小規模宅地の家なき子特例を活用して相続税を安くする方法
本記事は、いい相続の姉妹サイト「遺産相続弁護士ガイド」で2020年7月3日に公開された記事を再編集したものです。
持ち家がない人が宅地を相続すると、相続税の計算上、宅地の評価額を最大で80%減額することができます。
大幅に相続税が安くなる可能性もあるので、特例を受けることができないかどうか、この記事を参考に積極的に検討することをお勧めします。
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家なき子特例とは?
家なき子特例は、小規模宅地等の特例の一類型の俗称で、居住している家屋を所有していたことがないこと等が要件になっていることから、このように呼ばれています。
小規模宅地等の特例とは?
小規模宅地等の特例とは、被相続人(亡くなった人)の自宅の土地や、被相続人が事業に使っていた土地を相続する場合に、一定の条件を満たせば、相続税を計算する際の土地の評価額を最大8割引にしてくれる制度です。
家なき子特例と関係するのは「被相続人の居住の用に供されていた宅地等」に該当する場合
小規模宅地等の特例の対象となる宅地等は、次のいずれかに該当することが必要です。
- 特定事業用宅地等
- 特定同族会社事業用宅地等
- 特定居住用宅地等
- 貸付事業用宅地等
このうち、家なき子特例と関係するのは、特定居住用宅地等に該当する場合です。
そして、特定居住用宅地等には、「被相続人の居住の用に供されていた宅地等」と、「被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等」の2つがありますが、家なき子特例と関係するのは前者に該当する場合です。
なお、「被相続人の居住の用」には、被相続人の居住の用に供されていた宅地等が、養護老人ホームへの入所など被相続人が居住の用に供することができない一定の事由(次の(1)又は(2)の事由に限ります。)により相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった場合(被相続人の居住の用に供されなくなった後に、事業の用又は新たに被相続人等以外の人の居住の用に供された場合を除きます。)におけるその事由により居住の用に供されなくなる直前の被相続人の居住の用を含みます。
(1) 介護保険法第19条第1項に規定する要介護認定若しくは同条第2項に規定する要支援認定を受けていた被相続人又は介護保険法施行規則第140条の62の4第2号に該当していた被相続人が次に掲げる住居又は施設に入居又は入所をしていたこと。
イ 老人福祉法第5条の2第6項に規定する認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居、同法第20条の4に規定する養護老人ホーム、同法第20条の5に規定する特別養護老人ホーム、同法第20条の6に規定する軽費老人ホーム又は同法第29条第1項に規定する有料老人ホーム
ロ 介護保険法第8条第28項に規定する介護老人保健施設又は同条第29項に規定する介護医療院
ハ 高齢者の居住の安定確保に関する法律第5条第1項に規定するサービス付き高齢者向け住宅(イの有料老人ホームを除きます。)
(2) 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第21条第1項に規定する障害支援区分の認定を受けていた被相続人が同法第5条第11項に規定する障害者支援施設(同条第10項に規定する施設入所支援が行われるものに限ります。)又は同条第17項に規定する共同生活援助を行う住居に入所又は入居をしていたこと。
家なき子特例を受けられる人
「被相続人の居住の用に供されていた宅地等」の取得者で、小規模宅地等の特例を受けられる人は、次のいずれかに該当する人です。
- 被相続人の配偶者
- 被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物に、相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ、その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有している親族
- 上記1及び2以外の親族で一定の要件を満たす人
3に該当する場合の小規模宅地等の特例のことを家なき子特例といいます。
家なき子特例の適用を受けるには、次の1から6の要件を全て満たさなければなりません(ただし、以下の要件を満たさない場合でも、後述の経過措置の要件を満たす場合は適用を受けられます。)
- 居住制限納税義務者又は非居住制限納税義務者のうち日本国籍を有しない者ではないこと
- 被相続人に配偶者がいないこと
- 相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた被相続人の相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人)がいないこと
- 相続開始前3年以内に日本国内にある取得者、取得者の配偶者、取得者の三親等内の親族又は取得者と特別の関係がある一定の法人が所有する家屋(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除きます。)に居住したことがないこと ※「特別の関係がある一定の法人」とは、次のいずれかに掲げる法人をいいます。 (1) 取得者及び租税特別措置法施行令第40条の2第15項第1号イからヘまでに掲げる者(以下「取得者等」といいます。)が法人の発行済株式又は出資(その法人が有する自己の株式又は出資を除きます。)の総数又は総額((2)及び(3)において「発行済株式総数等」といいます。)の10分の5を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合におけるその法人 (2) 取得者等及び(1)に掲げる法人が他の法人の発行済株式総数等の10分の5を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合におけるその他の法人 (3) 取得者等並びに(1)及び(2)に掲げる法人が他の法人の発行済株式総数等の10分の5を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合におけるその他の法人 (4) 取得者等が理事、監事、評議員その他これらの者に準ずるものとなっている持分の定めのない法人
- 相続開始時に、取得者が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないこと
- その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること
家なき子特例に関しては、2018年4月1日に法改正があり、上記の要件は、法改正後(2018年4月1日以降)開始された相続に適用されるもので、改正前はもう少し要件が緩やかでした。
改正後に開始された相続で上記の要件を満たさない場合でも、経過措置として、次の(1)又は(2)の要件を満たす場合は、家なき子特例の受けることができます。
(1) 平成30年4月1日から令和2年3月31日までの間に相続又は遺贈により取得した宅地等のうちに、平成30年3月31日において相続又は遺贈があったものとした場合に平成30年改正前の租税特別措置法第69条の4第3項第2号ロの要件(具体的には次のイ及びロの要件をいいます。以下この(1)において「旧法要件」といいます。)を満たす宅地等に該当することとなる宅地等(以下「経過措置対象宅地等」といいます。)がある場合には、その経過措置対象宅地等については、上記の要件又は旧法要件(次のイ及びロの要件をいいます。)のいずれかの要件とされています。
イ 上記の1から3まで及び6の要件
ロ 相続開始前3年以内に日本国内にある取得者又は取得者の配偶者が所有する家屋(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除きます。)に居住したことがないこと
(2) 令和2年4月1日以後に相続又は遺贈により経過措置対象宅地等を取得した場合において、同年3月31日においてその経過措置対象宅地等の上に存する建物の新築又は増築等の工事が行われており、かつ、その工事の完了前に相続又は遺贈があったときは、その相続税の申告期限までにその建物を自己の居住の用に供したときに限り、その経過措置対象宅地等については、上記被相続人の居住の用に供されていた宅地等と、その取得者は、「被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物に、相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ、その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有している親族」の要件を満たす者とみなすこととされています。
家なき子特例の効果
家なき子特例を受けると、相続税を計算する際の宅地の評価額を80%減額することができます(ただし、330平方メートル分までに限ります)。
それでは、例を元に実際に計算してみましょう。
500平方メートルで、評価額1億円の居住用宅地を、家なき子特例の適用を受けて相続した場合の土地の評価額を計算します。
1億円−(1億円×330平方メートル÷500平方メートル×80%)=4720万円
上記の式によって4720万円と計算することができます。
なぜ、上記の式によって計算できるのか説明します。
居住用宅地の限度面積は、330平方メートルです。
土地の面積が500平方メートルありますから、限度面積を超えています。
そこで、330を500で割ることによって、特例を適用することができる土地の割合を計算します。
そうすると、特例を適用できるのは土地の66%になります。
次に、特例が適用できる土地の評価額を計算します。
土地の評価額は1億円ですが、特例を適用できるのは、その内の66%です。
1億円に66%を掛けて、6600万円分の土地に対して特例を適用できることが分かります。
特例によって減額される割合は、居住用宅地の場合は、80%です。
減額される金額を計算するためには、特例が適用できる土地の評価額6600万円に80%を掛けます。
そうすると、特例によって減額される金額、5280万円が計算できます。
土地の評価額は1億円ですから、1億円から減額される5280万円を差し引いた4720万円がこの土地の評価額となります。
家なき子特例を受けるための手続き
この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に、この特例を受けようとする旨を記載するとともに、小規模宅地等に係る計算の明細書や遺産分割協議書の写しなど一定の書類を添付する必要があります。
まとめ
以上、家なき子特例について説明しました。
土地の評価減の制度には、家なき子特例だけでなく、様々なものが用意されています。
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