【よくある質問】子供のうち1人だけに財産を全て渡したい。遺言書のポイントは?
相続争いが起きそうなので、子供の1人に財産を全て渡したいと思います。遺言で財産を残す際のポイントってありますか?
遺言を残すこと自体は、被相続人(亡くなった人)の遺志を正確に反映するためにとても大切なことです。しかし、そこには気をつけなければならないポイントがあります。少なくとも、相続トラブルにならないよう配慮する必要があるでしょう。
遺言を残す必要がある人
遺言とは、遺言者が自分自身で自分の財産を誰にどのように残すのか意思表示することです。遺言書があればその内容に沿った遺産分割が可能です。相続手続きがスムーズになることも期待できるでしょう。
そもそも遺言書を作成する必要性が高いのは、このような状況の人と考えられます。
- 再婚しており、前婚と後婚の両方に子供がいる人
- 子供がいない人
- 事業を行っている人
- 相続財産の内容が不動産だけなど、分けづらい人
- 相続人の仲が悪いことが明らかな人
- 法定相続以外の遺産分割をしてほしい人
もし相続人同士が現在はうまくいっていたとしても、相続財産の構成自体が紛争の原因となることもあります。
また、親が存命中は親に気を遣ってあまり喧嘩をしないようにしていたが、実はお互いに不満を抱えていたということもありますので、表面的なものだけで「紛争は起きないはず」と決めつけないことが大切です。
誰かに全財産を渡すのは危険
戦前までの日本はとにかく「長男が相続」ということが暗黙の了解になっていました。
「家督相続」という制度があり、それを国家が認めていたようなところもあります。 しかし時代は変わっており、子供がすべて平等に相続権を持つことは現代の人たちには当然の常識として認識されています。
よって、親の世代が「長男にすべて継がせるのが妥当」と考えていたとしても子供世代にはそれが通用しないわけですから、誰か一人に相続させたいと考える場合はそれなりに納得できる理由が必要なのです。かえって相続トラブルを招く可能性があります。
「親と同居して介護を一切引き受けてくれた」「教育費が極端に偏っていたからその調整のため」「マイホーム取得の際に援助しなかった方に相続させたい」など、兄弟全員にわかりやすい理由を遺言書の中で述べておくべきでしょう。
遺留分侵害額請求をされる可能性がある
子供の一人にすべて渡すということは、他の子供たちの遺留分を侵害しているということです。
遺留分とは、一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことのできない遺産の一定割合の留保分を言います。遺留分を有する者は、配偶者、子(代襲相続人も含む)、直系尊属(被相続人の父母、祖父母)です。
遺留分(各相続人に保障されている相続分)を無視して誰かに全財産を渡す遺言も、それ自体が無効というわけではありませんが、遺留分侵害額請求をされる恐れがあり、やはり危険度が高くなるということは遺言者自身が認識しておかなくてはならないのです。
付言事項に遺言の意思表示の根拠を記載
それでもどうしても理由があって「この子に全財産を渡したい」と考えるのであれば、非常に重要になるのが遺言書の最後に書き残す付言事項という項目です。
この項目は遺言者の相続人への感謝や遺言の内容の理由づけ、その他自由に記述することができる部分ですが、ぜひともここは丁寧に書いておきたいものです。
遺言内容に不満があった相続人でも、付言まで読み進んだら親の思いに気づき、納得したことにより紛争が防止されたケースもあるからです。
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