、義務化される可能性があります。
名義変更をしないリスク
義務でなければ、名義変更をせずに、費用を節約しようと考える人もいるかもしれません。
しかし、名義変更をしないでいると、次の4つのリスクがあります。
- 他の相続人の持分を差し押さえられたり、売却されたりするおそれがある
- 不動産の売却・担保設定ができない
- 権利関係が複雑になる
- 次の相続時に2倍の費用がかかる可能性がある
以下、それぞれについて説明します。
他の相続人の持分を差し押さえられたり、売却されたりするおそれがある
名義変更をしていなければ、他の相続人の債権者等から家を差し押さえられるおそれがあります。
家などの相続財産は、遺産分割が済むまでは、すべての相続人が相続分に応じて共有している状態です。
遺産分割協議で誰がどの財産を取得するかを決めて遺産分割を行うと、協議で決まった相続人がその財産を取得することになります。
しかし、家を取得した相続人は、名義変更しなければ、その家についての権利を第三者に対して主張することはできません。
名義変更を行っていない状態は、第三者から見れば、まだ遺産分割が済んでいない共有状態になるのです。
ですので、他の相続人の債権者は、その相続人が債務を弁済しない場合は、相続財産についてのその相続人の持分を差し押さえることができることがあるのです。
また、他の相続人に債務がある場合だけでなく、他の相続人が勝手に共有登記をして共有持分を売却することもできてしまいます。
そうすると、どちらにせよ、見ず知らずの人と不動産を共有している状態になってしまいます。
この状態を解消して不動産を単独で所有するには、共有持分を買い取ることになるでしょう。
共有持分の買い取りに要した費用は、債務者であった相続人に求償することができますが、差し押さえを受けるくらいなので、求償に応じる程の資力がなく、回収することは難しいでしょう。
このように、名義変更をしていないと、余計な出費がかかるおそれがあります。
▼相続に強い専門家探しをサポートいたします▼
不動産の売却・担保設定ができない
名義変更をしていないと、相続した家を売却したり、家に担保権を設定したりすることができません。それでは、売却したり、担保権を設定したりする時に、名義変更をすればよいではないかと思われるかもしれませんが、それは、お勧めできません。
その理由は2つあります。ひとつは、前述の通り、その間に家を差し押さえられるおそれがあるからです。もうひとつは、名義変更をしようと思った時には、権利関係が複雑化して、名義変更をすることが大変になっていることがあるからです。
権利関係が複雑になる
名義変更をしようと思った時には、権利関係が複雑化して、名義変更をすることが大変になっていることがあるとはどうことでしょうか?
例えば、被相続人(亡くなった人)の妻Aと被相続人の姪Bが共同相続人のケースで、遺産分割協議で家をAが取得することになったとします。
Aが名義変更を行わずにいたところ、Bが亡くなり、Bの夫Cが家を相続したとします。
その後、Cも亡くなり、Cの甥姪D、E、F、G、H、I、J、Kの7人がCの財産を相続したとします。
その後、Aは家を売却するために、名義変更を行おうとしても、そのためには、被相続人の姪の夫の甥・姪という見ず知らずのD~Kの7人の同意が必要になります。
その7人が気の良い人たちであれば、同意してくれるかもしれませんが、お金に困っていたりすると、同意に応じる代償としてのハンコ代を求めたり、共有持分の買い取りを請求することも考えられます。
次の相続時に2倍の費用がかかる可能性がある
名義変更をしないと、その人が名義変更費用を節約できても、その人の相続人が、その人の分まで名義変更費用を負担しなければならない可能性があります。
どういうことかというと、例えば、家の所有者が亡くなって(一次相続)、相続人がその家について名義変更をしないまま亡くなったとします(二次相続)。
二次相続の相続人が名義変更をする場合には、一次相続の名義変更と二次相続の名義変更の2回分の名義変更をしなければならず、倍の費用がかかってしまうのです。
したがって、名義変更費用の節約のために名義変更をしないということは、次の世代に自分の分の名義変更費用を押し付けているという言い方もできます。
なお、2018年4月1日から、2021年3月31日までの時限措置として、一代前の相続登記(名義変更)にかかる登録免許税を免税にする特例がスタートしていますので、当該措置の適用が受けられれば、必ずしも2倍の費用がかかるというデメリットが当てはまらない場合もあります(詳しくは「相続登記の登録免許税の免除・免税措置と計算方法をわかりやすく説明」の「相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合の登録免許税の免税措置」の項目参照)。
相続時の不動産の名義変更では、多岐にわたる複雑な手続き等が発生します。正しく、そして不利益が出ないようにするために、司法書士をはじめとした専門の士業に相談することをおすすめします。
[s]家の名義変更の流れ
家の名義変更は、概ね、次のような流れで行います。- 登記事項証明書の取得
- 必要書類の準備
- 登記申請書の作成
- 申請
以下、それぞれについて説明します。
▼相続に強い専門家探しをサポートいたします▼
登記事項証明書の取得
登記事項証明書は、相続登記に必要な書類ではありませんが、取得することをお勧めします。
登記事項証明書とは、登記記録に記録された事項を証明した書面のことです。
登記事項証明書を取得する目的は、不動産の権利関係を確認するためと、地番を正確に確認するためです。
登記事項証明書を確認することによって、被相続人がその不動産の所有権を持っているのかどうかや、担保権が設定されていないかどうかを確認することができます。
そもそも被相続人がその不動産の所有権を持っていなければ、登記はもとより、相続すらすることができません。
また、登記申請書や遺産分割協議書では、普段住所として使っている住居表示ではなく、地番を記入しなければなりません。
地番の確認は、登記事項証明書で行うのが確実です。
本来であれば、相続開始後、速やかに登記事項証明書を取得して確認すべきですが、取得していない場合は、遅くとも登記前までには確認すべきでしょう。
登記事項証明書と登記簿謄本は、基本的には同じです。
登記事務がコンピュータ化しているところで発行したものが登記事項証明書で、コンピュータ化していないところで発行したものが登記簿謄本です。
全国の地方法務局の出張所のどこでも発行することができます(その不動産を管轄する主張所である必要はありません)。
登記事項証明書(登記簿謄本)で登記内容を確認しなければ登記申請書を作成することができないので必要です。
手数料は1通480円~600円で申請方法によって異なります。
▼死後手続きに役立つ資料が、今なら無料でダウンロードできます▼
必要書類の準備・登記申請書の作成
登記申請書と必要書類については、「相続登記申請書の書き方を分かりやすく解説!相続登記は自分でできる」をご参照ください。
申請
相続登記の申請は、その相続不動産を管轄する法務局で行います。全国の法務局とその管轄エリアは、法務局ウェブサイトの「管轄のご案内」ページで確認することできます。
なお、郵送で申請することもできますし、オンラインで申請することも可能です。
オンラインで申請する場合は、「登記・供託オンライン申請システム」のウェブサイトの「ソフトウェアのダウンロード」のページから「申請用総合ソフト」をダウンロードして、ご利用ください。
家の名義変更にかかる費用
家の名義変更にかかる費用については、「相続登記費用は必要経費・登録免許税・司法書士報酬!安くするには?」をご参照ください。
▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に死後手続きを依頼した方のインタビューはこちら
ご希望の地域の専門家を探す
ご相談される方のお住いの地域、遠く離れたご実家の近くなど、ご希望に応じてお選びください。