急にお金が入用となり、余命3ヶ月と宣告された父から相続財産を前もってもらいたいと考えています。その場合通常の借用とするのと生前贈与とするのとどちらがお得ですか?
質問者:S.N
生前贈与の場合、各種の特例を使って減税、免税にすることができる場合もありますが、そうではないのであれば非常に高額の贈与税を支払うことになりますので一般的には借用として「相続」扱いにした方がトータルで安くなる可能性が高いでしょう。
相続税の基礎控除の範囲に収まっているかどうか
相続税を回避するために生前贈与でどんどん子孫に財産を移転してしまう人もいることから、税金逃れを防ぐために生前贈与の税率は非常に高くなっています。 その一方で相続税には基礎控除が設定されており、一定以上の資産がなければそもそも課税がされず申告義務もないのです。
もし、相談者のお父様のトータルでの相続財産を予測した時に、相続税の基礎控除である「3000万円+(法定相続人の数×600万円)」に収まっている場合は「相続」で財産を承継した方が断然良いことになります。(不動産の登録免許税などの移転コストはかかるものの、それも贈与よりは相続の方が安く設定されています)
▶相続税の基礎控除|計算方法や申告の必要の有無
特例が使えるなら生前贈与でもよい
生前贈与する場合は、もし少額なのであれば年間110万円の基礎控除に収まることもあるでしょう。 しかし、大型贈与を行いたい場合は「相続時精算課税」などの特例を利用し、2500万円までの贈与を無税で行うこともできます。
ただし、相続時精算課税は結局、贈与した財産を相続財産として持ち戻さなくてはならないため、被相続人の財産総額によってはまったく節税にはならないこともあるので気をつけなくてはなりません。 また、相続時精算課税と年間110万円までの基礎控除は併用することができないというのもポイントです。
▶生前贈与とは?絶対失敗しない!基本の知識をわかりやすく徹底解説
借り入れにする場合の注意
もし借り入れとする場合、借用書をしっかりとした書式で作成し、返済計画とおりに返済している実績を作ることが必要です。返済は現金ではなく、振り込みにして証拠を残せるようにしておかなくてはなりません。 また、借り入れとする場合には法定利息(民事では年5%、商事では年6%)くらいの利率を設定してそれも合わせて返済しなくては、「利息分を贈与した」とみなされてしまうおそれもあります。
特に元金が高額の場合、利息も通常高額となるため、後で思わぬ贈与の指摘を受けないように注意したいものです。 結局のところ、借り入れと生前贈与のどちらが得かというのは、お父様の総財産や非課税の特例を使える条件にあるかどうかなど、各人によって異なります。 あらかじめ税理士に相談して、ベストな方法を提案してもらった方がよいのではないでしょうか。
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