私は自宅以外に高額な財産はないのですが、それでも遺言は作っておいた方がいいですか?
質問者:S.N
相談者の場合、遺言はむしろ必須といえるでしょう。 不動産以外の財産がない人は、かなり遺言書の必要度が高い状況と考えておかなくてはなりません。
自宅以外の相続財産がないとどうなるか
いわゆる「争族」になってしまう家庭は、資産家だけとは限りません。 むしろ、不動産しか財産がないような家庭は財産の分割が非常に困難だからこそ争いになってしまうのです。 家庭裁判所に持ち込まれる調停等の相続争いも、相続財産5000万円未満という「中流」レベルの家庭が全体の7割にのぼります。
戦前の日本のように「長子相続」を当たり前として受け入れることができなくなった時代背景、そして個々の権利意識の高まりにより、遺産分割は昔よりも難しくなっている面があります。 特に日本人の「持ち家至上主義」によって、現金を残さなくても不動産は残しておきたいという家庭はまだまだ多く、そのような人こそ遺言書を真剣に検討するべきなのです。
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自宅をもらえない相続人への手当てをする
不動産をもらう子供がその子供自身の財産で他の兄弟に不足分を渡すことができるのであれば問題ないのですが、それができない場合は親世代による対策が必要です。 具体的にどのようなことをしておけば良いのかといえば、大きく分けて2つのどちらかを選ぶことが望ましいといえます。
・不動産をもらえない相続人にはその他に受け取れる死亡保険を準備し、不公平感を解消する。
・不動産を渡す子供には同居し、全面的に介護を担ってもらうなど、他の子供がそれなりに納得できるような働きをしてもらい、公平性をはかる。
いずれの方法を取るにしても、相続財産の分け方、その理由、親の考えなどを明確に遺言書に記しておくようにしなくてはなりません。 親がなぜそのように財産を分配したのか、相続人皆が納得できる状況にすることで相続争いのリスクは減らせるはずだからです。
遺言書は公正証書で
遺言書を作成するのであれば、自筆証書遺言(自宅で便箋などに書く)では逆効果になることもあります。 自筆証書遺言は第三者に内容や存在を確認してもらったわけではないため、「長男が無理やり書かせたのではないか?」とか、「親はもう認知症だったのでは?」といった点で紛争になることが多いからです。
その点、公正証書遺言であれば少なくとも遺言者の意思確認等はきちんと行いますので、ニセモノであるとの疑いは封じることができます。 ただ、内容が適切か(公平か)ということまで保証してもらえるわけではないため、その点についてどうしても納得いかない場合は別途、話し合いや調停等をするしかないことになります。
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