相続する土地を売るタイミング、お得なのは相続の前?後?
通常、現金を相続するよりも不動産のまま相続する方が相続税の負担は軽くなります。
しかし、納税対策に現金を残したい場合や、相続争いの回避のために分割しやすい財産を残したい場合もあるかと思います。
この記事では、相続前、相続後、それぞれのタイミングで不動産を売却した場合の主なメリットについて解説します。ぜひ参考にしてください。
相続する土地の売却のタイミングは?
「土地の持ち主が亡くなる前に売るべきか」「亡くなった後に売るべきか」
土地を売却するタイミングによっては支払う税金が何百万~何千万円変わることもあります。
土地売却のタイミングを見極めるためには、土地売却時にどのような税金が発生し、どのような特例を使えるのかを知ることが重要です。
土地売却時にかかる譲渡所得税以外に相続税の面からも検討したほうがよいでしょう。
譲渡所得税
土地や家屋などの不動産を売却すると、売却益(譲渡所得)に応じて譲渡所得税がかかります。
不動産を売ったときの売却益に対する税金は、分離課税といって給与所得などの他の所得と区別して計算します。確定申告の手続きでは、不動産の取得費は売却益から差し引くことができます。これらは、他の所得と一緒に行なうことになります。なお、確定申告をすることにより、住民税が市区町村により自動的に計算され、6月以降に課税されます。
相続税
相続税の対象となるのは、預金や不動産、借金なども含まれます。▶相続税の対象になる財産と計算方法
相続税を計算する際、不動産の評価額は時価ではなく、土地は路線価(路線価がない場合は倍率方式)、建物は固定資産税評価額という、自治体が決めた価格によって決まります。 路線価は時価の80%相当額と言われており、土地の課税評価額は時価よりも低くなります。したがって、相続前に土地を売却し現金を相続すると、土地のまま相続するよりも相続税は割高になります。▶不動産相続|相続税評価額の計算や手続き・不動産の相続税対策
次からは、相続前と後で不動産を売却するケースと主なメリットを上げていきます。
相続前に不動産を売却するケース
土地の持ち主が亡くなる前に不動産を売るケースは以下ような場面が考えられます。
- 相続税が発生しない場合で3000万円の特別控除が適用されるとき
- 相続税の納税資金が必要な場合なとき
- 相続財産が土地しかなく、相続争いが心配とき
これらケースにはどんなメリットや特徴があるのか、一つ一つわかりやすくするために簡略化して説明していきます。
相続税が発生しない場合で3000万円の特別控除が適用されるとき
売却を考えている不動産が自宅である場合、一定の要件を満たせば3000万円の特別控除が適用されます。▶国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
相続税は誰でも払うわけではなく、相続財産が一定の金額以下なら非課税です。この相続税が発生しない場合において、不動産の売却益が3000万円に満たない額だった場合、譲渡所得税を計算時にこの特別控除を適用することで所得税と住民税に対する節税効果が期待できます。
相続税の納税資金対策
相続税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に申告し、原則現金で一括納付する必要があります。
現金を持ち合わせていない人が土地を相続することになると、納税資金が用意出来できず、相続後急いで土地を売却することになったり、相続した土地を物納をするということも起こり得ます。
そういった場合は、あらかじめ相続前に土地を売却し、現金で相続する方がメリットがあるかもしれません。
相続争いの回避
相続財産に土地などの不動産が含まれていると、分割のしにくさから相続人間でトラブルが起きてしまう心配があります。遺言書があればまだ対処しやすいですが、遺言書がない場合は相続人間の話し合いで財産の分割を決めるため、相続争いにつながることがあります。
その結果、不動産を共同名義で相続する、土地を相続する代わりに他の相続人にお金を払うなど、複雑な相続のしかたになる場合があります。▶相続した不動産の分け方は?
分割しにくい土地などの財産は、あらかじめ売却し現金化しておくことで相続争いを回避することができるかもしれません。
相続後に不動産を売却するケース
土地の持ち主が亡くなった後に不動産を売るケースは以下ような場面が考えられます。
- 空き家となってしまった自宅等に3000万円の特別控除が使える場合
- 小規模宅地の特例が適用できる場合
- 相続税の取得費加算により譲渡所得税が節税できる
これらケースにはどんなメリットや特徴があるのか、一つ一つわかりやすくするために簡略化して説明していきます。
空き家を売った時の3000万円の特別控除が使える場合
相続後に空き家となってしまった自宅等の不動産を売却した場合、一定の要件を満たせば「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」の3000万円の特別控除を受けられます。
控除を受けるためには、相続開始から3年後の12月31日までに譲渡し、相続発生後から譲渡までの間は居住や貸付を行なわず、空き家のままにしておく必要があります。▶空き家を売ったらお得な制度とは?
小規模宅地の特例の適用
小規模宅地等の特例とは、簡単に説明すると、亡くなった方が自宅として使っていた土地であれば、330㎡までの部分が80%減額されるという制度です。▶小規模宅地等の特例とは?土地の評価額を最大80%減額?!適用要件や注意点までわかりやすく解説
特例が適用されるのは、配偶者か亡くなった人と同居していた親族が土地を相続した場合です。配偶者や同居している親族がいない場合には、3年以上自分の持ち家に住んでいない親族が相続した場合にも適用されます。
この特例が適用されると相続税が大きく減額されるケースが多いので、相続税対策を考えると相続前に売却せず、相続後に売却する方が節税効果が高くなるかもしれません。
相続税の取得費加算
土地や建物などの不動産を売却したとき、その不動産の取得費は譲渡所得から差し引くことができます。しかし、その不動産が相続したものである場合、原則として支払った相続税を取得費に加算することはできません。
ただし、相続税の申告期限である相続開始から10ヶ月後の翌日から3年以内にその不動産を売却した場合は、支払った相続税のうちその不動産に関わる部分を取得費として加算することができます。▶国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
この相続税の取得費加算の特例により、相続後に不動産を売却する場合は「相続開始から10ヶ月後の翌日から3年以内」に行なうのがベストです。
注意しておきたいのは、小規模宅地の特例で相続税が減額された場合です。相続税が減額されると、特例が適用されなかった場合と比較して相続した不動産を売却するときの譲渡所得税が増えてしまうことがあります。
まとめ
売却のタイミングを検討するときは様々な角度から考えるとよいでしょう。
また、検討のポイントとして、相続財産の全様をつかんでおくことや、相続発生時にどのような人が相続人になるのかも想定することも大切です。
相続のトラブル回避のためであれば、金銭的メリットは二の次になることもあるでしょう。
ご自身にとってのメリットを考えたうえで相続前、相続後どちらのタイミングで不動産を売却する方がよいかご検討ください。
▼実際に「いい相続」を利用して、税理士に相続税申告を依頼した方のインタビューはこちら
ご希望の地域の専門家を探す
ご相談される方のお住いの地域、遠く離れたご実家の近くなど、ご希望に応じてお選びください。