【よくある質問】実家の相続どちらが得?「不動産を現金化して相続」と「相続してから売却」
父が死んだので実家が空き家になります。誰も住む予定はないのですが、「不動産を現金化して相続」と「相続してから売却」ではどちらが得ですか?
一般的には、不動産を現金化してその現金を相続する(相続前の売却)よりも、不動産のまま相続し、その後不動産の状態に応じてタイミングを間違えないように売却(相続後の売却)する方が有利になります。
相続前に売却する場合
親の生前に物件を売却した場合は通常の売却になりますので不動産そのものに対する相続税はかかりません。 通常通り、譲渡したことにより「儲け」があれば譲渡所得税がかかってくるだけということになります。
ただ、不動産を現金化することになるため、その現金に対して相続税が課せられることになり、不動産そのものを相続するよりも割高になってしまうことに注意しなくてはなりません。
不動産については、評価の方法が「路線価(土地)」もしくは「固定資産税評価額(建物)」となりますが、これは現金での評価と比べて低い価額になっているからです。(評価を下げるためにわざわざ現金を不動産に換える節税方法があることからもわかります)。
相続後に売却する場合
相続後に売却する場合には、相続税の申告期限内(被相続人の死亡から10カ月)に売却する場合、それ以降であって相続開始から3年10カ月以内に売却する場合にそれぞれ節税できることがあります。
相続税申告までの不動産の売却
相続税の申告期限内の売却(10カ月以内の売却)であれば、「不動産の売却価額が相続税評価額よりも低い」のであれば、申告期限までに売却することによってより低い価額(売却価額)で評価することができるので、差額の分だけ節税になります。
取得費加算の特例
3年10カ月以内の売却の場合、相続によって取得した土地を売却すると、相続時にその不動産について支払った相続税を、土地の売却時にかかる所得税、住民税から一部控除することができます。これを取得費加算の特例と言います。
具体的な計算式はこのようになります。
課税譲渡所得金額(譲渡益)=譲渡価額―(取得費+譲渡費用)―特別控除
この中の「取得費」として売却した土地の相続税をプラスすることができる、つまり譲渡益を縮減することができるのです。
平成26年12月31日までに発生した相続では、この「取得費」の範囲が売却する不動産以外の不動産の分まで加算することができていましたが、平成27年1月1日以降に発生した相続では売却不動産のみとなり、納税者に不利な改正がされてしまいました。
ただ、全体として見ると、親の生前に現金にして売却するよりも相続後の売却の方が税金に関しては有利になるといえます。
物納は許可がいるためできない前提で考えること
物納(金銭での納付が困難な場合に相続財産で相続税を納付すること)は所定の要件を満たしたうえで税務署から許可されなくてはそもそもすることができません。
しかも、物納の許可は実際にはかなり厳しいため、最初から物納することを前提として考えてはならないのです。現金で納付することを予定して計画を立てることが相続税では必須となります。
相続税が払えないときの対処法
家族や他の相続人に迷惑をかけないためにも、相続財産の内訳を把握しきちんと相続税の申告・納付の計画をたてておくことが重要です。
相続税を一括で払えない場合、物納以外では以下の対処法が考えられます。
相続不動産の売却
相続財産に預貯金が少ない場合、不動産を売却して資金調達することが考えられます。
延納
事情により現金で一括納付が難しい場合に、5~20年の期間で分割払いをする「延納」の利用も可能です。利用には一定の要件を満たす必要があり、延納期間中は利子税がかかります。
相続放棄
相続放棄とは、プラスの財産とマイナスの財産を含めた、相続に関する権利の一切を放棄することです。相続放棄をすれば、始めから相続人ではなかった扱いとなるため、相続税を払う必要はありません。
ただし、一度相続放棄をすると撤回できない点や資産を相続できないこと、後順位の相続人に迷惑がかかることなどのデメリットもあります。慎重に検討しましょう。
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