延納によって相続税を分割払いにする方法と利子税の計算方法
本記事は、いい相続の姉妹サイト「遺産相続弁護士ガイド」で2019年5月15日に公開された記事を再編集したものです。
資金不足で税金が払えない場合には、「延納」という制度を利用することができます。
大学や高校でも授業料の延納の制度があることがありますが、この記事では、税金の延納、とりわけ、相続税の延納について説明します。
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延納とは?
相続税等の国税は、金銭で一時に納付することが原則です。
しかし、相続税額が10万円を超え、金銭で納付することを困難とする事由がある場合には、納税者の申請により、その納付を困難とする金額を限度として、担保を提供することにより、年賦(年払い)で納付することができます。
これを延納(えんのう)といいますが、この延納期間中は利子税の納付が必要となります。
延納の要件
相続税の延納は、次に掲げる全ての要件を満たす場合に、申請することができます。
- 相続税額が10万円を超えること
- 金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であること
- 延納税額及び利子税の額に相当する担保を提供すること ※ただし、延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合には担保を提供する必要はありません。
- 延納申請に係る相続税の納期限又は納付すべき日(延納申請期限)までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること ※相続税の納期限は、通常、相続の開始があったことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から起算して10か月目の日です。 ※延納申請期限までに担保提供関係書類を提供することができない場合は、担保提供関係書類提出期限延長届出書を提出することにより、1回につき3か月を限度として、最長6か月まで担保提供関係書類の提出期限を延長することができます。
延納の担保
延納の担保として提供できる財産の種類は、次に掲げるものに限られます。
なお、相続又は遺贈により取得した財産に限らず、相続人の固有の財産や共同相続人又は第三者が所有している財産であっても担保として提供することができます。
- 国債及び地方債
- 社債その他の有価証券で税務署長が確実と認めるもの
- 土地
- 建物、立木、登記される船舶などで、保険に附したもの
- 鉄道財団、工場財団など
- 税務署長が確実と認める保証人の保証
税務署長が延納の許可をする場合において、延納申請者の提供する担保が適当でないと認めるときには、その変更を求めることとなります。
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延納期間と利子税
延納のできる期間と延納にかかる利子税の割合については、その人の相続税額の計算の基礎となった財産の価額の合計額のうちに占める不動産等の価額の割合によって、おおむね次の表のようになります。
※2019年の年利は「特例割合」の列に記載されている利率です(「延納利子税割合」の列に記載されている利率ではありません)。
区分 | 延納期間(最高) | 延納利子税割合(年割合) | 特例割合 | |
---|---|---|---|---|
不動産等の割合が 75%以上の場合 | 1、動産等に係る延納相続税額 | 10年 | 5.4% | 1.1% |
2、不動産等に係る延納相続税額(3を除く) | 20年 | 3.6% | 0.7% | |
3、森林計画立木の割合が20%以上の森林計画立木に係る延納相続税額 | 20年 | 1.2% | 0.2% | |
不動産等の割合が 50%以上75%未満の場合 | 4、動産等に係る延納相続税額 | 10年 | 5.4% | 1.1% |
5、不動産等に係る延納相続税額(6を除く) | 15年 | 3.6% | 0.7% | |
6、森林計画立木の割合が20%以上の森林計画立木に係る延納相続税額 | 20年 | 1.2% | 0.2% | |
不動産等の割合が 50%未満の場合 | 7、一般の延納相続税額(8〜10を除く) | 5年 | 6.0% | 1.3% |
8、立木の割合が30%を超える場合の立木に係る延納相続税額(10を除く) | 5年 | 4.8% | 1.0% | |
9、特別緑地保全地区等内の土地に係る延納相続税額 | 5年 | 4.2% | 0.9% | |
10、森林計画立木の割合が20%以上の森林計画立木に係る延納相続税額 | 5年 | 1.2% | 0.2% |
各年の延納特例基準割合が7.3%に満たない場合の利子税の割合は、次の算式により計算される割合(特例割合)が適用されます。
「延納利子税割合(年割合)×延納特例基準割合÷7.3%」
0.1%未満の端数は切り捨てます。
なお、延納特例基準割合とは、各分納期間の開始の日の属する年の前々年の10月から前年の9月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合のことをいいます。
上の表の特例割合は、2019年の延納特例基準割合1.6%で計算しています。
延納特例基準割合に変更があった場合には、特例割合も変動します。
延納にかかる利子税は、次の式により計算される金額となります。
「納付すべき本税の額」×「利子税の割合」×「期間(日数)」÷365 |
不動産等に係る延納相続税額及び動産等に係る延納相続税額を基礎として計算します。
それぞれの税額が1万円未満の場合には、利子税を納付する必要はありません。
また、本税の額に1万円未満の端数があるときは、これを切り捨てて計算します。
計算した利子税の額が千円未満となる場合は納付する必要はありません。
また、その額が千円以上の場合、百円未満の端数を切り捨てします。
なお、利子税の割合は、上の表の特例割合のことですが、翌年以降に特例割合が変更になっても、ずっと、申請時の特例割合で計算します。
したがって、金利が下がった場合は、金融機関で借換えした方が得になります。
延納の申請書類
延納の申請書類は、国税庁ウェブサイトの「様式集」のページでダウンロードできます。
担保関係書類の抜け漏れがないように、「担保関係書類チェックリスト」で確認しましょう。
必要書類については「延納の手引き」の26〜33ページをご参照ください。
また、各書類の記載方法については「延納の手引き」の34ページ以降をご参照ください。
延納の審査期間
延納申請書が提出された場合、税務署長は、その延納申請に係る要件の調査結果に基づいて、延納申請期限から3か月以内に許可又は却下を行います。
なお、延納担保などの状況によっては、許可又は却下までの期間を最長で6か月まで延長する場合があります。
延納から物納への変更
延納の許可を受けた相続税額について、その後に延納条件を履行することが困難となった場合には、申告期限から10年以内に限り、分納期限が未到来の税額部分について、延納から物納への変更を行うことができます(この制度のことを「特定物納制度」といいます)。
特定物納申請をした場合には、物納財産を納付するまでの期間に応じ、当初の延納条件による利子税を納付することとなります。
なお、特定物納に係る財産の収納価額は、特定物納申請書を提出した時の価額となります。
物納について詳しくは「物納は売れない土地でも利用可能!物納で逆にむしろ得する方法とは?」をご参照ください。
まとめ
以上、延納について説明しました。
相続税が払えない場合は「相続税が払えない場合の対処法を優先順位を付けて分かりやすく説明!」も併せてご参照ください。
延納を申請する前に、延納によるべきかどうか、他のよりよい方法が無いかを、相続税に精通した税理士に、一度、相談することをお勧めします。
延納を申請する場合も、手続きについて税理士に相談することも可能です。税理士をお探しの方はお気軽にご連絡ください。
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